年下クンと始める初恋

鈴屋埜猫

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 軽い昼食後、葉一が連れ出したのは水族館。幼い頃に来たことがある場所だったが、長らく訪れていなかったので、懐かしさと新たな発見もあり楽しかった。
 茉歩が笑うと葉一も笑ってくれる。それが嬉しくて、茉歩はいつになくはしゃいでいた。

「あら、葉一さん?」

 だから、唐突に現れこちらに向かって微笑む女性を見て凍り付いた。一気に現実に引き戻される。

麻倉あさくらさん……」
「もうっ、エミリでいいって言ったじゃありませんか」

 駆け寄ってきた女性はスラリと高く、スリットの入ったスカートから覗く脚がセクシーだ。おまけにニット素材のノースリーブのトップスにより、大きな胸元が強調されている。だが、ふわりと揺れる薄茶色の髪は妖精のような可愛らしさも演出していた。
 同性の目から見ても魅力的なその女性は、周りの男性の視線をたちまち集めている。そして、彼女は葉一に駆け寄ると、迷うことなく彼の腕に手をかけた。

「先日は楽しかったですね。またいいお店ありましたら、ご一緒してください」

 葉一に微笑みかけた女性だったが、一瞬だけチラッと茉歩を見たのが分かる。そして、勝ち誇ったような笑みを浮かべると、葉一の腕に体を寄せ、大きな胸元を押し付けようとした。

「すみません、今日はツレがいますので」
「あら、気付かなかったわ。ごめんなさい」

 さっき一瞬見たじゃないかと思ったが、彼女は悪びれもせず、葉一から離れようともしない。葉一は身を引こうとしたのだが、腕に絡みつかれてできないようだ。
 さっきまで楽しかったはずの茉歩は、急に居た堪れなくなる。葉一に擦り寄る女性は、あまりに茉歩とは違う。たぶん茉歩より年下なのだろうが、大人っぽくて色気もあって、なおかつ可愛い。背丈だって、背の低い自分と長身の葉一ではだいぶ違いすぎるが、スラリと高い彼女が並ぶとちょうどいい。まさにお似合いだ。

「葉ちゃ……徳田さん。私、これで失礼します」
「え? いや、待って」

 葉一が焦って呼び止めようとするが、茉歩はガバッと頭を下げると、そのまま踵を返した。これ以上、ここにいてはダメだ。できるだけの早足でその場を立ち去る。葉一が何か言っている声がするが、その内容はもう頭に入っては来なかった。
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