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しおりを挟む「嬉しい、です。私も、侑李さんに嫌われないか怖くて仕方ない」
思えば初めて会った時から情けない姿ばかり見られている。迷惑ばかりかけているし、その都度、何度も助けてもらった。返しきれない恩を持て余しているくらいなのに、こんなに真っ直ぐ気持ちを伝えられたら同じだけ想いを返せるか不安になる。
「奈月さん、出会って間もないけれど、俺と付き合ってくれませんか。もちろん、結婚を前提に」
「結婚……?」
告白されただけでも赤面ものなのに、結婚を前提に、という言葉を脳内で処理しきれず目を瞬かせると、また唇を啄まれた。は、と小さく息を吐くと、その吐息ごとまた唇を奪われて、奈月の心臓が大きく音を立てる。
「だめ、かな?」
「っ、昨日、言った……」
好きだと言われて好きだと返した。あれも立派な告白だったはず。お互いに気持ちを確かめて、キスをして。でも、確かにきちんと付き合って欲しいと言われたわけではなかったけど。
「うん。でも、寝起きだったし。ちゃんと言葉にしないと、なかったことにされたくないから」
それは奈月も同意する。思いは言葉にしないと伝わらないものだ。何となく、好きだと言い合っただけで終わっていたら、後日不安になっていたかもしれない。
「俺と、結婚を前提にお付き合い、してくれますか?」
侑李が抱きしめる腕に力を込める。少しの息苦しさを感じたけれど、嫌な感じはしなくて、むしろ幸せで窒息しそう。
「は、い。私でよければ」
「奈月さんがいいんだ」
ああ、なんていう殺し文句だろう。満面の笑みでまた唇を寄せてきた侑李に、奈月は自分から距離を詰める。本当に幸せ過ぎて、どうにかなってしまいそうだ。
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