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第一部 恵の選択
第四十章 誓い
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【啓介と同居 四ヶ月目】
【20●1年4月3日 AM9:40】
一時間後。
リビングで。
※※※※※※※※※※※※※※※
コーヒーの香ばしい匂いがリビングに広がっている。
ソファー前のテーブルに置去りにされたままの二つのカップから、ほのかに湯気が立ち昇っていた。
微かに吐息の音が漏れている。
「ぅ・・・ん・・ん・・ふぅ・・・」
恋人達はもう何年も会っていなかったかの如く互いを味わっている。
舌を絡ませ、幸せな時間を漂っている。
男が唇をウナジに這わせると、女はその顔を押さえるように声を出した。
「あんっ・・ダ、ダメ・・・コーヒーが冷めちゃう」
男は未練気に女を放すと素直に従った。
苦笑いしながら、コーヒーを口に含むと大袈裟な声を出した。
「あー・・やっぱ恵の入れてくれたコーヒーが、
いっちゃん美味いわぁ・・・」
そして嬉しそうに天使の顔を覗き込む。
無邪気な笑顔であった。
「フフッ・・もぅ、お世辞が上手なんだから・・・」
そう言いながらも恵は満足そうにカップを引き寄せた。
「本当、美味しい・・・」
二人は顔を見合わせると顔を綻ばせた。
午前十時過ぎ。
「夕方までの恋人達」の時間が始まる。
そして、今日から新しい生活が。
「でも、やっぱり寂しかった・・・」
義父の肩にもたれながら恵が呟いた。
甘い香りが鼻をくすぐる。
啓介はその匂いを楽しむように天使の髪を撫でている。
「俺もや・・・。
よっぽど夜中に帰ろうかと思うたで・・・」
「じゃあ、帰ってくればいいじゃない!」
不服そうに女が言った。
「さっき・・・泣きそうになっちゃった」
子猫のように顔を摺り寄せてくる。
「どうして・・・?」
男がむず痒い声を出す。
「だって・・・心配だったんだもん。
お義父さん・・・
私を置いて何処か行っちゃうような気がして・・・
恐かったの・・・」
天使の瞳がもう潤んできた。
「あほやなぁ・・・」
「だって・・・だってぇ・・・」
涙が溢れてくる。
さっきは我慢できたのに。
「大丈夫や・・恵に嫌われん限り、
俺はお前のもんや・・・」
「本当・・・?」
天使が顔を上げる。
右の目から一しずく、こぼれた。
「ああ、ほんとや・・・
せやから、俺を捨てんといてくれよ・・・」
男はおどけた調子で答えると恵の頬をゴツゴツした手で覆った。
恵は左目からも流れ出た涙で男の指を濡らして呟いた。
「ばか・・・」
そして、ぶつけるように唇を重ねてきた。
涙が止め処なく溢れてくる。
男はその味も悪く無いと思った。
幸せの味である。
唇で拭い取るように囁いている。
「本当言うとな・・・俺も、恐かったんや」
「あ・・・ふぅ・・・」
女は喜びの吐息を漏らす。
「朝、帰ってきた時・・・
お前が・・お前の気もちが変わっとったら・・・」
女の唇がそれ以上の事を言わせなかった。
愛おしく、激しく舌を絡めてくる。
「好き、大好き・・・。
ずっと、これからも・・・
お義父さん・・・お義父さ・・・ん」
「めぐみ、めぐ・・み・・・」
「私は・・お義父さん・・の、もの・・・
あ、愛しています・・・嬉しい・・・」
女の細い腕が男の広い背中をさ迷う。
男の逞しい腕がすっぽり天使を包む。
「後悔・・してへんか・・・?」
「してない・・愛しているっ・・・」
「恵、めぐ・・み・・好きや・・・」
「好きっ・・お義父さん・・大好き・・・」
愛の炎が二人を焦がす。
確かめ合った互いの気持ちは誓いとなって、それぞれの記憶に永遠に刻まれていく。
一夜明けた二人の愛は変わる事無く、確実に成長していたのだった。
【20●1年4月3日 AM9:40】
一時間後。
リビングで。
※※※※※※※※※※※※※※※
コーヒーの香ばしい匂いがリビングに広がっている。
ソファー前のテーブルに置去りにされたままの二つのカップから、ほのかに湯気が立ち昇っていた。
微かに吐息の音が漏れている。
「ぅ・・・ん・・ん・・ふぅ・・・」
恋人達はもう何年も会っていなかったかの如く互いを味わっている。
舌を絡ませ、幸せな時間を漂っている。
男が唇をウナジに這わせると、女はその顔を押さえるように声を出した。
「あんっ・・ダ、ダメ・・・コーヒーが冷めちゃう」
男は未練気に女を放すと素直に従った。
苦笑いしながら、コーヒーを口に含むと大袈裟な声を出した。
「あー・・やっぱ恵の入れてくれたコーヒーが、
いっちゃん美味いわぁ・・・」
そして嬉しそうに天使の顔を覗き込む。
無邪気な笑顔であった。
「フフッ・・もぅ、お世辞が上手なんだから・・・」
そう言いながらも恵は満足そうにカップを引き寄せた。
「本当、美味しい・・・」
二人は顔を見合わせると顔を綻ばせた。
午前十時過ぎ。
「夕方までの恋人達」の時間が始まる。
そして、今日から新しい生活が。
「でも、やっぱり寂しかった・・・」
義父の肩にもたれながら恵が呟いた。
甘い香りが鼻をくすぐる。
啓介はその匂いを楽しむように天使の髪を撫でている。
「俺もや・・・。
よっぽど夜中に帰ろうかと思うたで・・・」
「じゃあ、帰ってくればいいじゃない!」
不服そうに女が言った。
「さっき・・・泣きそうになっちゃった」
子猫のように顔を摺り寄せてくる。
「どうして・・・?」
男がむず痒い声を出す。
「だって・・・心配だったんだもん。
お義父さん・・・
私を置いて何処か行っちゃうような気がして・・・
恐かったの・・・」
天使の瞳がもう潤んできた。
「あほやなぁ・・・」
「だって・・・だってぇ・・・」
涙が溢れてくる。
さっきは我慢できたのに。
「大丈夫や・・恵に嫌われん限り、
俺はお前のもんや・・・」
「本当・・・?」
天使が顔を上げる。
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「ああ、ほんとや・・・
せやから、俺を捨てんといてくれよ・・・」
男はおどけた調子で答えると恵の頬をゴツゴツした手で覆った。
恵は左目からも流れ出た涙で男の指を濡らして呟いた。
「ばか・・・」
そして、ぶつけるように唇を重ねてきた。
涙が止め処なく溢れてくる。
男はその味も悪く無いと思った。
幸せの味である。
唇で拭い取るように囁いている。
「本当言うとな・・・俺も、恐かったんや」
「あ・・・ふぅ・・・」
女は喜びの吐息を漏らす。
「朝、帰ってきた時・・・
お前が・・お前の気もちが変わっとったら・・・」
女の唇がそれ以上の事を言わせなかった。
愛おしく、激しく舌を絡めてくる。
「好き、大好き・・・。
ずっと、これからも・・・
お義父さん・・・お義父さ・・・ん」
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「私は・・お義父さん・・の、もの・・・
あ、愛しています・・・嬉しい・・・」
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「後悔・・してへんか・・・?」
「してない・・愛しているっ・・・」
「恵、めぐ・・み・・好きや・・・」
「好きっ・・お義父さん・・大好き・・・」
愛の炎が二人を焦がす。
確かめ合った互いの気持ちは誓いとなって、それぞれの記憶に永遠に刻まれていく。
一夜明けた二人の愛は変わる事無く、確実に成長していたのだった。
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