浮気した婚約者は慰謝料地獄。過酷な労働を強いられる。

Hibah

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1 アリアの手紙 1/5

ジャネット先生へ
アリアより



ジャネット先生が田舎に帰ると伺い、こうして手紙をしたためています。修道院学校を卒業して五年が経ちましたが、お元気でしょうか? 卒業以来ご無沙汰しておりますが、辛いことがあるたびにジャネット先生の言葉を思い出して、日々を乗り越えています。

たくさんの方々に支えられて生きてきましたが、私の心の内を明かせるのはジャネット先生だけだと思っています。どうしても自分の過去や現在の気持ちを整理したくて、この手紙に書き記すことをお許しください。

私は子どもの頃から、自分が一番に愛される存在ではないと思ってきました。よく先生から「自分で自分を愛してあげなさい」と言われましたが、今でもそれは簡単にできることではありません。

しかし、結婚して子どもが生まれてからは、意識が変わりつつあるように思います。

かつて、家族を含め親戚たちにとっても、私はただの一人の女で、特に目立つ美しさもなければ、才能も際立っていませんでした。そのため、特別な扱いを受けたことはありません。親しい友人や幼なじみだってもちろんいますが、彼らにとっても私はその他大勢のうちの一人です。静かで控えめな性格だと周りから言われてきて、自分でもいつも目立たないほうだと思っています。

幼なじみのセリーヌとは今でも親友と呼び合う仲です。先生も彼女のことをよくご存知かと思いますが、彼女は私とは違って昔から洗練された美しさと活発な心を持つ女性で、多くの人に慕われています。セリーヌはガブリエル伯爵令息と夫婦になりましたね。私はセリーヌにとって最も大切な存在というわけではありませんが、彼女は今でも優しく接してくれます。



修道院学校に入学した十三歳の時、政略結婚の相手として一つ歳上のフィリップと毎日のように顔を合わせることになりました。彼もまた私の幼なじみでしたが、子どもどうしよりも父親どうしのほうが仲が良くて、入学前はたまに顔を合わせる程度でした。彼は頑丈な体格の持ち主で、時折鈍感なところがあるものの、その穏やかな声は聴く人を安心させます。

私たちは自然を散策することが好きで、庭園や近郊の森を歩きながら、季節の変わり目を感じるのが好きでした。また、古い城の廃墟を訪れ、歴史を語り合ったこともあります。

フィリップとの会話は楽しくて、一緒にいて自然体になれる相手でした。学校ではすでに婚約している男女は珍しくありませんでしたし、学校での交流を続けるうちに友達のような関係を築いていき、ゆくゆくは夫婦として最愛の存在になれるかもしれないと期待していました。修道院学校は、年齢や性別を超えて平等な人間関係が築ける場所で、私は心躍らせて学校生活をスタートさせました。



しかし、フィリップとの未来予想図が……幻想に過ぎなかったと悟る日が来ます。できれば一生気づきたくありませんでした。



はっきりと、あの日のことを覚えています。窓の外では秋風が木々を揺らし、落ち葉が舞い散っていた日のことです。フィリップ、フィリップの友人ダミアン、セリーヌ、私の四人で、修道院の食堂にいました(先生は私たちのことを「仲良し四人組」と言っていましたね)。


「ちょっと食い足りねえからさ、パン余ってないか見てくるわ!」


食いしん坊のダミアンが勢いよく立ち上がってその場を離れようとすると、セリーヌは「わたしも行く!」と言ってダミアンに付いていきました。そのとき、フィリップは何かを言いかけたものの口をつぐみました。そして離れていくセリーヌの後ろ姿をずっと目で追っているのです。

私の心臓の鼓動は早くなり、息が苦しくなりました。

フィリップの視線が私ではなく、セリーヌに注がれていることに気づいた時、私は初めて人の首を締めたいと思いました。目の前に婚約者がいながら、よくもあんなにねっとりと婚約者の親友を見つめられるものだなと。

このようなことを考えてはいけないとわかっています。私は私の中にある暴力的な気持ちが嫌いです。しかし、先生にだからこそ、この憎しみを正直に告白します。私は「仲良し四人組」の中にいて、ずっと独りでした。

ダミアンとセリーヌが戻って来た時、私はまるで何事もなかったかのように、四人の愉快な時間を過ごしました。三人を心配させてはいけないと思い、それまで以上の笑顔で接しました。



いいえ、先生……ごめんなさい。この話は、現実にあった痛みを隠すための空虚なドラマに過ぎないかもしれません。私にはわかっていました。セリーヌを初めてフィリップに紹介したその瞬間から、彼の心に火がついたことを。

心の奥で「ああ、これはまずい」と思いながらも、外面だけは冷静を装って「彼の目は恋の目ではない。あくまで親愛の目だ」と自分自身に言い聞かせました。しかし、私の目は確かだったと思います。フィリップが私から目を逸らしたあの日以来、彼の視線はセリーヌを求めるものとなり、その果てにはいつも彼女の愛らしい姿がありました。
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