婚約破棄から始まる嘘と本気の恋

フェレット

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11話 魅惑と策略

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 王宮の夜は静寂に包まれていた。
 豪華な内装が煌めく広間には、わずかに灯されたランプの光が影を生んでいた。
その部屋の片隅で、カスパー王子は落ち着きのない様子で歩き回っていた。
時折、窓の外に目をやり、ため息をつく。

「遅いな……ミラナ、早く来てくれよ。」

 彼の独り言が空間に響く。
すでに数分は待ったはずだが、彼にとってはそれが何倍にも感じられる時間だった。
ようやくノックの音が響き、カスパーはすぐに反応する。

「入れ!」

 その声が扉を押すと同時に、ミラナ・エヴァンズが優雅に現れた。
淡いピンクのドレスをまとった彼女は、まるで夜の薔薇のように美しく、部屋全体に華やかな空気をもたらした。

「お待たせして申し訳ありませんわ、カスパー様。」

 ミラナは軽やかに笑みを浮かべる。
その笑顔に、カスパーは一瞬で表情を和らげた。

「いや、構わない。お前が来れば、それでいい。」

 カスパーは手を伸ばし、彼女を椅子へと案内する。
ミラナが優雅に腰掛けると、カスパーはすぐに彼女の顔をじっと見つめた。

「ミラナ、やっぱりお前は美しいな。」

 その言葉に、ミラナは柔らかく笑みを浮かべた。
その笑顔は、誰もが無意識に魅了されるものだった。
だが、その奥にある冷静な光にカスパーが気づくことはなかった。

「ありがとうございます、カスパー様。でも、今日お邪魔したのは私の美しさを褒めていただくためではありませんわ。」

「分かってるさ。でも、こうしてお前と話せるだけで嬉しいんだ。」

 カスパーの言葉に、ミラナは一瞬だけ目を細めた。
彼の気持ちが完全に自分に向いていることを理解しながら、その感情をどのように利用するかを考える。

「カスパー様、私たちにはやるべきことがありますわね。特に、シュタインベルク家とヴァレンシア家の動きに対しては注意が必要ですわ。」

「……それって、アリアとレオンのことだよな。」

「ええ。彼らの婚約が、私たちにとってどれほど厄介なものになるか……。その可能性を考えるだけで、対策を講じる必要性を感じますわ。」

 ミラナはそう言いながら、目を伏せて少し悲しげな表情を見せる。
その仕草に、カスパーはたちまち心を奪われた。

「心配するな、ミラナ。お前が傷つくようなことは絶対にさせない。俺が何とかする。」

「……ありがとうございます。カスパー様がそうおっしゃってくださると、とても心強いですわ。」

 ミラナは優雅に微笑み、ゆっくりと立ち上がる。
その仕草には自然な美しさがあり、カスパーの視線が彼女から離れることはなかった。

「ですが、カスパー様。具体的に動く際には、私にご相談くださいませ。貴方の計画をより効果的にするために、できる限りお力添えしたいのです。」

「もちろんだ。お前の助けがあれば、どんな相手にも負ける気がしないよ。」

 カスパーは自信に満ちた笑みを浮かべたが、ミラナの微かな冷笑に気づくことはなかった。

 その後、ミラナは部屋を去った。
長い廊下を歩きながら、彼女はひとりつぶやく。

「カスパー様、貴方が思い通りに動いてくだされば、私の目的も叶いますわ……。」

 その瞳には冷たく鋭い光が宿っている。
ミラナにとって、カスパーはただの駒であり、利用するのは造作もないことだ。
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