俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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 侑李と正式に付き合い出して2週間が過ぎた。改めて告白をされた日曜日は、遅い朝ごはんを一緒に食べて、少しだけ買い物に出た。奈月専用のマグカップを買うと言われた時は驚いたが、嬉しくもあって。いつでも来ていいと、帰り際に合鍵を渡された時は受け取る手が震えてしまった。
 それから何度か仕事帰りに待ち合わせて、数回食事に行った。帰り際、決まって家の前まで送ってくれる侑李と、キスはするけれど今のところそれ以上はない。といっても、知り合ってからまだ間もないのだ。お付き合い初心者の奈月は、キスだけでいっぱいいっぱいなのだけど、舌を絡める甘いキスにだんだんと身体が慣れてきている気がする。彼がよっぽどキスが上手いのか、はたまた奈月の中に眠っていた欲求なのか。触れられる度に、先を望む自分に気付き、戸惑ってしまう。
 週の半ばの水曜日、今日も仕事終わりに彼に会うことになっている。そのことが仕事の活力にもなっているけれど、戸惑う気持ちに翻弄されて仕事中、ため息が多くなっているような気がした。これではダメだ、と姿勢を正した時、デスクの電話が鳴る。

「お電話ありがとうございます。テンマ化粧品、営業部、香山でございます」

 ワンコール目が鳴り終わる前に受話器を取る。半音上げた声で電話に出た奈月の視界の先で、受話器に手を伸ばしたまま固まる部下がゆっくりと手を下げる。電話応対は新人が最初に叩き込まれることだ。できるだけワンコール以内で取りましょう、と反射神経のテストかのごとくやり続けていると、身体が無意識に動いてしまう。新人のためには譲るべきだったな、と内心反省していると、電話口から聞き馴染みのある低い美声が聞こえてくる。

『お世話になっております、F&Y株式会社の小鳥遊です』

「あ……お世話になっております。担当の真壁にご用でしょうか?」

 電話越しに聞こえた侑李の声にドキドキしてしまう。だが、同時にあれと思う。今日、亜也は午後から彼と打ち合わせの予定だったはずだ。壁にかかったホワイトボードに目をやると、打ち合わせで直帰とある。

『それが……真壁さんがいらっしゃらなくて』

「え?」

 時刻は2時を少し過ぎた頃。打ち合わせは一時半のはずで、もう30分も過ぎている。

「申し訳ございません」

『いいえ。ただ、先程から真壁さんに連絡を入れているのですが、出られなくて何かあったのではないかと心配になりまして』

 朝、一度出社してきた亜也の様子を思い出そうとするが、今日は奈月が朝から会議で顔を見たのは一瞬だった。その時はいつも通りに見えたのだが、連絡がつかないというのは普段の彼女からは考えられない。それどころか責任感のある彼女が無断で仕事を放り出すなど、ありえないことだ。
 とにかくこちらからも連絡を入れてみなければ、と思っていると別の電話にかかっていた部下の1人が奈月の前にメモを差し出した。そのメモにさっと目を通した奈月の頭が真っ白になる。
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