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ナディエは複雑な表情で私の返答を待ちました。彼女もディートハルト様とエミール様のキスの現場を目撃したので、今の私の気持ちを汲んでくれているのでしょう。
「会いたくないから……お引き取り願って……」
私がこう答えても、ナディエは私をじっと見つめたまま動きませんでした。
「恐れながら……お話したほうがよろしいかと存じます。心中お察ししますが」
もちろん事実を確かめたい気持ちもありましたが、意地になっていました。ディートハルト様は「説明したい」と言っていたので、きっと抜き差しならない事情があるのでしょう。頭ではわかっていても、感情がままなりませんでした。
「話したい気分じゃないのよ。……そもそも私の義務って、月に一度の会食だけでしょ? 今ディートハルト様と話す義務はないわ」
「ビアンカ様のほうからお話する必要はありません。ディートハルト様のお話を聞くだけで十分かと思います」
「話を聞いてどうするのよ。実は同性愛者でした。罪から逃れるために、私との結婚を利用してました。そんなことを聞くためにまた会うの? いいのよ別に……私だってあの人を利用するつもりで結婚したんだから……お互い様……」
「もしディートハルト様がそのようにおっしゃるなら、それはそれでしょう。しかし、何か別のことをおっしゃるかもしれません」
「……どうかしら」
「王家の方も、貴族の方もそうですが……たいていの揉め事は、実際に会って話さないことから生じます。わたしの使用人としての経験上、そう言えます」
ナディエが真剣な面持ちで粘り強く説得してくるので、それを聞かないのも悪い気がしてきました。言ってくれていることは正しいと思ったし、気持ちとしてはげんなりするけれども、この城で生きていくからにはしかたないかなという諦めもありました。もう子どもではありませんから、対話を拒否するという態度では事態は改善しないでしょう。むしろきちんと対話して、言いたいことははっきり言っておくほうがよさそうです。
「わかったわ。じゃあディートハルト様をお通しして。聞くだけ聞くわ」
ナディエは私の返答を聞き、微笑みました。
「かしこまりました。呼んで参ります」
こうして私はディートハルト様と再び対面しました。彼は思ったよりも落ち着いていて、意を決したような顔をしていました。
「さっきはびっくりさせてごめん。信じてもらえないかもしれないが……単刀直入に言うと……僕は同性愛者ではないんだ。恋愛対象は女性だ」
「会いたくないから……お引き取り願って……」
私がこう答えても、ナディエは私をじっと見つめたまま動きませんでした。
「恐れながら……お話したほうがよろしいかと存じます。心中お察ししますが」
もちろん事実を確かめたい気持ちもありましたが、意地になっていました。ディートハルト様は「説明したい」と言っていたので、きっと抜き差しならない事情があるのでしょう。頭ではわかっていても、感情がままなりませんでした。
「話したい気分じゃないのよ。……そもそも私の義務って、月に一度の会食だけでしょ? 今ディートハルト様と話す義務はないわ」
「ビアンカ様のほうからお話する必要はありません。ディートハルト様のお話を聞くだけで十分かと思います」
「話を聞いてどうするのよ。実は同性愛者でした。罪から逃れるために、私との結婚を利用してました。そんなことを聞くためにまた会うの? いいのよ別に……私だってあの人を利用するつもりで結婚したんだから……お互い様……」
「もしディートハルト様がそのようにおっしゃるなら、それはそれでしょう。しかし、何か別のことをおっしゃるかもしれません」
「……どうかしら」
「王家の方も、貴族の方もそうですが……たいていの揉め事は、実際に会って話さないことから生じます。わたしの使用人としての経験上、そう言えます」
ナディエが真剣な面持ちで粘り強く説得してくるので、それを聞かないのも悪い気がしてきました。言ってくれていることは正しいと思ったし、気持ちとしてはげんなりするけれども、この城で生きていくからにはしかたないかなという諦めもありました。もう子どもではありませんから、対話を拒否するという態度では事態は改善しないでしょう。むしろきちんと対話して、言いたいことははっきり言っておくほうがよさそうです。
「わかったわ。じゃあディートハルト様をお通しして。聞くだけ聞くわ」
ナディエは私の返答を聞き、微笑みました。
「かしこまりました。呼んで参ります」
こうして私はディートハルト様と再び対面しました。彼は思ったよりも落ち着いていて、意を決したような顔をしていました。
「さっきはびっくりさせてごめん。信じてもらえないかもしれないが……単刀直入に言うと……僕は同性愛者ではないんだ。恋愛対象は女性だ」
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