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 改めて交換したプライベートの連絡先。その日から、侑李は毎日連絡をくれるようになった。内容は他愛もない話。会社の近くに子猫がいたとか、お昼を食べ損ねたとか。
ハイスペックな男性と、そんなやり取りをする仲になるなんて、夢にも思わなかった。いっそ、本当に夢じゃないかと、送られてきたメールを気付けばついつい確認してしまほどだ。
 亜也が担当するプロジェクトも順調で、今は彼女が一人でほぼほぼ回している。F&Y株式会社もプロジェクトに正式に参加を申し出てくれ、今は亜也がやり取りしている。その過程を奈月は亜也からも、F&Y株式会社側の窓口である侑李からも聞いていた。
 そしてある土曜日の昼。奈月は白地に花柄のワンピースを着て、薄いピンクのカーディガンを羽織り、ブラウンのパンプスを履いて出かけた。バッグはいつもプライベートで使う大きめのもの。予定より10分前に目的地に着いたのだが、待ち合わせの相手は既にそこに立っていた。

「小鳥遊さん、お待たせしました」

「いえ、俺も今来たところです」

 よくある恋人同士の会話。こんな台詞を自分が口にするだなんて想像もしなかった。とはいえ、まだ奈月たちは、付き合ってはいない。
 奈月の会社は基本的に土日が休みだ。だが、侑李の会社は土日にイベントを行うことが多い。イベント自体は毎週ではないらしく、休みの場合もあるとのことだったがなかなか予定が合わなかった。それがようやく都合がついたということで、侑李からデートに誘われたのだ。
 彼と会ったのはまだこれで3回目。今まで見てきた彼の姿はスーツで、今日のようなカジュアルな雰囲気は初めて。初夏とはいえ、まだそこまで暑くないが昼間は少し汗ばむ。彼はVネックのシャツに七部丈のサマージャケット、下はジャケットと同じ淡いブルーのパンツで揃えている。カジュアルさもあるけど、キチンと感もある服装は彼に似合っていて、思わず見惚れてしまう。

「奈月さん?」

「あ、ごめんなさい。見惚れてしまって……」

 首を傾げる侑李に、変なことを口走ったと慌てて口を閉じる。しばしポカンとした彼は、次の瞬間には破顔し、奈月にだけ聞こえるように耳元に唇を寄せてきた。
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