何で僕を?

大器晩成らしい

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あれは、俺が幼稚園年長の時だ。

隣の空き地に家が建ち、そこに、新しい人が越してきた。


ピンポン

「はい、どちら様ですか?」

「蘭花です」

「蘭ちゃん?ちょっと待っててね。凪君。月夜。下に下りて来て!」

カチャ

「お待たせ。ひさしぶりね」

「ほんとにね。今日、隣に引っ越してきたから、ご挨拶にね。これ良かったら食べて」

「ありがとう。あがってかない?月夜に会うのは初めてでしょ」

「そうだね。年賀状でしか見れなかったからね。初めましてになるね。後ろに隠れちゃってて見えないけど。凪さんもお久しぶりです」

「うん、蘭花ちゃん久しぶり、翔は老けたか?百合ちゃんと、葵君は大きくなったね。最後に会ったのは、5年も前だけど、お兄さんの事、覚えてるかな?」

「クスクス、覚えてますよ」

「僕も覚えてるよ。パフェ奢って貰ったもんね」

「おい凪、お兄さんって歳じゃないだろ?うちの子に、お兄さん呼びをさせようとするんじゃない。それに、いつのまに、餌付けしてたんだ?」

「公園で遊んでるのを見かけて、可愛かったからつい」

「葵、怪しいおじちゃんに付いて行っちゃいけませんて、教えられていただろ」

「だって、怪しいおじちゃんじゃなくて、かっこいいお兄さんだったもん」

「うわっ葵ちゃん。正直者。相変わらず天使のようだねぇ。可愛いねぇ」

「いやっ、かっこいいお兄さんでも、変態はいるんだから、付いて行っちゃダメだろ」

「酷っ、俺は変態じゃない」

話の感じから、親同士はかなり親しい間柄で、この中で、俺だけが初対面らしい事が解かった。

「月夜も、いつまでも後ろの方に隠れてないで、前に来なさい」

俺はその頃、軽く人見知りを発症していたから、前に行きたくなくて、厭々と首を横に振っていたのに、容赦なく、母さんに前の方へと押し出された。

そして、俺は、父さんの言う、天使に出会ったんだ。

「(うわ~凄く可愛い~)月夜です。葵ちゃん、僕と遊んで下さい」

「「(僕?!だって?最近はずっと、俺って言ってたのに?)」」

「うん。一緒に遊ぼう。何して遊ぶ?」

「僕の部屋で遊ぼう」

俺は、靴を履いて、葵ちゃんの傍に行き、腰に抱きつくと、家の中へと引っ張っていった。

抱きついた時、葵ちゃんから、甘い、いい匂いがしたのを憶えている。


「「(人見知りはどうした?)」」

いろいろと親に衝撃を与えた、月夜だった。


そして、人見知りを、葵ちゃん限定解除した俺は、見つける度、後を付いて回るようになっていた。

決してストーカーではない。


ただ、葵ちゃん以外に、近寄りたいと思う人が、いなかっただけだ。

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