最強は普通になりたいようです

巫女

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1章

期待

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藤宮が担架で運ばれ龍馬が控え室へ戻った直後、場内では

「藤宮先輩が負けたの?」
「あの新入生いつの間に動いたんだ?」
「何が起きたのか全く見えなかった…」
「嘘よ…藤宮先輩が負けるなんて…」

というような3年生代表の藤宮が新入生に負けた事実を受け入れられない生徒、龍馬が動いてから決着までの流れに目がついていかず困惑している生徒、また一部では龍馬の控え室を睨む生徒もいた
そんな生徒達を他所にアナウンスが鳴り響く

『まもなく、新入生代表と2年生代表の交流戦が始まります』

そのアナウンスで今までざわついていた生徒達は一気に静まり返った

一方その頃控え室では

龍馬「あの様子だと藤宮先輩は2年生代表にも負けてたんだろうな」
龍馬「何であんなのが3年生代表なんだか…」

でも…例えあんなのでも

龍馬「俺は…魔法に勝ったんだ」
龍馬「ふぅ~疲れたぁ!」
龍馬「もう負けてもいいや」

魔法に対抗出来ることがわかった時点でもう優勝なんていらん

龍馬「これで気楽にやれるな」

アナウンスが始まった

龍馬「さてとサラッと闘って自然に負けてきますか!」
龍馬「もう目立つのはゴメンだしね」

俺は清々しい気分で闘技場へ向かった

審判「これより!2年生代表白石花音しらいしかのんと新入生代表草薙龍馬の交流戦を始めます!」
審判「勝利条件は相手の戦闘不能か棄権のみ!降参は認められません!」
審判「始め!」

花音と呼ばれる女子生徒はとても気が強そうな俗にいうお嬢様系だった。金髪碧眼で髪はセミロング?なのかな。端正に整った顔についている目はやや吊り目で猫みたいだ。スタイルもボンキュッボンでまさに男の理想の人だ
だが…そんな彼女は今俺に向かって容赦なく魔法をぶっぱなしている

龍馬「ちょっとちょっと!危ないじゃないですか!当たったらどうするんですか!」
花音「私はあの自意識過剰な優男とは違うよ。君が強いのはわかった。だから舐めたりなんてしない。君のその純粋な強さに敬意を払って最初から飛ばしていくよ」

自意識過剰な優男?あぁ~藤宮先輩のことか
可哀想に後輩に舐められてますよ先輩
にしても舐めてないって言ってるのに勝てる気でいるのか…実力差っていうのがわかってないのか?

龍馬「そんな大した奴じゃないですよ俺は」

実際この人が藤宮先輩よりも強いのは事実だけど勝てない程じゃないんだよなぁ…まぁもう勝ちとかどうでもいいし、もうちょっと避けたらわざと転ぶか。

それから少し経ち

龍馬「そろそろだな~」
龍馬「うわっ」

タイミングを見計らい転んだ振りをする、すると

花音「…」

あれ?攻撃してこない?どうしたんだ?

花音「立ちなさい」
龍馬「!」
花音「わざと転んだのは分かってるわ。君さ私を馬鹿にしてるの?」
龍馬「あちゃ~ばれたか…」

結構演技には自身があったんだがなぁ…まぁバレたもんはしゃーない。折角勝つチャンスを上げたのにそれを無下にするなんて。

龍馬「で?何で攻撃しなかったんですか?勝てたのに」
花音「あなたみたいにヘラヘラした人から勝利をのが嫌だからよ。私はあなたから勝利をだけよ。」

もちろん、全力のあなたからね。と付け加える白石先輩。よろしい、なら相手をしてあげよう。予定変更だ勝ちにいく

龍馬「後悔しないで下さいよ?」
花音「あら、もしかして勝つ気でいるの?」
龍馬「まぁそこまで言われたら勝ちにいきますよ。出来るだけ目立ちたくはないんですがね…」
花音「安心していいわ。君が勝つ事はないから」

ほ~ん、言ってくれるじゃないの。まぁ気絶させればいいか

龍馬「それはどうですかね…!」

と言うと同時に走り出す、そして一瞬で距離を詰める…はずだった

龍馬「!?」

俺の身体は宙に舞っていた。身体を捻って着地して先輩の方を見ると薄く微笑んでいた
なんだ…?何がおきた?

花音「ふふっ、何が起きたのか分からない?」
龍馬「分からないっすね!」

再度突っ込む。するとまた身体が宙に舞う…その瞬間俺は自らその場で跳ね地面に向かって拳を叩きつける。すると丁度拳の真下に魔法陣の様なものがあった。

花音「あれ?気づいたんだ?」
龍馬「あっぶねぇ」

さっきの魔法陣を見るからにとても簡易的な魔法だった。いやあのレベルは魔術と言った方がいいのか...
この学園に入ってからまだ1週間も経ってないので魔法と魔術の違いがイマイチ分からん
にしてもあんな簡単な魔法が不可解な現象のタネだったとは...

花音「簡単な魔法でがっかりした?」
龍馬「えぇまぁ」
花音「確かに魔法って難しければ難しい魔法ほど驚きも大きいかもね。もちろん強いし。でもその分発動までの時間や発動したときの動作が長く大きくなる。それはつまり相手に対策・警戒されやすいってことでもある」
花音「だから私は簡単な魔法を使って相手の動揺を誘ったり、不意をついたりして戦ってきた。それはばれていても対策がしづらい、防ぎづらい、だから強い。簡単な魔法だからこそほぼ無限に近い凡庸性がある。」
花音「いつどこで、どんなタイミングでどんな魔法をどのように使うのか、それができるかできないかでまた違ってくると思うんだ」

なるほどね...いや正直凄いと思う、俺が今まで出会ってきた魔術師は魔法をそんな風に使うなんて発想はなかった。だから素直に凄いと思うし、それでいて可哀想とも思ってしまう。この人は多分、ほかの奴等より才能が無かったんだろう。だから努力した。初歩的な魔法を上手く使い己の足りない部分をカバーしながら必死でついていった。そしてその努力はこの学園でようやく実り二年生代表にまでなった、けどそれは周りが低能なだけだ。実際の戦場じゃそんな小細工は相当高度なものでなければ通用しない。たかが一学生がどんなに工夫しようとも所詮はその程度、たかが知れてる
俺は立ち上がると先輩に向かって歩き始めた、そして問いかける

龍馬「先輩、戦闘っていつ始まると思いますか?」
花音「え?いきなり何?まぁそうね...一般的に考えればどちらかが仕掛けたときかな」
龍馬「ですね、じゃあその戦闘の決着っていつ決まると思います?」

俺は先輩の前に立つと先輩を見下ろした

龍馬「決着っていうのはね、もうお互いが向き合った時にはもうついてるんですよ」
花音「は?」

先輩は俺をほぼゼロ距離にまで近づけておきながら動じずかつ警戒も解かずに俺の言葉に反応する

龍馬「相手と接触したとき相手との実力差がわかればどちらが勝つかなんて明確だ、だがそれがわからない人たちは決着がつくまで無謀にも闘い続ける」
龍馬「特に自分が強いと思ってるやつが相手の実力がわからず返り討ちにあうなんてざらにあります」
花音「何が言いたいの?」

俺の話に痺れを切らした先輩が俺の話を遮って聞いてくる

龍馬「俺との実力差がわからない先輩がまだ俺に勝てると思ってることが面白いなっていうことです」

そのとき、頬の横を何かが通った。頬から血が流れてくる、どうやら掠ったようだ。傷をつけた目の前の先輩に目を向ける
綺麗な吊り目は俺を射殺さんばかりにこちらを睨んでいる

花音「もういいよ、早く続きを始めよう?次は当てるよ?」
龍馬「そうですね、もう終わりにしましょう」

教えてあげよう圧倒的な実力差というのを

花音「風斬かぜきり!」

一瞬にして刀を創った先輩が抜刀する

花音「な!?」

だが、先輩が刀を抜く前にその手を抑える。どうやらさっきの傷は同じようにして一瞬で創られたナイフのようなもので切られたのだろう
そんな風に考えながら俺は抑えている先輩の手を軽く捻った

花音「いたっ!」
龍馬「終わりですね」
花音「まだ...!きゃあ!」

抵抗しようとする先輩を捻っている手を使い空中で一回転させ地面に叩きつける
そしてその整った顔に向けて全力で拳を放つ







…はずだった
俺の腕は今もの凄い力で抑えられている

龍馬「どうしたんですか?会長?」

俺は後ろから腕を抑えている張本人に向かって声を投げかける

理沙「う~んとね、あのままだと彼女が死んじゃいそうだったからね。君を止めにきたんだ」
龍馬「心配しなくてもちゃんと寸止めするつもりでしたよ?」

笑顔で答えてみるも、会長はとても冷たい目で俺を見下ろしている

理沙「ふ~ん」
理沙「君には期待していたんだけどな...残念だよ」

会長はそう言って俺の腕を放した、ちなみに先輩は気絶している

龍馬「期待に応えられなくてすいません」

ケラケラと笑いながら俺は審判に目をやった。突然の会長の登場についていけなかったのか一瞬反応が遅れたのち

審判「勝者!新入生代表草薙龍馬!」

静まり返った闘技場に審判の声だけが響く、俺は自室に戻るため控室に向かった。会長は気絶した白石先輩を背負って消えていった。おそらく保健室にでも行ったのだろう。

アナウンス「これにて交流戦を終了します。今日の日程はこれで終了ですので、これより自由時間となります」

選手がいなくなった場内に乾いたアナウンスが響く。そのアナウンスで観戦していた生徒たちは闘技場から次々と去っていった




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