年下クンと始める初恋

鈴屋埜猫

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 大学を卒業して、社会人になって、どっかの誰かと結婚して、幸せな家庭を築く。結婚だけが幸せじゃないと思うけど、きっと誰もが一度は描く理想の未来。かく言う、清河茉歩きよかわまほもそんな未来を思い描いていた一人。
 だが、人生は結婚だけが幸せじゃない。そう自分に言い聞かせ始めたのは、二十五歳を過ぎた辺りから。
 周りはどんどん結婚し、子供も産まれて幸せオーラを放っている。そんな友人たちを微笑ましく見ながら、結婚への焦りがなかったかと言えば嘘になる。
 だって、正月や盆の度、ちくちくと親戚からの「結婚してなかったっけ?」「いい人いないの?」という言葉のシャワー。それがなくても焦りが募るのに、気持ちだけが塞いていく。
 そしてやってきた二十八歳の誕生日。茉歩は結婚はおろか、唯一手にしていた仕事さえも手放すことになってしまったのだ。
 茉歩が勤めていたのは大手とまではいかないが、地元では有名な会社だった。だが、ここのところ業績が悪化し、経営はかなり厳しかったらしい。そんな中、社長が倒れた。誰よりも働いていた疲れが出たのだ、無理もない。そうは思うが、周りはてんてこまいだった。
 バタバタの最中、別の会社に就職していたという社長の息子がやって来てた。昔から父子の仲は悪く、社長は常々、息子に継がせる気はないと言っていた。ところが、そんな社長の意思は聞き届けられず、息子は父の意識がないのをいいことに勝手に経営権を手にした。そして始まった人員整理。契約社員だった茉歩は、真っ先に切られることになったのだ。
 正社員まであと二カ月、という中でのことだった。
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