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第一部 恵の選択
第八章 輝き
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【啓介と同居 三ヶ月目】
【20●1年3月15日 AM11:50】
リビングで。
※※※※※※※※※※※※※※※
リビングに戻ってソファーに座り、恵はドキドキしながら包みを開いた。
「わぁ・・・」
見覚えのある有名ブランドのケースを開くと、思わず声が出てしまった。
金色に輝くブレスレットウォッチが入っていた。
それを手に取り、かざして見ると鎖の一つ一つに自分の顔が小さく映り、何とも言えない高貴な光を投げかけてくる。
恵は陶酔した表情で見つめていた。
どの位、時間が経ったのであろうか。
ハッと気が付くと時計を見た。
もう12時をかなり過ぎている。
慌ててインターホンに向かい、義父に電話をした。
呼出し音が長く続いていたが出る気配がない。
受話器を置き、改めてブレスレットを眺めてみた。
義父は「安物」と言っていたがとんでもない。
よく女性雑誌等で見る高価な品であった。
少なく見積もっても五十万円以上はするだろう。
恵は動揺を隠しきれずに胸をドキドキさせていた。
結婚してからも、それ以前も、こんなに高価な物を買った事が無い。
ずっと家計を切り詰めた生活は、恵を女らしい物から遠ざけていた。
ましてプレゼントなら尚更である。
直ぐに返そうと立ち上がりかけたが、金色の輝きが恵から力を奪ってしまう。
ヘナヘナと腰を下ろし慎重にそれを腕にはめてみた。
又、ため息が出た。
恵の瞳はブレスレットの輝きに合わせるかのように潤んで光っていた。
白くしなやかな腕に金色が美しく映える。
恵は飽きずに、いつまでも眺めていた。
あれ程、義父からの援助は拒否していたのに。
家の他に何か貰ってしまうと、全てにおいて頭が上がらなくなりそうで嫌であったのだ。
ひたすら意地を張っていた。
だが、いざこうしてプレゼントされると、嘘のように気持ちが楽になっていく。
結婚記念日に何も用意しない夫に、すっぽかされた直後と言う事もあった。
いや、それよりも雨の中で見せた義父の優しい眼差しがそう思わせるのかもしれない。
義父はああ言ってはいたが、ワザワザ土砂降りの雨の中を恵のためにプレゼントを買いに行ってくれたのは明白であった。
もしかしたら、昨夜の夫婦喧嘩を聞かれていたのかもしれない。
そう思うと、朝食から姿を見せなかった義父の行動に納得がいく。
恵の予想は確信へと変わっていった。
結婚記念日に遅く帰り、プレゼントも用意しなかった息子に代わって義父は高価なアクセサリーを買いに、わざわざ大雨の中を出かけて行ったのだ。
考えれば考えるほど納得できるものになっていく。
恵の心は後悔で一杯になった。
今朝は十時なのに義父を、お茶に誘わなかったのだ。
昨日のショックが大きく、泣いた顔を見せて馬鹿にされるのが嫌だった。
どうしてあんなに意地を張っていたのであろう。
思い返せば義父の方から幾度と無く仲直りのサインは出ていたのに。
昨日だって気を利かせて夕食を断り、ワザワザ出かけてくれていたのだ。
今朝も昨夜の二人のやり取りを聞いて、朝食も断って一人にしておいてくれたのであろう。
ここ数年、夫からこんな優しさを受けた事が無い。
ずっと一人で耐えていたものが、スーッと消えていくようであった。
恵は思わず吹き出してしまった。
何と単純なのであろうか。
あんなに毛嫌いしていた男を、もう今では大げさな位に誉めている。
ブレスレットを頬に当ててみた。
冷たい感触が心地良い。
恵は久しぶりに爽やかな気分になった。
昼食は、お礼として義父の好物を作ってあげようと思うのだった。
【20●1年3月15日 AM11:50】
リビングで。
※※※※※※※※※※※※※※※
リビングに戻ってソファーに座り、恵はドキドキしながら包みを開いた。
「わぁ・・・」
見覚えのある有名ブランドのケースを開くと、思わず声が出てしまった。
金色に輝くブレスレットウォッチが入っていた。
それを手に取り、かざして見ると鎖の一つ一つに自分の顔が小さく映り、何とも言えない高貴な光を投げかけてくる。
恵は陶酔した表情で見つめていた。
どの位、時間が経ったのであろうか。
ハッと気が付くと時計を見た。
もう12時をかなり過ぎている。
慌ててインターホンに向かい、義父に電話をした。
呼出し音が長く続いていたが出る気配がない。
受話器を置き、改めてブレスレットを眺めてみた。
義父は「安物」と言っていたがとんでもない。
よく女性雑誌等で見る高価な品であった。
少なく見積もっても五十万円以上はするだろう。
恵は動揺を隠しきれずに胸をドキドキさせていた。
結婚してからも、それ以前も、こんなに高価な物を買った事が無い。
ずっと家計を切り詰めた生活は、恵を女らしい物から遠ざけていた。
ましてプレゼントなら尚更である。
直ぐに返そうと立ち上がりかけたが、金色の輝きが恵から力を奪ってしまう。
ヘナヘナと腰を下ろし慎重にそれを腕にはめてみた。
又、ため息が出た。
恵の瞳はブレスレットの輝きに合わせるかのように潤んで光っていた。
白くしなやかな腕に金色が美しく映える。
恵は飽きずに、いつまでも眺めていた。
あれ程、義父からの援助は拒否していたのに。
家の他に何か貰ってしまうと、全てにおいて頭が上がらなくなりそうで嫌であったのだ。
ひたすら意地を張っていた。
だが、いざこうしてプレゼントされると、嘘のように気持ちが楽になっていく。
結婚記念日に何も用意しない夫に、すっぽかされた直後と言う事もあった。
いや、それよりも雨の中で見せた義父の優しい眼差しがそう思わせるのかもしれない。
義父はああ言ってはいたが、ワザワザ土砂降りの雨の中を恵のためにプレゼントを買いに行ってくれたのは明白であった。
もしかしたら、昨夜の夫婦喧嘩を聞かれていたのかもしれない。
そう思うと、朝食から姿を見せなかった義父の行動に納得がいく。
恵の予想は確信へと変わっていった。
結婚記念日に遅く帰り、プレゼントも用意しなかった息子に代わって義父は高価なアクセサリーを買いに、わざわざ大雨の中を出かけて行ったのだ。
考えれば考えるほど納得できるものになっていく。
恵の心は後悔で一杯になった。
今朝は十時なのに義父を、お茶に誘わなかったのだ。
昨日のショックが大きく、泣いた顔を見せて馬鹿にされるのが嫌だった。
どうしてあんなに意地を張っていたのであろう。
思い返せば義父の方から幾度と無く仲直りのサインは出ていたのに。
昨日だって気を利かせて夕食を断り、ワザワザ出かけてくれていたのだ。
今朝も昨夜の二人のやり取りを聞いて、朝食も断って一人にしておいてくれたのであろう。
ここ数年、夫からこんな優しさを受けた事が無い。
ずっと一人で耐えていたものが、スーッと消えていくようであった。
恵は思わず吹き出してしまった。
何と単純なのであろうか。
あんなに毛嫌いしていた男を、もう今では大げさな位に誉めている。
ブレスレットを頬に当ててみた。
冷たい感触が心地良い。
恵は久しぶりに爽やかな気分になった。
昼食は、お礼として義父の好物を作ってあげようと思うのだった。
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