年下クンと始める初恋

鈴屋埜猫

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 念願のデートで浮き足立っていた。祖母の春江との約束も果たせて、直接的ではないが、彼女に自分の気持ちも匂わせた。
 ストレートに言えば、警戒されるかもしれない。彼女を怖気付かせたくない。ゆっくりと可愛い弟みたいな幼馴染の関係から、一人の男として意識してもらう。
 だが、上手くいきかけていた空気を、とある人物にぶち壊されるハメになった。

「あら、葉一さん?」

 唐突に水族館に響いた艶っぽい声。見れば、口許に笑みを浮かべた麻倉エミリがいた。
 彼女は財閥の娘で、父親の秘書をしている。彼女の父親とはまだ2、3度しか一緒に仕事をしていない。その中でエミリと会ったのは1度だけ。だが、彼女はどうやら葉一を気に入ったらしく、何かにつけ葉一を尋ねてくる。しかもわざわざプライベートを狙って、偶然を装うのだ。

「麻倉さん……」

 いつもどうやって葉一の行き先を知るのか分からない。まるでストーカーだ。そして図々しくも、彼女は駆け寄るなり葉一の腕に触れてくる。

「もうっ、エミリでいいって言ったじゃありませんか」

 自分のプロポーションを最大限に活かした服装。背も高く、顔も申し分ない彼女に言い寄られれば大抵の男なら、コロッといってしまうだろう。だが、その計算高い雰囲気は葉一には不快でしかない。

「先日は楽しかったですね。またいいお店ありましたら、ご一緒してください」

 ニッコリと微笑むエミリだが、茉歩を見て鼻で笑ったのを葉一は見逃さなかった。一瞬だったが、明らかに茉歩を蔑んだ目。彼女は自分の方が茉歩より上だと思っている。そのことに無性に腹が立った。
 だが、一応相手はお得意様の社長令嬢で秘書だ。手荒な真似はできない。なので、引きつりかけた顔で何とか笑顔を作り、体を離す。

「すみません、今日はツレがいますので」
「あら、気付かなかったわ。ごめんなさい」

 今、気が付いたという見え透いた嘘。そして、エミリはまるで茉歩に見せつけるかのように、葉一に擦り寄ろうとする。その際、彼女の香水の匂いが鼻を突き、葉一は思わず顔をしかめた。

「葉ちゃ……徳田さん。私、これで失礼します」

 気が付くと、茉歩はどんどんと後ろに下がって距離を取っていた。
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