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第42話 炎上の終わり
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場つなぎのトークを10分ぐらいしていると準備が整った。
画面上にキルダさんのイラストを表示して音声を流す。
裏側のチャットで『配信OK』と書き込んだ途端、キルダさんは叫んだ。
「メーーーーベル! また都合の良いことばかり言いやがって!」
耳につけているイヤホンマイクから大声が聞こえ、思わず眉をひそめてしまった。
和解する前提で話すと言っていたクセに態度がでかい。一方敵に責め立てていて、メーベルさんもその点は気になっているみたい。的確に切り込んでいく。
「冷静に話し合える状態じゃないね。そうやってすぐ感情的になるから、フィーリングがあわないと思ったんだよね~」
「てめぇっ!」
「それに話し合いの場を貸してくれた聖夜くんに悪いと思わないの? 和解前提の話し合いをするんでしょ? 一発抜いて落ち着いたら?」
最後の一言は余計だ。煽ってどうするんだと思ってヒヤヒヤしたんだけど、キルダさんは第三者である俺にも迷惑をかけていると思い出したようで反論しない。
ようやく俺が間に入る好機が訪れた。
「この場で、どちらが悪いと決めるつもりはありません。キルダさんがメーベルさんを責めるような発言をしたら配信は終了します。それでいいですか?」
「それでかまわない」
「ありがとうございます」
言質は取った。これで最悪終わらせる選択もできるぞ。
続いてリスナーにも語りかける。
「また犯罪をしたわけじゃないですし、二人が納得した形で和解できたら皆はSNSで触れるのを止めてね」
チャット欄を見ると「了解」といったコメントばかりだ。反対する意見するような人たちはブロックしていたから、この結果は当然だな。
コラボ配信が終わった後で暴れても既に終わった話だといって無視できるし、和解さえ出来れば炎上案件は解決するはずだ。
「みんな納得してくれたみたいだね。それじゃキルダさんは、何に納得してないか教えてもらえる?」
「…………あんだけベタベタ触っておきながら、会計が終わる前に黙って帰ったこと。それだけだ」
男のプライドが許さなかったのか、ホテルへ連れて行けなかったことには触れなかった。拍子抜けだ。
「帰ったことの理由が知りたい、であっていますか?」
「おう。それでいい」
「だ、そうですけどメーベルさんから説明してもらえますか」
「私は良いけど、優しい気持ちをもって言った方がよさげだよね」
「うん。酷い言葉は使わないように」
キルダさんを怒らせたいなら別だけど、目的は和解なんだから言い方には気をつけて欲しい。
大人なんだから出来るでしょ。
そういった期待を込めて言った。
「おっけー。だったら簡単に説明するけど、顔が好みじゃなく自慢ばかりの会話に飽きてたんだよね~。会計が終わった後だと強引に連れて行かれそうだったから、自衛のために逃げたの。これで納得した?」
「会計前にそのことをキルダさんに説明していたら、今回の炎上は回避できたんじゃないの?」
「初対面の男に言えるわけないよ。腕力じゃ勝てないんだから。逃げるのが一番だと思ったんだよ」
「それほどの危機感を覚えたってこと?」
「筋肉がすごかったからね。私は怖いと思った」
中の人の見た目に言及するのは良くないが、今回は仕方ないだろう。
「ただ黙って帰ったことは悪いことをしてしまったと反省はしている。ごめんなさい。ご飯代も返すから許してもらえないかな?」
悪いところを認め、メーベルさんは誠意を込めて謝罪をした。
相手が突っ込む前に言えたのは大きい。誹謗中傷DMを晒した後ということもあって、キルダさんが追加攻撃してしまえば、リスナーは弱い者虐めに見えるだろう。正義と悪は表裏一体。状況が変われば反転するのだ。
「事情を知りたかっただけだ。怖い思いをさせて悪かったな。メシ代はいらん。俺が好きにやったことだ」
「それでいいんですか? もっと謝罪して欲しいことありませんか?」
「あるっちゃあるが、俺のせいでメーベルにも迷惑をかけているようだし、お互い様ってことで終わりにしよう」
「メーベルさんもそれでいいですか?」
「私はキルダに文句を言いたい事なんてないからね。謝罪を受け取って終わりにしてくれるならありがたいよ~」
二人の関係はなんとか落ち着いたようだ。
問題は解決したのでコラボ配信をダラダラと続ける必要はない。
軽いエンドトークをしてから終わらせる。
「メーベルさんとキルダさんの関係が修復できたので、今回のコラボ配信は終わりにしたいと思います! みなさん視聴ありがとうございました!」
配信をブツッと切る。
裏側で繋がっていたキルダさんとの通話は切れていたけど、配信に来てくれたお礼チャットはしておいた。
当然のように返信はない。
「お疲れさま~~! 聖夜くんのおかげで炎上は止まりそうだよ!」
「いえいえ。無事に解決したのはキルダさんが配信に来てくれたからですよ」
当初の予定では攻撃的なメッセージを減らして味方を増やすぐらいしか出来なかったので、彼の登場で一気に解決したのは間違いない。運に恵まれた。
「そりゃ~そうだけどさ~~! あれだけSNSじゃ文句言ってたのに、先に謝ったらしゅんとなるのダサいよね! 本当に嫌いなタイプ。逃げて正解だったよ!」
「間違っても外部には言わないでね。また燃えるよ」
「わかってるって~。言うの聖夜くんだけ。特別なんだからっ!」
また男を勘違いさせるような発言をしている。一回の炎上だけじゃ懲りてないようだ。
「次に燃えても助けないから」
「といっても助けてくれるんだよね。知っているよ~」
「本当に燃えないでね……」
頼んだぞ!
画面上にキルダさんのイラストを表示して音声を流す。
裏側のチャットで『配信OK』と書き込んだ途端、キルダさんは叫んだ。
「メーーーーベル! また都合の良いことばかり言いやがって!」
耳につけているイヤホンマイクから大声が聞こえ、思わず眉をひそめてしまった。
和解する前提で話すと言っていたクセに態度がでかい。一方敵に責め立てていて、メーベルさんもその点は気になっているみたい。的確に切り込んでいく。
「冷静に話し合える状態じゃないね。そうやってすぐ感情的になるから、フィーリングがあわないと思ったんだよね~」
「てめぇっ!」
「それに話し合いの場を貸してくれた聖夜くんに悪いと思わないの? 和解前提の話し合いをするんでしょ? 一発抜いて落ち着いたら?」
最後の一言は余計だ。煽ってどうするんだと思ってヒヤヒヤしたんだけど、キルダさんは第三者である俺にも迷惑をかけていると思い出したようで反論しない。
ようやく俺が間に入る好機が訪れた。
「この場で、どちらが悪いと決めるつもりはありません。キルダさんがメーベルさんを責めるような発言をしたら配信は終了します。それでいいですか?」
「それでかまわない」
「ありがとうございます」
言質は取った。これで最悪終わらせる選択もできるぞ。
続いてリスナーにも語りかける。
「また犯罪をしたわけじゃないですし、二人が納得した形で和解できたら皆はSNSで触れるのを止めてね」
チャット欄を見ると「了解」といったコメントばかりだ。反対する意見するような人たちはブロックしていたから、この結果は当然だな。
コラボ配信が終わった後で暴れても既に終わった話だといって無視できるし、和解さえ出来れば炎上案件は解決するはずだ。
「みんな納得してくれたみたいだね。それじゃキルダさんは、何に納得してないか教えてもらえる?」
「…………あんだけベタベタ触っておきながら、会計が終わる前に黙って帰ったこと。それだけだ」
男のプライドが許さなかったのか、ホテルへ連れて行けなかったことには触れなかった。拍子抜けだ。
「帰ったことの理由が知りたい、であっていますか?」
「おう。それでいい」
「だ、そうですけどメーベルさんから説明してもらえますか」
「私は良いけど、優しい気持ちをもって言った方がよさげだよね」
「うん。酷い言葉は使わないように」
キルダさんを怒らせたいなら別だけど、目的は和解なんだから言い方には気をつけて欲しい。
大人なんだから出来るでしょ。
そういった期待を込めて言った。
「おっけー。だったら簡単に説明するけど、顔が好みじゃなく自慢ばかりの会話に飽きてたんだよね~。会計が終わった後だと強引に連れて行かれそうだったから、自衛のために逃げたの。これで納得した?」
「会計前にそのことをキルダさんに説明していたら、今回の炎上は回避できたんじゃないの?」
「初対面の男に言えるわけないよ。腕力じゃ勝てないんだから。逃げるのが一番だと思ったんだよ」
「それほどの危機感を覚えたってこと?」
「筋肉がすごかったからね。私は怖いと思った」
中の人の見た目に言及するのは良くないが、今回は仕方ないだろう。
「ただ黙って帰ったことは悪いことをしてしまったと反省はしている。ごめんなさい。ご飯代も返すから許してもらえないかな?」
悪いところを認め、メーベルさんは誠意を込めて謝罪をした。
相手が突っ込む前に言えたのは大きい。誹謗中傷DMを晒した後ということもあって、キルダさんが追加攻撃してしまえば、リスナーは弱い者虐めに見えるだろう。正義と悪は表裏一体。状況が変われば反転するのだ。
「事情を知りたかっただけだ。怖い思いをさせて悪かったな。メシ代はいらん。俺が好きにやったことだ」
「それでいいんですか? もっと謝罪して欲しいことありませんか?」
「あるっちゃあるが、俺のせいでメーベルにも迷惑をかけているようだし、お互い様ってことで終わりにしよう」
「メーベルさんもそれでいいですか?」
「私はキルダに文句を言いたい事なんてないからね。謝罪を受け取って終わりにしてくれるならありがたいよ~」
二人の関係はなんとか落ち着いたようだ。
問題は解決したのでコラボ配信をダラダラと続ける必要はない。
軽いエンドトークをしてから終わらせる。
「メーベルさんとキルダさんの関係が修復できたので、今回のコラボ配信は終わりにしたいと思います! みなさん視聴ありがとうございました!」
配信をブツッと切る。
裏側で繋がっていたキルダさんとの通話は切れていたけど、配信に来てくれたお礼チャットはしておいた。
当然のように返信はない。
「お疲れさま~~! 聖夜くんのおかげで炎上は止まりそうだよ!」
「いえいえ。無事に解決したのはキルダさんが配信に来てくれたからですよ」
当初の予定では攻撃的なメッセージを減らして味方を増やすぐらいしか出来なかったので、彼の登場で一気に解決したのは間違いない。運に恵まれた。
「そりゃ~そうだけどさ~~! あれだけSNSじゃ文句言ってたのに、先に謝ったらしゅんとなるのダサいよね! 本当に嫌いなタイプ。逃げて正解だったよ!」
「間違っても外部には言わないでね。また燃えるよ」
「わかってるって~。言うの聖夜くんだけ。特別なんだからっ!」
また男を勘違いさせるような発言をしている。一回の炎上だけじゃ懲りてないようだ。
「次に燃えても助けないから」
「といっても助けてくれるんだよね。知っているよ~」
「本当に燃えないでね……」
頼んだぞ!
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