41 / 43
第41話 同志発見
しおりを挟む
「それは例の男性VTuberは、フィーリングみたいなことは言ってなかったけど本当なの?」
「もちろん。証拠もあるよ」
画面の中央に、やりとりをしていたチャットのスクリーンショットが表示された。個人情報は隠しているけど、全体の流れはわかるようになっている。
「本当だ。絶対にヤるとは約束してないみたいだね」
「当然でしょ。顔や体臭、態度が気に入らなかったらお金もらってもヤりたくないから」
チャット欄でリスナーの反応を見ると、新しい情報に驚いているようだった。
特に女性っぽい名前をしているアカウントは同情的なコメントが多く、メーベルさんを支持している。男だって批判は少ない。
[まなぶ:ダメになると分かっていながらメシをおごって逃げられたんだろ? ヤバイのは男の方じゃね?]
このコメントで決まったような気がする。
メーベルさんが絶対に悪いという意見は見受けられず、どっちもどっちという空気になった。
流れに乗るしかない。
「でも。メーベルさんだって悪いところはあったよね?」
「そうだね~。反省するべき点があるとしたらボディタッチが多かったとか、カッコイイ~なんて褒めたことかな。もし勘違いさせたんだったらごめんなさい」
頭を下げて画面越しから謝罪をした。
表に出てなかった事実を伝え、悪かったところを認めた人を批判するようなリスナーはいない。
そもそもの話、今回は犯罪でも何でもなく、ただの男女トラブルだ。お互い様と思える状況であればあえて攻撃する必要はないのだ。
さらにここで、別の被害がでていると教えれば空気は完全にこっちの流れになる。
「ちゃんと謝罪して偉いでね」
「年下にそれ言われるとムカつくんですけどー」
「嫌だったら燃えるような行動をしないことだね」
「それ言われたら言い返せない。ズルいよ」
甘い声を出して負けを認めた。男心をくすぐるというか、庇護したくなるような気持ちをかき立てる。
これが数々の男とオフパコした女性の力か!
「でさー。そんなズルい男の子に話があるんだ」
「何があったの?」
「炎上してから酷いDMがたくさん来ているの。どうすればいいか相談させて」
「いいよ」
「それじゃ一つ目の相談をするね!」
ようやく台本通りに話してくれて助かる。
やや赤みを帯びた薄い黄色と黒が混ざったモザイクのかかった写真を数枚表示した。
よく見れば、何を隠しているかはわかるようになっている。しかしここは、あえて説明してもらおう。
「これなんですか?」
「男性器! 炎上してから何枚も来てるんだけど!」
見ている人が深刻そうに感じないよう笑っている。リスナーが楽しめているか気になってチャット欄を見た。
[キラキラJD:モザイク解除希望!]
[キラキラJD:はやく! はやく!]
[キラキラJD:それかDMでこっそり送って!!]
常連の一人が暴走している。どんだけ見たいんだよ……。
「いいの? 汚いおっさんのブツかもよ?」
[キラキラJD:むしろ最高! 汚ければ汚いほど参考資料としての価値が高まる! 男同士のからみのバリエーションが増えるんだよ!]
「参考……へぇ。あなたもイイ趣味をしてそう。後で話そっか」
俺を置いて二人は仲良くなってしまったようだ。直感が深く立ち入るなとささやいてくるので、画像を切り替える。
「他にも胸のサイズを聞いてくるDMや襲撃予告も来ているみたいなんだ」
先に下ネタ系を紹介してから、次にやや深刻な内容の画像を表示する。テキストの量は多くない。シンプルに個人情報を特定して襲ってやると書かれている。
読み上げ終わるとチャット欄は、流石にこれはないという反応ばかり。自業自得などと書き込むリスナーすらいない。
他にもいくつか誹謗中傷のDMを晒して同情的なコメントを増やしていく。
話している途中でSNSをチェックしてみると、配信の切り抜きがいくつか出回っていて、世間の矛先が男性VTuberの方に向かっていた。
炎上は収まると思ったら、予想とは違う動きをしている。
せめて誹謗中傷を送った人たちに向けば良かったのに。今から軌道修正できるか……?
[キルダ:俺も配信に混ぜろ]
チャット欄に気になる名前があった。メーベルさんを炎上させた相手だ。
「コソコソ逃げ回っていると思ったら、表舞台に立つ勇気ぐらいはあったんだ」
メーベルさんは、ぞっとするほど冷たい声で言い放った。見下すような発言だ。フィーリングがあわなかったぐらいじゃ、こうはならない。二人の間には俺にすら言っていない何かがあるんじゃないかと感じた。
「聖夜くん。彼を呼んでもいい?」
「ケンカしないなら」
「しないって! キルダも節度は守れるよね?」
[キルダ:当然だ。お前とは違う]
「だってさ」
チャット欄を見ると参加させてほしいという意見が多い。外野からすれば盛り上がってきたって感じなんだろう。俺が断ったらガッカリしそうだ。
それにキルダさんには悪いことをしてしまったという後ろめたさもある。
許可してもいいか。
「和解する前提での話し合いならいいよ」
「うん。そうする。それじゃ、早くおいで」
[キルダ:すぐに行く。待ってろ]
数秒してから俺のアカウントにフレンド申請が来た。名前はキルダ。
即座に許可をして繋がると通話の準備を始めた。
「もちろん。証拠もあるよ」
画面の中央に、やりとりをしていたチャットのスクリーンショットが表示された。個人情報は隠しているけど、全体の流れはわかるようになっている。
「本当だ。絶対にヤるとは約束してないみたいだね」
「当然でしょ。顔や体臭、態度が気に入らなかったらお金もらってもヤりたくないから」
チャット欄でリスナーの反応を見ると、新しい情報に驚いているようだった。
特に女性っぽい名前をしているアカウントは同情的なコメントが多く、メーベルさんを支持している。男だって批判は少ない。
[まなぶ:ダメになると分かっていながらメシをおごって逃げられたんだろ? ヤバイのは男の方じゃね?]
このコメントで決まったような気がする。
メーベルさんが絶対に悪いという意見は見受けられず、どっちもどっちという空気になった。
流れに乗るしかない。
「でも。メーベルさんだって悪いところはあったよね?」
「そうだね~。反省するべき点があるとしたらボディタッチが多かったとか、カッコイイ~なんて褒めたことかな。もし勘違いさせたんだったらごめんなさい」
頭を下げて画面越しから謝罪をした。
表に出てなかった事実を伝え、悪かったところを認めた人を批判するようなリスナーはいない。
そもそもの話、今回は犯罪でも何でもなく、ただの男女トラブルだ。お互い様と思える状況であればあえて攻撃する必要はないのだ。
さらにここで、別の被害がでていると教えれば空気は完全にこっちの流れになる。
「ちゃんと謝罪して偉いでね」
「年下にそれ言われるとムカつくんですけどー」
「嫌だったら燃えるような行動をしないことだね」
「それ言われたら言い返せない。ズルいよ」
甘い声を出して負けを認めた。男心をくすぐるというか、庇護したくなるような気持ちをかき立てる。
これが数々の男とオフパコした女性の力か!
「でさー。そんなズルい男の子に話があるんだ」
「何があったの?」
「炎上してから酷いDMがたくさん来ているの。どうすればいいか相談させて」
「いいよ」
「それじゃ一つ目の相談をするね!」
ようやく台本通りに話してくれて助かる。
やや赤みを帯びた薄い黄色と黒が混ざったモザイクのかかった写真を数枚表示した。
よく見れば、何を隠しているかはわかるようになっている。しかしここは、あえて説明してもらおう。
「これなんですか?」
「男性器! 炎上してから何枚も来てるんだけど!」
見ている人が深刻そうに感じないよう笑っている。リスナーが楽しめているか気になってチャット欄を見た。
[キラキラJD:モザイク解除希望!]
[キラキラJD:はやく! はやく!]
[キラキラJD:それかDMでこっそり送って!!]
常連の一人が暴走している。どんだけ見たいんだよ……。
「いいの? 汚いおっさんのブツかもよ?」
[キラキラJD:むしろ最高! 汚ければ汚いほど参考資料としての価値が高まる! 男同士のからみのバリエーションが増えるんだよ!]
「参考……へぇ。あなたもイイ趣味をしてそう。後で話そっか」
俺を置いて二人は仲良くなってしまったようだ。直感が深く立ち入るなとささやいてくるので、画像を切り替える。
「他にも胸のサイズを聞いてくるDMや襲撃予告も来ているみたいなんだ」
先に下ネタ系を紹介してから、次にやや深刻な内容の画像を表示する。テキストの量は多くない。シンプルに個人情報を特定して襲ってやると書かれている。
読み上げ終わるとチャット欄は、流石にこれはないという反応ばかり。自業自得などと書き込むリスナーすらいない。
他にもいくつか誹謗中傷のDMを晒して同情的なコメントを増やしていく。
話している途中でSNSをチェックしてみると、配信の切り抜きがいくつか出回っていて、世間の矛先が男性VTuberの方に向かっていた。
炎上は収まると思ったら、予想とは違う動きをしている。
せめて誹謗中傷を送った人たちに向けば良かったのに。今から軌道修正できるか……?
[キルダ:俺も配信に混ぜろ]
チャット欄に気になる名前があった。メーベルさんを炎上させた相手だ。
「コソコソ逃げ回っていると思ったら、表舞台に立つ勇気ぐらいはあったんだ」
メーベルさんは、ぞっとするほど冷たい声で言い放った。見下すような発言だ。フィーリングがあわなかったぐらいじゃ、こうはならない。二人の間には俺にすら言っていない何かがあるんじゃないかと感じた。
「聖夜くん。彼を呼んでもいい?」
「ケンカしないなら」
「しないって! キルダも節度は守れるよね?」
[キルダ:当然だ。お前とは違う]
「だってさ」
チャット欄を見ると参加させてほしいという意見が多い。外野からすれば盛り上がってきたって感じなんだろう。俺が断ったらガッカリしそうだ。
それにキルダさんには悪いことをしてしまったという後ろめたさもある。
許可してもいいか。
「和解する前提での話し合いならいいよ」
「うん。そうする。それじゃ、早くおいで」
[キルダ:すぐに行く。待ってろ]
数秒してから俺のアカウントにフレンド申請が来た。名前はキルダ。
即座に許可をして繋がると通話の準備を始めた。
0
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました
鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。
素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。
とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。
「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる