年下クンと始める初恋

鈴屋埜猫

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「え? いや、待って」
「葉一さん、いいじゃない。あんな子放っておけば」

 ガバッと頭を下げるなり、踵を返した茉歩は早足で遠ざかっていく。すぐさま追いかけようとした葉一だったが、腕に絡んでくるエミリによって阻まれてしまう。

「離して頂けませんか、麻倉さん」
「だから、エミリって……」
「俺が下の名前で呼ぶ女の子は、一人だけなんで」

 蛇のように絡みついていたエミリの動きがビシリと音を立てて止まる。その隙に葉一は彼女の拘束から抜け出すと、そのまま数歩、距離を取る。

「申し訳ありませんが、麻倉さんとはお仕事以上の関係にはなれません。それに、あなたなら引く手数多でしょう」
「でも、私はっ」
「俺は茉歩以外を好きになることはあり得ませんから、どうかご容赦ください」

 茉歩に習い、ガバッと頭を下げる。そしてチラリと柱の影で成り行きを見守っているスーツの男性を見た。

「麻倉さんをお願いします。ではまた、仕事の際に」

 名前は忘れたが、エミリの取り巻きの一人だと記憶している。おそらく彼が葉一の予定をどこからか仕入れていたのだろう。
 仕事ができる人間なのかも知れないが、探偵でもないくせに人のプライベートまで土足で踏み込んで来るのは許せない。まして、葉一の大切な人を傷付けたのだ。許せるものか、と思う。

「お父様に言って、あなたのとことの契約、破棄させるわよ⁈ それでもいいの⁈」
「どうぞお好きに。ですが、社長はそこまでバカではないと思いますよ。契約を破棄にすると、困るのはそちらです」

 脅せば言うことを聞くと思っているのか。踵を返しかけた葉一は、イラつきながら首だけ振り返ってエミリを睨む。すると、睨まれて怖気付いたのか、脅しに屈しなかったからか、エミリの肩がビクリと震える。
 彼女がそれ以上は口を噤んだ様子だったので、葉一は今度こそ茉歩を追い、駆け出した。
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