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小野原グループのホテルは、小鳥遊侑李にとって古巣だった。エリアマネージャーとして、ヘルプで入ることもあったので、従業員はほぼ顔見知り。それは転職した今も変わらない。
「あ、小鳥遊さん。お疲れさまです」
カウンターで作業していたスタッフの一人が、侑李に気付いて笑顔を見せる。
「岸田さん、お疲れさま。今日はよろしくお願いします」
「いえ、こちらこそ。当ホテルを会場に選んでいただき、光栄です」
案内します、とカウンターを出てきた彼について会場に入る。
今日は侑李が転職した先、F&Y株式会社の主催する街コンイベントの日だ。一応、副社長という肩書きはあるものの、F&Y株式会社は少数精鋭で、社長だとか平社員だとかの垣根なく動くことを心情としている。とはいえ、立場的にできることとできないことはどうしても出て来るが。
今日の街コンについてもそうだ。企画したのは社長の玉沖。彼は元々、小野原グループ本社の企画開発部の部長をしていた。その頃からバンバン企画を出しては採用され、とんとん拍子に出世した。だが、上に行くとやりたいことをやる立場から、部下を育てる側に変わり自分の企画はなかなか表に出しにくいこともある。やりたいことをやれないフラストレーションからか、彼は上と衝突することが増えていき、ついには独立という行動に出た。
彼とは大学時代からの付き合いで、その性格を理解していた侑李は、誘われるまま一緒に小野原グループを離れた。ただ、副社長にされるとは夢にも思わなかったのだが。
「今回の街コン、参加者数も上々ですね、小鳥遊副社長」
「ありがとう。でも、その呼び方はちょっとくすぐったいから辞めてくれ」
先を行く岸田の口調はあくまでも軽い。だが、副社長と呼ばれるとどうしても壁を感じてしまう。それはエリアマネージャーだった時にもあったものだが、その時よりも分厚いものになってしまった気がする。
「変わりませんね、小鳥遊さんは」
砕けた口調で笑う岸田は、このホテルの中では古参で、付き合いが長い。よく一緒に飲みにも行ったし、いろんな愚痴も言い合った。そんな彼の指に光るシンプルなシルバーの指輪を見て、侑李は自然と笑みを浮かべた。
「そうだ。結婚おめでとう、岸田くん」
「ありがとうございます。あ、結婚式、来てくださいね。お忙しいでしょうが」
「ああ。何としてでも行かせてもらう」
岸田は侑李より2歳年下だが、しっかりした男だ。契約社員として入ってきた彼を、正式に社員として登用するよう上に進言したのは侑李。弱音も吐かず、真摯に仕事に取り組む姿。そして何より接客の際の細やかな気遣いが、採用の決め手だった。
「あ、小鳥遊さん。お疲れさまです」
カウンターで作業していたスタッフの一人が、侑李に気付いて笑顔を見せる。
「岸田さん、お疲れさま。今日はよろしくお願いします」
「いえ、こちらこそ。当ホテルを会場に選んでいただき、光栄です」
案内します、とカウンターを出てきた彼について会場に入る。
今日は侑李が転職した先、F&Y株式会社の主催する街コンイベントの日だ。一応、副社長という肩書きはあるものの、F&Y株式会社は少数精鋭で、社長だとか平社員だとかの垣根なく動くことを心情としている。とはいえ、立場的にできることとできないことはどうしても出て来るが。
今日の街コンについてもそうだ。企画したのは社長の玉沖。彼は元々、小野原グループ本社の企画開発部の部長をしていた。その頃からバンバン企画を出しては採用され、とんとん拍子に出世した。だが、上に行くとやりたいことをやる立場から、部下を育てる側に変わり自分の企画はなかなか表に出しにくいこともある。やりたいことをやれないフラストレーションからか、彼は上と衝突することが増えていき、ついには独立という行動に出た。
彼とは大学時代からの付き合いで、その性格を理解していた侑李は、誘われるまま一緒に小野原グループを離れた。ただ、副社長にされるとは夢にも思わなかったのだが。
「今回の街コン、参加者数も上々ですね、小鳥遊副社長」
「ありがとう。でも、その呼び方はちょっとくすぐったいから辞めてくれ」
先を行く岸田の口調はあくまでも軽い。だが、副社長と呼ばれるとどうしても壁を感じてしまう。それはエリアマネージャーだった時にもあったものだが、その時よりも分厚いものになってしまった気がする。
「変わりませんね、小鳥遊さんは」
砕けた口調で笑う岸田は、このホテルの中では古参で、付き合いが長い。よく一緒に飲みにも行ったし、いろんな愚痴も言い合った。そんな彼の指に光るシンプルなシルバーの指輪を見て、侑李は自然と笑みを浮かべた。
「そうだ。結婚おめでとう、岸田くん」
「ありがとうございます。あ、結婚式、来てくださいね。お忙しいでしょうが」
「ああ。何としてでも行かせてもらう」
岸田は侑李より2歳年下だが、しっかりした男だ。契約社員として入ってきた彼を、正式に社員として登用するよう上に進言したのは侑李。弱音も吐かず、真摯に仕事に取り組む姿。そして何より接客の際の細やかな気遣いが、採用の決め手だった。
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