黒曜の誓い、竜を狩る者たち

ンヴ

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ルナの無償の愛によって、原初の創造主アルテミアの凍てついていた心は解き放たれた。彼女の瞳から狂気の光は消え、代わりに深い後悔と、そしてほんのわずかな希望の灯が宿っていた。しかし、一度暴走を始めた創造のエネルギーは、もはや彼女自身にも完全に制御することはできず、世界は依然として崩壊の危機に瀕していた。アトリエは激しく揺れ動き、空間の裂け目からは混沌としたエネルギーが絶えず溢れ出している。

「ウルフルム……! ルナ……! そして、勇気ある者たちよ……。私の……私の最後の願いを聞いてくれるか……?」
アルテミアは、弱々しくも、しかし切実な声で俺たちに語りかけた。その美しい顔には、深い苦悩の色が浮かんでいる。

「アルテミアさん……! あなたの願いとは……?」
俺は、警戒しながらも、彼女の言葉に耳を傾けた。

「この暴走した創造の力は……もはや私一人では止められない……。このままでは、この世界も、そして私の魂も、永遠の混沌へと飲み込まれてしまうだろう……。だから……お願いだ……。この私を……この歪んでしまった創造主を……あなたたちの手で、完全に消滅させてほしい……」
アルテミアの言葉は、俺たちに衝撃を与えた。自らを滅ぼせというのか……?

「そんな……! それでは、あなた自身が……!」
ルナが、悲痛な声を上げる。

「構わない……。私は、あまりにも多くの過ちを犯した……。自らの孤独と絶望から、美しい世界を、そしてそこに生きる魂たちを、永遠の苦しみへと引きずり込もうとしたのだから……。私に、生きる資格などない……。だが……この世界だけは……あなたたちが愛する、この不完全で、しかし美しい世界だけは……救ってほしいのだ……!」
アルテミアの瞳からは、再び星屑のような涙が溢れ出す。それは、後悔と、そして贖罪の涙だった。

「アルテミアさん……」
俺は、言葉に詰まった。彼女の苦しみは、痛いほど伝わってくる。しかし、本当に彼女を消滅させることが、唯一の解決策なのだろうか……?

その時、俺の胸元で、森の賢者から授かった精霊の護符が、そしてルナの持つ調和のオーブが、温かく、そして力強い光を放ち始めた。それは、まるで二つの世界の精霊たちが、俺たちに何かを伝えようとしているかのようだった。

『ウルフルム……。創造主の魂は、確かに歪んでしまった……。しかし、その根源にあるのは、純粋な『創造への渇望』と『美への愛』……。それを完全に消し去ることは、宇宙のバランスを再び崩壊させることに繋がりかねない……』
森の賢者の声が、俺の心に直接響いてきた。

『ルナ……。あなたのその『原初の愛』の力ならば……あるいは……。アルテミアさんの魂を、破壊ではなく……『再生』へと導くことができるかもしれない……』
どこからともなく、かつてルナが解放した、森の精霊たちの優しい声が聞こえてくる。

「再生……?」
ルナが、驚いたように呟いた。

「そうだ……!」俺は、何かを掴んだ気がした。「アルテミアさん! あなたの願いは、確かに受け取りました! ですが、俺たちは、あなたを消滅させるつもりはありません! あなたのその歪んでしまった創造の力を、俺たちの絆の力で、そしてルナの愛の力で、もう一度、正しい形へと『再創造』するんです!」

「そんなことが……可能なのか……?」
アルテミアは、信じられないといった表情で俺を見つめる。

「やってみなければ分かりません! でも、俺たちは諦めない! あなたの孤独も、絶望も、全て俺たちが受け止めます! そして、一緒に、新たな未来を創造しましょう!」
俺の言葉に、仲間たちも力強く頷いた。
「そうだぜ、アルテミアさん! あんた一人に、全部背負わせるわけにはいかねえ!」とザナック。
「あなたのその創造の力は、きっと、この世界をより豊かにするために使えるはずです」とアルドリス。
カイ、リアラ、リオ、セナもまた、それぞれの想いを胸に、アルテミアに手を差し伸べようとしていた。

ルナは、アルテミアの前に静かに進み出た。そして、その小さな手を、アルテミアの震える手にそっと重ねた。
「アルテミアさん……。あなたの心の中にある、本当の『美しさ』を、私に見せてください。そして、一緒に、新しい歌を歌いましょう。悲しみや孤独ではなく、喜びと希望に満ちた、新しい世界の歌を……」
ルナの瞳は、どこまでも澄み渡り、そして絶対的な愛と信頼に満ちていた。

アルテミアの瞳から、一筋の温かい涙が流れ落ちた。
「……ありがとう……。ありがとう、ルナ……。そして、ウルフルム……。私のような存在に……まだ、希望を……」
彼女の声は、感謝と、そしてほんのわずかな戸惑いに震えていた。

「さあ、始めましょう。アルテミアさん」俺は、再生した虹色の魂の剣――今は「創造の剣」と呼ぶべきか――を構えた。「あなたのその暴走する創造の力を、俺たちの絆の力で、そしてルナの愛の力で、新たなる宇宙の調和へと導きます!」

アルテミアは、ゆっくりと頷いた。そして、彼女の体から放たれる創造のエネルギーは、破壊の奔流から、徐々に、しかし確実に、コントロールされた創造の波動へと変わり始めた。それは、まだ不安定で、いつ再び暴走するとも知れない危険な状態だったが、そこには確かに、新たな「調和」への兆しが見えていた。

「みんな、力を貸してくれ! 俺たちの魂を一つにし、アルテミアさんの心を、そしてこの世界の未来を、再創造するんだ!」
俺の魂の叫びに、仲間たちの魂が共鳴する。
ザナックの不屈の闘志、アルドリスの調和した闇と光、カイの疾風の剣技、リアラの精霊の力、リオとセナの知識と技術、クロノスの時の導き、アウストラの星々の囁き、ミカエルの聖なる加護、そしてガランやエルネスト、世界中の人々の祈り……。
その全てが、ルナの「原初の愛」の光を通じて、俺の「創造の剣」へと集約されていく。

「これが……魂の対話……。そして、新たなる……創造の始まり……」
アルテミアは、その光景を、まるで夢でも見ているかのように、静かに見つめていた。

ウルフルムと仲間たちの、そして創造主アルテミア自身の魂を賭けた、最後の「共演」が、今、始まろうとしていた。
それは、破壊ではなく、再生を。絶望ではなく、希望を。そして、孤独ではなく、絆を紡ぎ出すための、聖なる儀式だったのかもしれない。
物語は、宇宙の運命を賭けた、壮大なる創造のクライマックスへと向かっていく。
そして、その先に待ち受けるのは、誰も見たことのない、新たなる世界の夜明けだった――。
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