俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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「……嘘がバレたから、何ですか?」

「え?」

 気付けば、彼の手に自分の手を重ねていて。奈月は強い眼差しで、驚く彼を見上げる。

「確かに、もらった名刺と社名は違うし、副社長さんだし。正直、驚きました。でも、嘘をつかれたとは思ってません。こうやって事情も聞きましたし。ただ、取引先の副社長さんですから、仕事としてお会いする時はそれなりの対応はしなくてはなりません」

 するすると口から言葉が出て行く。そのことに奈月自身が驚いているけれど、彼もまた驚いていて、ブルーの瞳が大きく見開かれていた。その目を見つめ返し、奈月は一度言葉を切り、深く息を吸った。

「でも、プライベートは別ですから」

 言い切って、少し気持ちがスッキリする。自然と溢れた笑みに、侑李の顔にも笑みが浮かぶ。

「では……あなたを気兼ねなく、口説いて構いませんか?」

 顔を寄せた侑李が、囁く声に甘さが滲む。

「く、口説くんですか?」

「ええ、これまでもずっと口説いていたつもりです」

 ずるいなぁ、と思う。こんなイケメンに、こんなこと言われてドキドキしないわけがない。

「私、面倒臭い女だと思いますよ。恋愛の経験も……浅いですし」

「分かってませんね。それは男からすると、そそられることですよ」

さすがにないと言えなかったけれど、恋愛に関して奈月は初心者だ。でも、きっと彼も勘付いている。
これまで営業職でバリバリ働いてきて、男性から女性として扱われることがあまりなかった。新人の頃はそうでもなかったのだが、部下ができ、役職につくようになると、女は女として見られないらしい。特に恋愛相手としては。
これまでは仕事に専念することに重きを置いていたので、女として扱われなくても気にもしなかった。むしろその方が仕事としてはやりやすかったし、気も楽でいられる。だから気にしたことなどない。
でも、侑李に出会って、そうではなかったらしいと気付かされてしまった。
彼に優しく声をかけられる度、笑いかけられる度。女として扱われる度、むず痒くなる。でもそれ以上に嬉しくて。今まで張り詰めていたものが、彼を前にするとプツンと切れてしまったようだ。それはきっと、彼に恋をしてしまったから。
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