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大輝の場合29
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俺は今、トイレの一番奥の個室に隠れ、次の奴等が回ってくるのを待っている。
コツン、コツン
足音が響く。
次の班が来たようだ。
??
なかなかトイレに入ってこない。
暫らくして、入り口近くの扉から順番に、〝ここか?・・・いな~い。・・・ここか?・・・いな~い〟って低い声で言いながら、ゆっくりと開けては閉めている。
そして、俺が入ってる扉の前までくると、上部を手で掴んでガタガタ揺らし、〝見ぃ~つけたぁ〟って言いながら開けてきやがった。
本村、お前・・・お化け役を怖がらせてどうする。
「先生、判子ないっす」
「・・・」
「先生、判子どこです?」
「・・・」
「フゥ、仕方ない。失礼しま~す」
だんまりを決め込んでいたら、セキュリティーチェックを受けた。
「どこにも無いな、どうする?」
「来たって判ればいいんじゃないか?」
「・・・・そうだな」
「一筆もらえば、いいんじゃねぇ?という事で、先生、お願いします」
俺の胸元から、ボールペンを1本抜き取り、用紙と一緒に渡してきた。
美和と書き用紙を返したが、拇印じゃないから、それは無効だ。
出直して来い。
ああ、そうそう、本村。
お前だけ特別に、学園に戻ったら、宿題を多く出してやるからな。
本村達が去り、暫らくして、次の足音が聞こえて来た。
躊躇する素振りも見せず中に入って来て、淡々と扉を開け閉めしている。
心臓強いな、こいつ。
俺の所の扉が開いたが、雪原か・・・なんとなく納得。
「森羅、どこにもないぞ」
橘が顔を覘かせたが、何故か湖箔を抱え上げている。
何だ、その羨ましい状況。
「・・・先生、判子のある場所、知りませんか?」
「知らん。自分達で考えろ」
「先生、お願い、教えて」
橘に押し付けていた顔を上げると、湖箔がお願いをしてきた。
目が潤んでる。
「どうした?」
泣いたのか?
汚れていない指の背で、そっと目尻に触れ、そう問えば、
「怖いから、早く帰りたい」
弱々しい声でそう返され、思わずヒントを出してしまう。
「・・・押すのは判子とは限らないだろ?」
俺は、湖箔には甘いからな・・・そして、弱くもある。
残念ながら、とっくにいろいろと自覚済みだ。
「押すのは判子とは限らない?・・・あっ、解かった。拇印だ。ありがとう」
俺の血糊で汚れた手を見て、微かにだが、笑顔を見せた。
反則だな。
可愛過ぎる。
コツン、コツン
足音が響く。
次の班が来たようだ。
??
なかなかトイレに入ってこない。
暫らくして、入り口近くの扉から順番に、〝ここか?・・・いな~い。・・・ここか?・・・いな~い〟って低い声で言いながら、ゆっくりと開けては閉めている。
そして、俺が入ってる扉の前までくると、上部を手で掴んでガタガタ揺らし、〝見ぃ~つけたぁ〟って言いながら開けてきやがった。
本村、お前・・・お化け役を怖がらせてどうする。
「先生、判子ないっす」
「・・・」
「先生、判子どこです?」
「・・・」
「フゥ、仕方ない。失礼しま~す」
だんまりを決め込んでいたら、セキュリティーチェックを受けた。
「どこにも無いな、どうする?」
「来たって判ればいいんじゃないか?」
「・・・・そうだな」
「一筆もらえば、いいんじゃねぇ?という事で、先生、お願いします」
俺の胸元から、ボールペンを1本抜き取り、用紙と一緒に渡してきた。
美和と書き用紙を返したが、拇印じゃないから、それは無効だ。
出直して来い。
ああ、そうそう、本村。
お前だけ特別に、学園に戻ったら、宿題を多く出してやるからな。
本村達が去り、暫らくして、次の足音が聞こえて来た。
躊躇する素振りも見せず中に入って来て、淡々と扉を開け閉めしている。
心臓強いな、こいつ。
俺の所の扉が開いたが、雪原か・・・なんとなく納得。
「森羅、どこにもないぞ」
橘が顔を覘かせたが、何故か湖箔を抱え上げている。
何だ、その羨ましい状況。
「・・・先生、判子のある場所、知りませんか?」
「知らん。自分達で考えろ」
「先生、お願い、教えて」
橘に押し付けていた顔を上げると、湖箔がお願いをしてきた。
目が潤んでる。
「どうした?」
泣いたのか?
汚れていない指の背で、そっと目尻に触れ、そう問えば、
「怖いから、早く帰りたい」
弱々しい声でそう返され、思わずヒントを出してしまう。
「・・・押すのは判子とは限らないだろ?」
俺は、湖箔には甘いからな・・・そして、弱くもある。
残念ながら、とっくにいろいろと自覚済みだ。
「押すのは判子とは限らない?・・・あっ、解かった。拇印だ。ありがとう」
俺の血糊で汚れた手を見て、微かにだが、笑顔を見せた。
反則だな。
可愛過ぎる。
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