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ゴトン、という大きな揺れに、メイベルは目を覚ました。だが、意識が覚醒しても気怠さから瞼が重く、なかなか開かない。それでも何とか目を開けたのだが、何度瞬きをしても目の前が真っ暗だった。
「んっ……?」
寝そべっていた身体を起こそうとするが、上手く動けない。そこで自分が後ろ手に縛られている上、猿轡までされていることに気付いた。そして、気を失う直前に起きた出来事が、フラッシュパックする。
メイベルはすぐに首を巡らせ辺りを見渡した。暗さに慣れてきて、うっすらとだが周りの様子が見てとれる。傍らに同じく縛られ、猿轡をされたクラリアの姿を見つけた。
足が縛られていなかったのは幸いだったと言えるだろうか。とはいえ、嗅がされた薬の影響なのか若干の痺れが身体に残っている。それでも何とか上半身を起こしたメイベルは、クラリアの側へにじり寄った。暗くて顔色は分からなかったが、吐息が聞こえたことにメイベルはホッと胸を撫で下ろす。そして改めて周囲を見渡した。
二人がいるのはどうやら馬車の中のようだ。さっきからガタゴトと振動が絶えず身体に響いていることから、移動中なのだろう。乗り口は一つ。全体が大きな一つの箱のような形をしている。だが、座席はなく二人は板張りに寝かされていた。窓もあるようだが、暗幕がかけられていて外の様子は見えない。きっと夜中なのだろうが、月明かりさえ入ってこないため、いったいどこを走っているのか検討もつかない。
と、身体が前につんのめった。反射的にクラリアに覆い被さったメイベルは、しばらくして馬車が速度を落としたのたのだと気付く。振動が徐々に小さくなって、やがて完全に馬車が停まる。何か外で話す声がする。メイベルは息を潜めて耳をそばだててみるが、さすがに何を話しているかまでは聞こえない。
どれくらい気を失っていたのだろう。納屋から国境まではそんなに時間はかからないはずだ。クロードはメイベルが残した目印に気づいただろうか。けれど、気付いたとしてメイベルたちがここにいることをどうやって知らせればいいのだろう。
そういえば、最初に声をかけてきた男性。彼は自警団の制服を着ていた。あれは国境での検問を通過しやすくするためだったのだろうか。
「申し訳ございません、奥方様は御気分が優れないとお休みになられていて……」
唐突に聞こえた声に、メイベルの肩がビクリと震える。近付いてくる足音から、誘拐犯が御者台を降りたのだろうと理解した。そして扉が遠慮がちにノックされた。
「お休みのところ申し訳ございません。国境警備の者が、奥方様の素性をお疑いのようで……」
「い、いや。滅相もない。侯爵家の奥方様とはつゆ知らず、大変失礼を致しましたっ」
侯爵家、奥方、という単語にメイベルは目を見張る。だがそれよりも、誘拐犯がノックをして声をかけてきたことに驚く。まだメイベルが薬で眠っていると思っていたのだろうか。
猿轡のせいで声は出ない。だが、ここでそのまま国境を抜けてしまうわけにはいかないのだ。
―――ガンっ!
「何の音だ?」
力一杯、メイベルは壁を蹴った。不安定な体制で行ったため反動で身体がひっくり返る。だが、その甲斐あって、おそらく国境警備の者が音に反応してくれたようだ。
「んっ……?」
寝そべっていた身体を起こそうとするが、上手く動けない。そこで自分が後ろ手に縛られている上、猿轡までされていることに気付いた。そして、気を失う直前に起きた出来事が、フラッシュパックする。
メイベルはすぐに首を巡らせ辺りを見渡した。暗さに慣れてきて、うっすらとだが周りの様子が見てとれる。傍らに同じく縛られ、猿轡をされたクラリアの姿を見つけた。
足が縛られていなかったのは幸いだったと言えるだろうか。とはいえ、嗅がされた薬の影響なのか若干の痺れが身体に残っている。それでも何とか上半身を起こしたメイベルは、クラリアの側へにじり寄った。暗くて顔色は分からなかったが、吐息が聞こえたことにメイベルはホッと胸を撫で下ろす。そして改めて周囲を見渡した。
二人がいるのはどうやら馬車の中のようだ。さっきからガタゴトと振動が絶えず身体に響いていることから、移動中なのだろう。乗り口は一つ。全体が大きな一つの箱のような形をしている。だが、座席はなく二人は板張りに寝かされていた。窓もあるようだが、暗幕がかけられていて外の様子は見えない。きっと夜中なのだろうが、月明かりさえ入ってこないため、いったいどこを走っているのか検討もつかない。
と、身体が前につんのめった。反射的にクラリアに覆い被さったメイベルは、しばらくして馬車が速度を落としたのたのだと気付く。振動が徐々に小さくなって、やがて完全に馬車が停まる。何か外で話す声がする。メイベルは息を潜めて耳をそばだててみるが、さすがに何を話しているかまでは聞こえない。
どれくらい気を失っていたのだろう。納屋から国境まではそんなに時間はかからないはずだ。クロードはメイベルが残した目印に気づいただろうか。けれど、気付いたとしてメイベルたちがここにいることをどうやって知らせればいいのだろう。
そういえば、最初に声をかけてきた男性。彼は自警団の制服を着ていた。あれは国境での検問を通過しやすくするためだったのだろうか。
「申し訳ございません、奥方様は御気分が優れないとお休みになられていて……」
唐突に聞こえた声に、メイベルの肩がビクリと震える。近付いてくる足音から、誘拐犯が御者台を降りたのだろうと理解した。そして扉が遠慮がちにノックされた。
「お休みのところ申し訳ございません。国境警備の者が、奥方様の素性をお疑いのようで……」
「い、いや。滅相もない。侯爵家の奥方様とはつゆ知らず、大変失礼を致しましたっ」
侯爵家、奥方、という単語にメイベルは目を見張る。だがそれよりも、誘拐犯がノックをして声をかけてきたことに驚く。まだメイベルが薬で眠っていると思っていたのだろうか。
猿轡のせいで声は出ない。だが、ここでそのまま国境を抜けてしまうわけにはいかないのだ。
―――ガンっ!
「何の音だ?」
力一杯、メイベルは壁を蹴った。不安定な体制で行ったため反動で身体がひっくり返る。だが、その甲斐あって、おそらく国境警備の者が音に反応してくれたようだ。
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