俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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「嘘って……お勤め先のこと、ですか?」

 今、奈月のポケットに入っている肩書きの違う2枚の名刺。1枚はグリシーヌホテルのエリアマネージャー。もう1枚はF&Y株式会社の副社長。
 確かに混乱はしている。でも、こうして仕事相手として会っているのだから、F&Y株式会社の副社長の肩書が本当なのだろう。

「グリシーヌホテルは3年前までいました。奈月さんを騙そうとか、そういうつもりはなかったんです。それは分かって欲しい。ただ……どうも、副社長という肩書きは俺には重すぎて。人に言うと自慢しているようで」

 侑李の言葉に、社長である風磨も似たようなことを言っていたと思い出す。

「それに何より、それを知ってあなたがどう思うかが怖かった」

 困ったように笑う侑李の表情にドキリとする。奈月を見つめるブルーの瞳に込められたものに、胸がざわついた。

「怖いって……?」

「俺の肩書きを聞くと、人の反応は二手に分かれます。あからさまに下手に出て、取り入ろうとする人。そして……急に距離を置いて、よそよそしくなる人」

 間を置いて後者を上げた侑李の手が奈月の頬に触れる。ビクリと肩をすくめた奈月に、侑李は小さく息を吐いた。

「あなたは律儀な方だ。それにとてもお母様思いで、優しい。でも、街コンの参加者に気後れして、離れてしまう謙虚さがある」

 侑李の言葉にだんだん頬が熱くなる。とても良いように言ってもらっているが、実際はそんなではないのに。

「そんなあなたに、俺が副社長だと知られたら……楽しい時間が終わってしまいそうで怖かった。だから、前の会社の名刺を渡しました。副社長よりもホテルのエリアマネージャーの方がまだ受け入れてもらいやすいかと。もっとあなたと気兼ねく、立場とか肩書きとか関係なく話をしていたかったから」

「小鳥遊さん……」

「こんな嘘、いつかバレることだとは覚悟していたんですが、こんなに早くその時が来るとは思いませんでした」

 奈月の頬を侑李の親指が優しく撫でる。男性らしい、大きくて少し角張った手。こんな風に愛おしそうに見つめられて、頬を撫でられることなんて今までになかった。

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