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第一部 恵の選択
第五十七章 再会3
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【啓介と同居 四ヶ月目】
【20●1年4月6日 PM11:30】
玄関の前で。
※※※※※※※※※※※※※※※
タクシーを降りると、啓介は暫らく玄関の前に佇んでいた。
二階の窓を見上げながらため息を一つ、ついた。
息子夫婦の部屋は明りが消えている。
無理に粘った将棋道場では良い戦績は残せなかった。
恵の事を想う度、うっかりした手ばかり指してしまう。
三段の腕前が泣いていた。
本当は早く帰りたかった。
天使の顔を一目見たかったのだ。
しかし、と思った。
明日は月曜日だ。
恵との時間はゆっくり持てるのだ。
それでも息子の武に寄り添っていた天使が、本当に明日戻ってくれるのか不安であった。
玄関に入ろうとして足が止まった。
明りがついているのである。
ドアレバーを廻すと鍵が開いていた。
静かに扉を開けた瞬間、小さく声をあげた。
「めぐ・・み・・・?」
天使が立っていた。
薄いピンク色のパジャマを着た恵が、頬を膨らませて腕を組んでいる。
恐い目をして睨みながら言った。
「もう・・・何時だと思っているのよ。
心配するじゃないっ・・・」
だが直ぐに顔を崩すと、優しい口調に変える。
「ふふっ・・お帰りなさい・・・」
そして、まだ呆然としている義父を追い立てるようにあがらせた。
リビングの扉を開けて中に入ると、後ろから抱き付いてきた。
柔らかな胸の感触が男の気持ちを高ぶらせる。
息子の嫁なのである。
しかも今は真夜中であった。
だが、風呂上りの香りが鼻をくすぐる。
男は身体が熱くなるのを感じながら動けないでいた。
「お帰り・・なさい・・・」
女は又、同じセリフを言った。
胸の鼓動が音を立てている。
なつかしい義父の匂いがする。
タバコの匂いだ。
男の正面に廻るとイタズラっぽい目をして言った。
「あー、タバコ吸ったでしょうぉ・・・
さては、浮気してきたなぁー?」
男は慌てて答えた。
「ち、ちゃうよ・・・。
将棋や、道場に行ってきたんや。
俺は吸っとらん・・・」
恵はもう一度服の匂いをかぐと、わざとしかめっ面をして言った。
「本当・・・凄い匂い。
でも香水の匂いはしないわね・・・?
よし、よし・・・」
そして男の胸に飛び込んでクスクス笑っている。
啓介は天使の仕草に我慢できずに強く抱きしめた。
女の顔から笑いが消えて男の腕の中で静かになった。
互いの温もりが伝わってくる。
恵は静かに顔をあげた。
「めぐ・・み・・・」
男の声に瞳を潤ませながら言った。
「会いたかった・・の・・・」
「めぐみ・・・」
二人はゆっくりと顔を近づけ唇を重ねた。
たった一日しか離れていなかったのに、それが何年にも思えてくる。
愛おしさを込めて互いを味わっている。
静かに時間が流れていく。
吐息が漏れる。
二人がテーブルにつくまで、まだ暫らく時間が掛かりそうであった。
今、時間は午前零時になろうとしていた。
明日は義父のものになると、心に決める恵であった。
【20●1年4月6日 PM11:30】
玄関の前で。
※※※※※※※※※※※※※※※
タクシーを降りると、啓介は暫らく玄関の前に佇んでいた。
二階の窓を見上げながらため息を一つ、ついた。
息子夫婦の部屋は明りが消えている。
無理に粘った将棋道場では良い戦績は残せなかった。
恵の事を想う度、うっかりした手ばかり指してしまう。
三段の腕前が泣いていた。
本当は早く帰りたかった。
天使の顔を一目見たかったのだ。
しかし、と思った。
明日は月曜日だ。
恵との時間はゆっくり持てるのだ。
それでも息子の武に寄り添っていた天使が、本当に明日戻ってくれるのか不安であった。
玄関に入ろうとして足が止まった。
明りがついているのである。
ドアレバーを廻すと鍵が開いていた。
静かに扉を開けた瞬間、小さく声をあげた。
「めぐ・・み・・・?」
天使が立っていた。
薄いピンク色のパジャマを着た恵が、頬を膨らませて腕を組んでいる。
恐い目をして睨みながら言った。
「もう・・・何時だと思っているのよ。
心配するじゃないっ・・・」
だが直ぐに顔を崩すと、優しい口調に変える。
「ふふっ・・お帰りなさい・・・」
そして、まだ呆然としている義父を追い立てるようにあがらせた。
リビングの扉を開けて中に入ると、後ろから抱き付いてきた。
柔らかな胸の感触が男の気持ちを高ぶらせる。
息子の嫁なのである。
しかも今は真夜中であった。
だが、風呂上りの香りが鼻をくすぐる。
男は身体が熱くなるのを感じながら動けないでいた。
「お帰り・・なさい・・・」
女は又、同じセリフを言った。
胸の鼓動が音を立てている。
なつかしい義父の匂いがする。
タバコの匂いだ。
男の正面に廻るとイタズラっぽい目をして言った。
「あー、タバコ吸ったでしょうぉ・・・
さては、浮気してきたなぁー?」
男は慌てて答えた。
「ち、ちゃうよ・・・。
将棋や、道場に行ってきたんや。
俺は吸っとらん・・・」
恵はもう一度服の匂いをかぐと、わざとしかめっ面をして言った。
「本当・・・凄い匂い。
でも香水の匂いはしないわね・・・?
よし、よし・・・」
そして男の胸に飛び込んでクスクス笑っている。
啓介は天使の仕草に我慢できずに強く抱きしめた。
女の顔から笑いが消えて男の腕の中で静かになった。
互いの温もりが伝わってくる。
恵は静かに顔をあげた。
「めぐ・・み・・・」
男の声に瞳を潤ませながら言った。
「会いたかった・・の・・・」
「めぐみ・・・」
二人はゆっくりと顔を近づけ唇を重ねた。
たった一日しか離れていなかったのに、それが何年にも思えてくる。
愛おしさを込めて互いを味わっている。
静かに時間が流れていく。
吐息が漏れる。
二人がテーブルにつくまで、まだ暫らく時間が掛かりそうであった。
今、時間は午前零時になろうとしていた。
明日は義父のものになると、心に決める恵であった。
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