不純な浮気夫が許せないので、痛い目を見てもらいましょう。

Hibah

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ゴードン男爵は書斎に戻ると、エレオノーラに紅茶と菓子をうやうやしくすすめた。


「先生、大変お待たせ致しました。お口に合うかわかりませんが、うちで用意したものです。こちらを召し上がりながら、今後の学習計画を練りましょう」


エレオノーラはあまり興味がなさそうに「ありがとうございます」と静かに言うと、スケジュール帳を取り出した。


「さっそく申し上げます。このお屋敷までの行き帰りで2時間強かかります。教える時間は1時間ですが、交通の手間も含めて銀貨3枚はいただきたく思います。よろしいでしょうか?」


ゴードン男爵は満面の笑顔で何度もうなずいた。


「もちろんお支払いします。往復の馬車代も当方がもちますので、ご安心ください。ちなみに……銀貨を5枚払いますから、2時間教えていただくことは可能でしょうか?」


ゴードン男爵はこんな美人と一緒にいられるなら、いくらでもお金を出そうという心持ちだった。美人教師を探していたわけではないが、妻が探してきたのだからという大義名分もあったし、たくさん勉強したいというやる気をアピールすることにもなる。


「馬車代の件、ありがとうございます。お言葉に甘えさせてください。レッスン時間は……申し訳ありませんが、毎週日曜日の午後に1時間でお願いします。他にも生徒がいるため、これ以上の時間を確保できないのです……」


ゴードン男爵は内心ではがっかりしたが、「いえいえ、1時間確保してくださるだけでも十分です!」と明るく答えた。もはやどちらが貴族なのかわからない有様である。

エレオノーラが紅茶を口にしたのを見て、ゴードン男爵は少し安心した。


「ちなみに先生は……あの有名な貿易商グラーシモヴィチの娘なのですよね? 彼は大商人です。余計な詮索だと承知のうえですが……なぜ教師業をなさっているのですか? 貿易による収入が十分あるでしょうに……」


「わたしは……父の仕事を手伝ってきましたが、継ぐ気はありません。各国をまわる旅は確かに刺激的ですが、土地に根付き、子どもたちに言葉を教えたいと思うようになったのです。この国では平民にまで読み書きの能力が行き渡っていません。読み書きができれば、子どもたちはより多くの自分の可能性を開いていけると考えています」


「なんて素晴らしい考え方をお持ちで……お見それしました……。ところで、わしはもうご覧の通りの老体でして、こんなわしにも教えてくださるというのはどのようなご意思なのでしょう……?」


「教えるのは結果的に子どもが多くなるだろうというだけのことで、実際のところ学びに年齢は関係ありません。学び向上したいと願う人であれば、わたしは老若男女問わず力になりたいのです」


エレオノーラの美しさだけでなくその人間性にも深い感銘を受けたゴードン男爵は、たちまち彼女のとりこになってしまった。自分の人生の終盤に光を与えてくれる天使のようにも思えた。
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