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ガマガエルの親方
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青年とすっかり仲良くなったある朝、坊ちゃんがらせん階段の近くに行こうとすると先客が青年と話をしているのが見えました。
「無理矢理こんな格好に着せ替えられたかと思ったら、途端みんないなくなっちまう!これはどういうことだ!」
近くに寄ってみますと、それは大きなガマガエルが二本足で立って…ええ、それだけではなく一張羅なのでしょうか、上等な着物でめかし込んで、階段の辺りで青年に文句を言っているのでした。
青年はこちらに気づいたようで、大丈夫だと目で合図をくれました。そこで坊ちゃんが寄って行き、青年とガマガエルの親方(とても恰幅がよかったのでこう呼びました)の話に加わる形になりました。
銀のらせんはきらきらと今日も美しく光っておりました。
「俺にも仕事があるから勘弁してくれ、早く家に帰らにゃならん」
「どんなお仕事ですか」
青年が静かに問うとガマガエルの親方は少し黙って、長く黙って、考え込んだ果てに、
「大切すぎて思い出せん!それほどだ!」
と子供のような駄々をこね始める始末です。
「近頃は熱の出る嫌な風邪が流行ってな。てんで人手が足りんのだ。それこそこの俺様が頑張らなくちゃあなるまいと寝る間も惜しんで働いとる。だが今朝になったらなんだ!よくわからんがみんなして、さめざめ泣きながらこんな格好にさせられるわ、着替え終わったと思ったら、こんなよくわからん場所に置き去りにされるやら…」
話していくうちに両目から大量の涙が溢れ出ました。地面をポタポタ濡らしていきます。まあまあ、と青年はなだめながらハンカチを貸してやりました。そして
「皆さんなら、この上でお待ちです。特に懐かしい人がたくさん待っていらっしゃるはずですよ。」
親方はもうすっかり泣きつかれてしまいました。
「こんな長い階段より仕事を…」
「いえいえ、それより」
青年はガマガエルの首根っこをぐっと掴むと銀のらせん階段の一段目に座らせました。
「皆さんがお待ちです」
銀のらせんはガマガエルの親方を乗せると、驚いたことにゆっくりと、上へ上へと回転し昇っていくではありませんか。
親方はまだ何やら喚いていましたが、それもあっという間に遠いものになり、遂には親方の姿も見えなくなりました。
この不可思議な光景を坊ちゃんは一切の口出しもせず見守っていました。と、言うよりは何もかもわからないことだらけで、そして少しだけ、あの美しく輝くらせん階段が怖いもののように思えたのでした。
坊ちゃんは青年に問いました。
「皆さんって、どこの人たち?」
「さあ?」
青年は肩をすくめて、いつものように座って本を読み始めました。
坊ちゃんはなんだかガマガエルは騙されてしまったんじゃないだろうかと、もやもや考えておりました。ですが黙りこくっている坊ちゃんに、気づいたら青年が昨日の絵本の続きでも読まないかと袋から絵本を取り出すと、全く気持ちはそっちにいってしまい、何にも怖いことなどないような心地でいつも通り、絵本と青年との会話に夢中になったのでした。
「無理矢理こんな格好に着せ替えられたかと思ったら、途端みんないなくなっちまう!これはどういうことだ!」
近くに寄ってみますと、それは大きなガマガエルが二本足で立って…ええ、それだけではなく一張羅なのでしょうか、上等な着物でめかし込んで、階段の辺りで青年に文句を言っているのでした。
青年はこちらに気づいたようで、大丈夫だと目で合図をくれました。そこで坊ちゃんが寄って行き、青年とガマガエルの親方(とても恰幅がよかったのでこう呼びました)の話に加わる形になりました。
銀のらせんはきらきらと今日も美しく光っておりました。
「俺にも仕事があるから勘弁してくれ、早く家に帰らにゃならん」
「どんなお仕事ですか」
青年が静かに問うとガマガエルの親方は少し黙って、長く黙って、考え込んだ果てに、
「大切すぎて思い出せん!それほどだ!」
と子供のような駄々をこね始める始末です。
「近頃は熱の出る嫌な風邪が流行ってな。てんで人手が足りんのだ。それこそこの俺様が頑張らなくちゃあなるまいと寝る間も惜しんで働いとる。だが今朝になったらなんだ!よくわからんがみんなして、さめざめ泣きながらこんな格好にさせられるわ、着替え終わったと思ったら、こんなよくわからん場所に置き去りにされるやら…」
話していくうちに両目から大量の涙が溢れ出ました。地面をポタポタ濡らしていきます。まあまあ、と青年はなだめながらハンカチを貸してやりました。そして
「皆さんなら、この上でお待ちです。特に懐かしい人がたくさん待っていらっしゃるはずですよ。」
親方はもうすっかり泣きつかれてしまいました。
「こんな長い階段より仕事を…」
「いえいえ、それより」
青年はガマガエルの首根っこをぐっと掴むと銀のらせん階段の一段目に座らせました。
「皆さんがお待ちです」
銀のらせんはガマガエルの親方を乗せると、驚いたことにゆっくりと、上へ上へと回転し昇っていくではありませんか。
親方はまだ何やら喚いていましたが、それもあっという間に遠いものになり、遂には親方の姿も見えなくなりました。
この不可思議な光景を坊ちゃんは一切の口出しもせず見守っていました。と、言うよりは何もかもわからないことだらけで、そして少しだけ、あの美しく輝くらせん階段が怖いもののように思えたのでした。
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「さあ?」
青年は肩をすくめて、いつものように座って本を読み始めました。
坊ちゃんはなんだかガマガエルは騙されてしまったんじゃないだろうかと、もやもや考えておりました。ですが黙りこくっている坊ちゃんに、気づいたら青年が昨日の絵本の続きでも読まないかと袋から絵本を取り出すと、全く気持ちはそっちにいってしまい、何にも怖いことなどないような心地でいつも通り、絵本と青年との会話に夢中になったのでした。
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