一度の浮気でも絶対に許しません。後悔なら勝手にしてください。

3

「ローラ、ちがうんだ！　俺は君だけを愛している！　この隣の女性とは浮気だったかもしれない。でも、あくまでたった一度の浮気なんだ。本気なのは君だけだよ！」

クリストフ様は、あえて浮気を認める作戦に出た。
認めるというのは百歩譲って……も気持ち悪いし、やっぱり何周考えても気持ち悪い男としか思えない。

クリストフ様は私のあきらかに軽蔑した表情を見て焦っている。
浮気現場で聞く「本気なのは君だけだよ」の信憑性のなさ。
本当に「人間理解」が深まっているのかしら。
むしろ「人間理解」を学べないから、私が来るかもしれないような裏庭で浮気しているんでしょう？

私はもう少しクリストフ様を泳がせてみようと思った。
「じゃあ、浮気を認めるのね？　悪いと思っているのね？」

クリストフ様は顔がぱっと明るくなった。
これは許してもらえるフラグだと。
説得できるかもしれないという一筋の光がクリストフ様に差したようだった。
許しませんけどね。ああ、きもちわる。

「そうだ！　これは浮気だった！　君のことを愛しすぎるがゆえに、束縛してしまってはいけないと思ったんだ。君もなにかと忙しい身分だろ？　君のためにあえてこうして二番手の女性を使い気を紛らわせていたんだ」

「私のため……？」
私はため息が出た。束縛したくないから他の女で気を紛らわせる？　マリアーナだって、泣き始めちゃったじゃない。しょうがないよね。お互いクリストフ様がこんなクズ男だと思わなかったもんね。

「君のために僕は生きている。生涯、ともに過ごそう」

「……苦しい言い訳ですね。私を傷つけ、マリアーナだって傷つけて。私はクリストフ様を愛していました。でももう私の愛はなくなりました。あなたがなくしてしまったのです」

「そ、そんな……。またやり直そう！　僕たちだったらできるよ！　出逢った頃のように戻って、そして……」

「時間は元には戻らないんですよ」


おそらく浮気は一度や二度ではないんだろう。
私に愛していると言ってくれたときも、私といない時間には別の女に愛していると言っていたにちがいない。
嘘で塗り固められた、嘘だらけの生活。あんなにうきうきして楽しかった日々は、嘘の上に成り立っていたんだ。


「ローラ！」


クリストフ様は立ち上がり、私の両肩に手をやった。