2 / 20
2
しおりを挟む
(あの人……ローレンス様って言った……?)
私とリリアンは顔を見合わせて立ち止まった。
ローレンス様に会うのは来月。
それまで会ってはならないということはないと思うけど……偶然なのだし……。
ただこちらから話しかけるのも変よね。
私は小声でリリアンに話しかけた。
「今からローレンス様が出てくるのかしら……?」
リリアンも驚いていた。
「わたしも”ローレンス様”と言っているのが聞こえました」
「あなたは会ったことあるの?」
「いえ、お目にかかったことはありません。旦那様から、優しくて素晴らしい方だという話は聞いていますが……」
お父様も私にそう言っていた。
ローレンス様がどんな方なのか……気になる……けど、さすがにこんな店前で待ち構えて顔をジロジロ見るのは品がないわよね。
我慢してもう帰ろうかしら。
「ねえリリアン。どうする? あなただって見てみたいでしょ?」
自分が見たいだけなのに、なんとなくリリアンになすりつけてしまった……。
リリアンは困った顔をした。
「それはそうですけど……失礼にあたってもいけませんし……」
そのとき、一つのアイデアが浮かんだ。
「リリアン! あそこから見ましょう!」
私は店と店の間にある路地を指差した。真正面から見るのは無理でも、少し離れた陰からなら見れるかもしれない。
リリアンの手を引いて、走って物陰に隠れた。リリアンは気が進まなさそうだったのに、いざ隠れたあとは乗り気だった。
リリアンは小さい声の中にも興奮を忍ばせて、
「どんな方なんでしょうね」
と目を輝かせていた。
「なによ、あなたも見たかったんじゃない」
私がからかうように笑いながらこう言うと、リリアンは恥ずかしそうに頬を掻いた。
「あっ! お嬢様。出てきますよ」
私とリリアンはごくりと唾を飲み込み、ローレンス様を待った。
使用人の手引きで店を出てきたのは、立派なお召し物を着た男性だった。風貌からして貴族に間違いない。すらっとしたかなりの長身で、姿勢には自信が満ちているように見えた。
「あの方が……ローレンス様。かっこいいわね」
運がよかったのか悪かったのか、ローレンス様は私たちがいる方向とは反対に歩み始めた。横顔がちらっと見えただけなので、どんな顔かはっきりと見ることはできなかった。
「リリアン。ちゃんと見れた?」
「いえ、さすがにここからでは……」
隠れた場所が悪かったかしら。もう少しちゃんと見たかったけど、贅沢は言えない。
とても素敵な方だった。さすがお父様が見つけてきただけあるわ。オーラが違うし、使用人への態度も丁寧で、謙虚そう。ああいう方はきっと、結婚してから暴力を振るったりひどいことをしたりしない。
「リリアン。私、あの方がお相手でよかったわ」
「えっ?」
リリアンは眉を上げてびっくりしたように私の顔を見つめた。
「あの……お嬢様、わたしには一瞬横顔が見えただけで、あとは後ろ姿を眺めるばかりだったのですが……」
「私だってそうよ。でもね、直感でわかるの。きっと素敵な人よ」
「なるほど……」
リリアンは腑に落ちていないみたいだったけど、私は気にしなかった。ローレンス様は青色のお召し物を着ていたから、青色が好きなのかしら。趣味はどんなことをするのだろう。
その日から私は毎日毎時間のようにローレンス様の姿を思い出した。私のことを気に入ってくれるだろうかという不安も大きかった。実際に会ったときには何を話せばいいのだろうかと何度もシミュレーションした。ローレンス様と暮らし始めた場合、ローレンス様はどんな生活を送り、私と関わってくれるのかしら。
そうしていよいよ、ローレンス様と初めて顔合わせする日を迎えるのであった。
私とリリアンは顔を見合わせて立ち止まった。
ローレンス様に会うのは来月。
それまで会ってはならないということはないと思うけど……偶然なのだし……。
ただこちらから話しかけるのも変よね。
私は小声でリリアンに話しかけた。
「今からローレンス様が出てくるのかしら……?」
リリアンも驚いていた。
「わたしも”ローレンス様”と言っているのが聞こえました」
「あなたは会ったことあるの?」
「いえ、お目にかかったことはありません。旦那様から、優しくて素晴らしい方だという話は聞いていますが……」
お父様も私にそう言っていた。
ローレンス様がどんな方なのか……気になる……けど、さすがにこんな店前で待ち構えて顔をジロジロ見るのは品がないわよね。
我慢してもう帰ろうかしら。
「ねえリリアン。どうする? あなただって見てみたいでしょ?」
自分が見たいだけなのに、なんとなくリリアンになすりつけてしまった……。
リリアンは困った顔をした。
「それはそうですけど……失礼にあたってもいけませんし……」
そのとき、一つのアイデアが浮かんだ。
「リリアン! あそこから見ましょう!」
私は店と店の間にある路地を指差した。真正面から見るのは無理でも、少し離れた陰からなら見れるかもしれない。
リリアンの手を引いて、走って物陰に隠れた。リリアンは気が進まなさそうだったのに、いざ隠れたあとは乗り気だった。
リリアンは小さい声の中にも興奮を忍ばせて、
「どんな方なんでしょうね」
と目を輝かせていた。
「なによ、あなたも見たかったんじゃない」
私がからかうように笑いながらこう言うと、リリアンは恥ずかしそうに頬を掻いた。
「あっ! お嬢様。出てきますよ」
私とリリアンはごくりと唾を飲み込み、ローレンス様を待った。
使用人の手引きで店を出てきたのは、立派なお召し物を着た男性だった。風貌からして貴族に間違いない。すらっとしたかなりの長身で、姿勢には自信が満ちているように見えた。
「あの方が……ローレンス様。かっこいいわね」
運がよかったのか悪かったのか、ローレンス様は私たちがいる方向とは反対に歩み始めた。横顔がちらっと見えただけなので、どんな顔かはっきりと見ることはできなかった。
「リリアン。ちゃんと見れた?」
「いえ、さすがにここからでは……」
隠れた場所が悪かったかしら。もう少しちゃんと見たかったけど、贅沢は言えない。
とても素敵な方だった。さすがお父様が見つけてきただけあるわ。オーラが違うし、使用人への態度も丁寧で、謙虚そう。ああいう方はきっと、結婚してから暴力を振るったりひどいことをしたりしない。
「リリアン。私、あの方がお相手でよかったわ」
「えっ?」
リリアンは眉を上げてびっくりしたように私の顔を見つめた。
「あの……お嬢様、わたしには一瞬横顔が見えただけで、あとは後ろ姿を眺めるばかりだったのですが……」
「私だってそうよ。でもね、直感でわかるの。きっと素敵な人よ」
「なるほど……」
リリアンは腑に落ちていないみたいだったけど、私は気にしなかった。ローレンス様は青色のお召し物を着ていたから、青色が好きなのかしら。趣味はどんなことをするのだろう。
その日から私は毎日毎時間のようにローレンス様の姿を思い出した。私のことを気に入ってくれるだろうかという不安も大きかった。実際に会ったときには何を話せばいいのだろうかと何度もシミュレーションした。ローレンス様と暮らし始めた場合、ローレンス様はどんな生活を送り、私と関わってくれるのかしら。
そうしていよいよ、ローレンス様と初めて顔合わせする日を迎えるのであった。
1
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』
みこと。
恋愛
「あなたと子を作るつもりはない」
皇帝シュテファンに嫁いだエリザは、初夜に夫から宣言されて首をかしげる。
(これは"愛することのない"の亜種?)
前世を思い出したばかりの彼女は、ここが小説『冷酷皇帝の最愛妃』の中だと気づき、冷静に状況を分析していた。
エリザの役どころは、公爵家が皇帝に押し付けた花嫁で、彼の恋路の邪魔をするモブ皇妃。小説のシュテファンは、最終的には運命の恋人アンネと結ばれる。
それは確かに、子どもが出来たら困るだろう。
速やかな"円満離婚"を前提にシュテファンと契約を結んだエリザだったが、とあるキッカケで彼の子を身ごもることになってしまい──?
シュテファンとの契約違反におののき、思わず逃走したエリザに「やっと見つけた」と追いすがる夫。
どうやら彼はエリザ一筋だったらしく。あれ? あなたの恋人アンネはどうしたの?
※小説家になろう様でも掲載しています
※表紙イラスト:あさぎかな先生にコラージュアートをいただきました
※毎朝7時に更新していく予定です
本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました
音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。
____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。
だから私は決めている。
この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。
彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。
……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる