2 / 13
2
しおりを挟む
ことあるごとに私の近くにいるようになった姉はオリバーと過度なスキンシップをとっていたのだが、その様子を姉の婚約者レオが見てしまった。しかも、ちょうど私がいないタイミングで、姉はオリバーと二人だった。
レオは国王の三男で、いわゆる第三王子だ。姉は美貌と教養を見込まれて王家へ嫁ぐことになっていた。エバンズ家からすると、王家とのこれ以上ない縁談だった。
「ソフィア! ソフィアじゃないか! なんでその男とくっついて歩いている?」
「レオ様!? なぜこのようなところにいらっしゃるのですか!?」
「城へ帰る途中だ。その男は誰だ? なぜ荷物を運んでいる?」
「この人は妹の婚約者です。妹の引っ越しを手伝っていただけなのです。誤解なさらないでください!」
「妹の婚約者と、どうしてそんなに親しげに歩いているんだ! 心のきれいな女性だと思っていたのに、軽い女だったとはな! 結婚の話は無しにする。今日父上に申し上げておく」
「お待ちください。勘違いなさっています。私にはレオ様しかおりません。信じてください……」
「浮気女が口を開くな! 汚らわしい!」
レオはお付きの者に何かを耳打ちして、立ち去った。
という事件だったそうだ。私も姉に付き添っていた使用人に聞いただけだから詳細はわからない。姉とオリバーが家に帰ったとき、私は自分の部屋の片付けをしていた。
道中での事件を聞いて両親も姉もお通夜のような状態になった。貞操を重んじる王家だから、破談もしかたないだろう。
正直、私は心のなかでは可笑しくてたまらなかった。姉は自分で調子に乗って自爆した。姉の本性がレオにわかってもらえて最高の気分。なんでも思いどおりになる人生だったからオリバーにも手を出したかったのかもしれないけど、ざまぁみろという感じ。
後日、王家からの使者で正式な婚約破棄の手続きが行われた。裁判を起こすこともできるが、王家の息のかかった裁判所ではどうしようもできない。それに裁判などしてしまっては伯爵の立場そのものが危うくなってしまう。むしろエバンズ家が恐れていたのは、裁判を起こされてしまうことだった。父は急いで嘆願書と慰謝料を王家に送った。
両親は相変わらずソフィアを慰めていて「きっとなにかの間違いよ。レオ様もお許しくださるはず」などと言っていたが、王家の印がついた文書が来たとなると、望みはほとんどない。両親にとっても姉にとっても気の毒な話ではあるが、私の心はすっきりしていて、幼少の頃からのつっかえがとれたような気がしている。こんなに清々しい気持ちになったのは初めてかもしれない。
私は自分の部屋の片付けを止めていた。
オリバーが来る日になって、私はオリバーと話をしようと思った。姉は婚約破棄されたのだし、それには少なからずオリバーの責任もある。オリバーがはっきり断っていれば、今回の騒動にはならなかったかもしれない。私にとっては嬉しい騒動なのだが。
「オリバー、話があるの」
「……わかったよ……」
オリバーは顔面蒼白で、呼吸をしているのがやっとのような様子だった。
レオは国王の三男で、いわゆる第三王子だ。姉は美貌と教養を見込まれて王家へ嫁ぐことになっていた。エバンズ家からすると、王家とのこれ以上ない縁談だった。
「ソフィア! ソフィアじゃないか! なんでその男とくっついて歩いている?」
「レオ様!? なぜこのようなところにいらっしゃるのですか!?」
「城へ帰る途中だ。その男は誰だ? なぜ荷物を運んでいる?」
「この人は妹の婚約者です。妹の引っ越しを手伝っていただけなのです。誤解なさらないでください!」
「妹の婚約者と、どうしてそんなに親しげに歩いているんだ! 心のきれいな女性だと思っていたのに、軽い女だったとはな! 結婚の話は無しにする。今日父上に申し上げておく」
「お待ちください。勘違いなさっています。私にはレオ様しかおりません。信じてください……」
「浮気女が口を開くな! 汚らわしい!」
レオはお付きの者に何かを耳打ちして、立ち去った。
という事件だったそうだ。私も姉に付き添っていた使用人に聞いただけだから詳細はわからない。姉とオリバーが家に帰ったとき、私は自分の部屋の片付けをしていた。
道中での事件を聞いて両親も姉もお通夜のような状態になった。貞操を重んじる王家だから、破談もしかたないだろう。
正直、私は心のなかでは可笑しくてたまらなかった。姉は自分で調子に乗って自爆した。姉の本性がレオにわかってもらえて最高の気分。なんでも思いどおりになる人生だったからオリバーにも手を出したかったのかもしれないけど、ざまぁみろという感じ。
後日、王家からの使者で正式な婚約破棄の手続きが行われた。裁判を起こすこともできるが、王家の息のかかった裁判所ではどうしようもできない。それに裁判などしてしまっては伯爵の立場そのものが危うくなってしまう。むしろエバンズ家が恐れていたのは、裁判を起こされてしまうことだった。父は急いで嘆願書と慰謝料を王家に送った。
両親は相変わらずソフィアを慰めていて「きっとなにかの間違いよ。レオ様もお許しくださるはず」などと言っていたが、王家の印がついた文書が来たとなると、望みはほとんどない。両親にとっても姉にとっても気の毒な話ではあるが、私の心はすっきりしていて、幼少の頃からのつっかえがとれたような気がしている。こんなに清々しい気持ちになったのは初めてかもしれない。
私は自分の部屋の片付けを止めていた。
オリバーが来る日になって、私はオリバーと話をしようと思った。姉は婚約破棄されたのだし、それには少なからずオリバーの責任もある。オリバーがはっきり断っていれば、今回の騒動にはならなかったかもしれない。私にとっては嬉しい騒動なのだが。
「オリバー、話があるの」
「……わかったよ……」
オリバーは顔面蒼白で、呼吸をしているのがやっとのような様子だった。
221
あなたにおすすめの小説
私の夫は妹の元婚約者
彼方
恋愛
私の夫ミラーは、かつて妹マリッサの婚約者だった。
そんなミラーとの日々は穏やかで、幸せなもののはずだった。
けれどマリッサは、どこか意味ありげな態度で私に言葉を投げかけてくる。
「ミラーさんには、もっと活発な女性の方が合うんじゃない?」
挑発ともとれるその言動に、心がざわつく。けれど私も負けていられない。
最近、彼女が婚約者以外の男性と一緒にいたことをそっと伝えると、マリッサは少しだけ表情を揺らした。
それでもお互い、最後には笑顔を見せ合った。
まるで何もなかったかのように。
貴方に私は相応しくない【完結】
迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。
彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。
天使のような無邪気な笑みで愛を語り。
彼は私の心を踏みにじる。
私は貴方の都合の良い子にはなれません。
私は貴方に相応しい女にはなれません。
悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
短編 一人目の婚約者を姉に、二人目の婚約者を妹に取られたので、猫と余生を過ごすことに決めました
朝陽千早
恋愛
二度の婚約破棄を経験し、すべてに疲れ果てた貴族令嬢ミゼリアは、山奥の屋敷に一人籠もることを決める。唯一の話し相手は、偶然出会った傷ついた猫・シエラル。静かな日々の中で、ミゼリアの凍った心は少しずつほぐれていった。
ある日、負傷した青年・セスを屋敷に迎え入れたことから、彼女の生活は少しずつ変化していく。過去に傷ついた二人と一匹の、不器用で温かな共同生活。しかし、セスはある日、何も告げず姿を消す──
「また、大切な人に置いていかれた」
残された手紙と金貨。揺れる感情と決意の中、ミゼリアはもう一度、失ったものを取り戻すため立ち上がる。
これは、孤独と再生、そして静かな愛を描いた物語。
婚約破棄ですか、では死にますね【完結】
砂礫レキ
恋愛
自分を物語の主役だと思い込んでいる夢見がちな妹、アンジェラの社交界デビューの日。
私伯爵令嬢エレオノーラはなぜか婚約者のギースに絶縁宣言をされていた。
場所は舞踏会場、周囲が困惑する中芝居がかった喋りでギースはどんどん墓穴を掘っていく。
氷の女である私より花の妖精のようなアンジェラと永遠の愛を誓いたいと。
そして肝心のアンジェラはうっとりと得意げな顔をしていた。まるで王子に愛を誓われる姫君のように。
私が冷たいのではなく二人の脳みそが茹っているだけでは?
婚約破棄は承ります。但し、今夜の主役は奪わせて貰うわよアンジェラ。
姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します
しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。
失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。
そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……!
悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。
幼馴染の公爵令嬢が、私の婚約者を狙っていたので、流れに身を任せてみる事にした。
完菜
恋愛
公爵令嬢のアンジェラは、自分の婚約者が大嫌いだった。アンジェラの婚約者は、エール王国の第二王子、アレックス・モーリア・エール。彼は、誰からも愛される美貌の持ち主。何度、アンジェラは、婚約を羨ましがられたかわからない。でもアンジェラ自身は、5歳の時に婚約してから一度も嬉しいなんて思った事はない。アンジェラの唯一の幼馴染、公爵令嬢エリーもアンジェラの婚約者を羨ましがったうちの一人。アンジェラが、何度この婚約が良いものではないと説明しても信じて貰えなかった。アンジェラ、エリー、アレックス、この三人が貴族学園に通い始めると同時に、物語は動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる