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会社へと出社していく葉一を見送り、茉歩は身支度を整えて彼の家を出た。一緒に家を出ようとしたが、彼から仏壇の花を替えるのを頼まれたのだ。そして、握らされたのは家の合鍵だった。
お気に入りのキーケースに増えた二つ目の鍵。それがまさか葉一の家の鍵になるとは思ってもみなかった。それが思いの外嬉しくて、茉歩は浮き足立っていた。だからこそ、自宅までの最後の角を曲がった時、背後からかけられた声に凍り付いた。
「おはようございます」
「……何で」
振り返った茉歩を笑顔で見つめる人。それは、水族館で出会った麻倉エミリだった。
「突然、ごめんなさい。お時間よろしければ、どこかでお話できませんか?」
笑顔だが、有無を言わさぬ雰囲気を纏う彼女に、茉歩は頷くことしかできない。
彼女の提案で少し歩いた先にある喫茶店に入る。窓際の一番奥まった席にどんどん進んでいく彼女は、さっさと壁を背にしたベンチシートに座った。その後ろをただついて来た茉歩は、戸惑いながらその向かいに腰を下ろした。
茉歩が座るのを待たずに、おしぼりとお冷やを持ってきた店員にコーヒーを注文する。その間、茉歩に尋ねたのはホットかアイスかという二択だけ。コーヒーは嫌いではないけれど、せめてメニューは見たいと思った。
「改めまして、麻倉エミリと申します」
自己紹介と共に差し出された名刺。黄緑を基調としたデザインのロゴ。そこに書かれた『株式会社アサクラホールディングス』という社名と、社長秘書の文字。
「あ……あの、私……」
「清河茉歩さん、でしょう?」
「え……なんで、名前……」
運ばれてきたコーヒーに口を付ける彼女の仕草は、実に優雅だった。その一つ一つの動きから、彼女がいいところのお嬢様だと分かる。
「先日はごめんなさいね、葉一さんとご一緒のところにお邪魔してしまって」
「いえ……」
言葉上、謝っているようだが、彼女の目は笑っていない。これは明らかに敵意のある目だ。茉歩の背筋に悪寒が走る。
「今日は先日のお詫びがしたかったの。それと……忠告を、ね?」
お気に入りのキーケースに増えた二つ目の鍵。それがまさか葉一の家の鍵になるとは思ってもみなかった。それが思いの外嬉しくて、茉歩は浮き足立っていた。だからこそ、自宅までの最後の角を曲がった時、背後からかけられた声に凍り付いた。
「おはようございます」
「……何で」
振り返った茉歩を笑顔で見つめる人。それは、水族館で出会った麻倉エミリだった。
「突然、ごめんなさい。お時間よろしければ、どこかでお話できませんか?」
笑顔だが、有無を言わさぬ雰囲気を纏う彼女に、茉歩は頷くことしかできない。
彼女の提案で少し歩いた先にある喫茶店に入る。窓際の一番奥まった席にどんどん進んでいく彼女は、さっさと壁を背にしたベンチシートに座った。その後ろをただついて来た茉歩は、戸惑いながらその向かいに腰を下ろした。
茉歩が座るのを待たずに、おしぼりとお冷やを持ってきた店員にコーヒーを注文する。その間、茉歩に尋ねたのはホットかアイスかという二択だけ。コーヒーは嫌いではないけれど、せめてメニューは見たいと思った。
「改めまして、麻倉エミリと申します」
自己紹介と共に差し出された名刺。黄緑を基調としたデザインのロゴ。そこに書かれた『株式会社アサクラホールディングス』という社名と、社長秘書の文字。
「あ……あの、私……」
「清河茉歩さん、でしょう?」
「え……なんで、名前……」
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「先日はごめんなさいね、葉一さんとご一緒のところにお邪魔してしまって」
「いえ……」
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「今日は先日のお詫びがしたかったの。それと……忠告を、ね?」
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