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笑わぬ虎は、青瞳を愛する。
episódio.31 ルサンチマン
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このひょうきん三銃士、いつごろから待機していたのであろうか。
キドンの紫宸殿からあぶり出てきたところを眺めて、あきらかに愉快痛快な気分といった気分がその憫笑に表面化している。
思うに、普段ろぼうの大石のごときキドンがタイラント国王から鉄面皮を破られて外堀を埋められゆく過程を、はじめから盗聴していたようだ。
憔悴するキドンの困憊したありさまを再三瞥見する三銃士は、いかにも絶好の見世物よと言わんばかりに、加虐心をあらわにした。
三銃士のうち、布袋腹の禿頭がほざく。
「見ものだよなァ、鬼が鬼の首を取ってこようなんてェ」
三銃士のうち、のっぽな八頭身野郎がつばを吐き捨てる。
「鬼の首はでっかいんだぜ、そんなちっぽけなからだで本当にやれるのかよ」
三銃士のうち、切り込み隊長の肥大漢が皮肉をこぼす。
「将帥さんよぉ。もし鬼の首を取れなかったら、その帯《おび》ほどいてやらぁ。ケツよこせよな」
三人組はそろって、キドンをとげとげしく小馬鹿にして哄笑する。
冗談にしてはぎょうぎょうしく節度を超えているが、連中にとってはほんのジョークのつもりであっただろう。
だが生真面目なキドンは、それを真に受けてしまうのだった。キドンの堪忍袋の緒が、ついに切れる。
五臓六腑を、げに荒々しい野獣がほとばしる。啸風子だ。
うだつの上がらぬような一同がそれほどまでにちゃらんぽらんとして弁舌をろうするのならば、お望み通りしかと鬼の首を討ち取ってご覧に入れよう。
腰巾着の本領を発揮して国家に仕え尽くし、その重圧で堅城がかたむけばいい。
たとえキドンが私欲に負けてシェメッシュ小邦へ寝返ったとしても、きっとどうせ三銃士から埒外までにおよんで夜陰にまぎれながらくどくどしく「あいつは売国者だ」などと小言を語られるであろう。そればかりは、キドンの気高きプライドが許さない。
かくのごとくへらず口なやからを今晩こそは叩きつぶして一泡吹かせてやろうじゃないか、キドンは瞳子に烈火をあたぎらせる。
さるにても、憤怒で肩手がわななかなかったのは、以上の事柄でようやく緊褌一番の覚悟ができたからかもしれない。
さようなるままにして、その憤懣の矛先は、あらぬことにアルコにも向けられた。
ゆえは、アルコとの邂逅せいで、キドンの眺望する世界が一変したからだ。
あいつさえいなければ、ささいな人種差別など一顧だにもしなかった日常が平凡なるものと感じることに変動はなかった。
あいつが現れたから、己の忠君愛国たる精神は支障をきたしたのだ。
キドンは、よくも忠犬の情をほだしてくれおったなと、アルコに汚名をなすりつけた。
この瞬間に、キドンのうつつごころに秘めたるアルコへの愛染が、みにくい憎悪へと転換する。
そうして、阿修羅のごとくの怫然に癲狂したキドンの、純白でかった両瞳にはもう、やしなわれたアルコとの友情は消え失せていた。あれほどアルコに執心していた糸も、あっけなく途切れる。
愛憎とは表裏一体なるものぞと、先人の知恵が光るようだ。
キドンは、タイラント国王から手渡されたサーベルの長柄を、あしかけ一ヶ月にも及ばなかった恋煩いの酩酊感に終止符を打つかのように、改めてわしづかみにする。
それから、哄笑の三銃士を尻目に一睨してただ一人、大手門をくぐって密林へと入って行くのであった。
キドンの紫宸殿からあぶり出てきたところを眺めて、あきらかに愉快痛快な気分といった気分がその憫笑に表面化している。
思うに、普段ろぼうの大石のごときキドンがタイラント国王から鉄面皮を破られて外堀を埋められゆく過程を、はじめから盗聴していたようだ。
憔悴するキドンの困憊したありさまを再三瞥見する三銃士は、いかにも絶好の見世物よと言わんばかりに、加虐心をあらわにした。
三銃士のうち、布袋腹の禿頭がほざく。
「見ものだよなァ、鬼が鬼の首を取ってこようなんてェ」
三銃士のうち、のっぽな八頭身野郎がつばを吐き捨てる。
「鬼の首はでっかいんだぜ、そんなちっぽけなからだで本当にやれるのかよ」
三銃士のうち、切り込み隊長の肥大漢が皮肉をこぼす。
「将帥さんよぉ。もし鬼の首を取れなかったら、その帯《おび》ほどいてやらぁ。ケツよこせよな」
三人組はそろって、キドンをとげとげしく小馬鹿にして哄笑する。
冗談にしてはぎょうぎょうしく節度を超えているが、連中にとってはほんのジョークのつもりであっただろう。
だが生真面目なキドンは、それを真に受けてしまうのだった。キドンの堪忍袋の緒が、ついに切れる。
五臓六腑を、げに荒々しい野獣がほとばしる。啸風子だ。
うだつの上がらぬような一同がそれほどまでにちゃらんぽらんとして弁舌をろうするのならば、お望み通りしかと鬼の首を討ち取ってご覧に入れよう。
腰巾着の本領を発揮して国家に仕え尽くし、その重圧で堅城がかたむけばいい。
たとえキドンが私欲に負けてシェメッシュ小邦へ寝返ったとしても、きっとどうせ三銃士から埒外までにおよんで夜陰にまぎれながらくどくどしく「あいつは売国者だ」などと小言を語られるであろう。そればかりは、キドンの気高きプライドが許さない。
かくのごとくへらず口なやからを今晩こそは叩きつぶして一泡吹かせてやろうじゃないか、キドンは瞳子に烈火をあたぎらせる。
さるにても、憤怒で肩手がわななかなかったのは、以上の事柄でようやく緊褌一番の覚悟ができたからかもしれない。
さようなるままにして、その憤懣の矛先は、あらぬことにアルコにも向けられた。
ゆえは、アルコとの邂逅せいで、キドンの眺望する世界が一変したからだ。
あいつさえいなければ、ささいな人種差別など一顧だにもしなかった日常が平凡なるものと感じることに変動はなかった。
あいつが現れたから、己の忠君愛国たる精神は支障をきたしたのだ。
キドンは、よくも忠犬の情をほだしてくれおったなと、アルコに汚名をなすりつけた。
この瞬間に、キドンのうつつごころに秘めたるアルコへの愛染が、みにくい憎悪へと転換する。
そうして、阿修羅のごとくの怫然に癲狂したキドンの、純白でかった両瞳にはもう、やしなわれたアルコとの友情は消え失せていた。あれほどアルコに執心していた糸も、あっけなく途切れる。
愛憎とは表裏一体なるものぞと、先人の知恵が光るようだ。
キドンは、タイラント国王から手渡されたサーベルの長柄を、あしかけ一ヶ月にも及ばなかった恋煩いの酩酊感に終止符を打つかのように、改めてわしづかみにする。
それから、哄笑の三銃士を尻目に一睨してただ一人、大手門をくぐって密林へと入って行くのであった。
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