人外さんと恋をする〜狼さんは怖くない〜

鈴屋埜猫

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「クロードさんは、今からお仕事ですか?」
「いや……」

 制服を着ているから、これから夜勤なのかと思ったが、首元が寛げられているところを見ると、どうやら仕事を終えて帰ってきた所のようだ。そんな彼が廊下にいた理由は一つしかない。

「ベッド使って下さい」
「メイベルが使え」
「私は女子部屋に行きますから」
「子供たちを起こすかもしれない。それに風邪だって移すかもしれないだろう」

 青い瞳にジッと見つめられ、言葉に詰まる。自覚はないが、どうやら熱が出て一日寝込んでいたのは事実らしい。今も少し熱っぽくはあるし、クロードの言う通り子供たちに移してしまっては大変だ。だが、だからと言ってクロードの寝る場所を奪うわけにはいかない。

「じゃあ、キッチンで寝ます。毛布にくるまっていれば……」
「許可できないな」

 声は抑えているが、いつにない強い口調に驚く。

「でも……」
「俺がキッチンで寝る。だから君はちゃんとベッドで休め」
「ここはクロードさんのベッドです」
「俺は居候だ。この家の主人は君だろう」

 彼の言うことは分かる。だが、はいそうですね、とすぐに飲み込むことができない。

「クロードさんは居候じゃないです。家族です」
「ありがとう、メイベル。だが、今はそうではなくて……」
「じゃあ、こうしましょう。一緒に寝ればいいんです」

 言うなり、メイベルはココアを一気に飲み干した。身体がポカポカを越えて若干汗ばむほど熱くなってきた。

「何を言って……」
「何か問題あります?」
「あるだろう」
「そうですか? 私はないと思います」

 カップを置こうと立ち上がる。途端にフラついた身体を、クロードがすかさず受け止め、メイベルの手からカップを取り上げた。

「危ないだろ」

 クロードはずり落ちそうになるメイベルを膝に乗せ、そっとお盆にカップを戻した。

「メイベル、ベッドに戻れ」
「嫌です」
「嫌って……」
「甘えていいんでしょう? さっき、そう言いましたよね?」

 首元に腕を回してしがみつく。鼻先が触れ合い、クロードが息を呑むのが分かった。

「メイベル……」
「クロードさんは相性のいい相手にしか反応しないんですよね。私とは半年も一緒にいて何もなかったんですし、私がくっついていても問題ないってことでしょう?」

 自分の言葉がグサグサと心に突き刺さる。悲しがったって仕方ない。分かっていても涙が出そうで、メイベルはクロードの首筋に顔を埋めた。
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