母娘淫乱調教―レモンティーな朝焼け―

山田さとし

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第五部 調教(香奈子)

第二十八章1 思い出づくり

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(馬鹿な、わたし・・・)

オレンジ色の光が動くインジケーターを、うつろな眼差しで追う香奈子は自分を責め続けていた。
最上階から降りていくエレベーターがどの階で止まるのか、男からは知らされていなかった。

(ど、どうしよう・・・?)

後悔が胸に広がっていく。
懇願する男の手を振り解く事が出来ず、今夜付き合う事を了承してしまったのだ。

『十二時まで・・いや、一時間だけでもいい・・・』

男は巧妙な逃げ道を用意していた。

『思い出が欲しいんだ・・・』

仕方なく納得するような曖昧な形で香奈子を誘う。
このままホテルの部屋に連れて行かれ、抱かれるのだろうか。

『僕の方からは決して貴方に手を出しませんから』

そう、竹内は約束をした。

(で、でも・・・)

嘘に決まっていると思った。
そんな男がレイプなどする筈がないではないか。

(卑怯な男ですもの、信用してはいけないわ・・・)

(フフフ・・・)

竹内は薄笑いを浮かべながらジッと香奈子を見つめている。メガネを外したままの細い目から絡みつくような視線を投げてくる。

(あぁ・・こ、この眼・・・)

ラウンジを出てから、男と目を合わせないようにしていたのだが、そうすればする程に視線を意識していた。
催眠術をかけられたように、抵抗する気力が奪われていく。
あの目を見ていると、無意識に支配される事を願ってしまう気がする。
このままでは再び身体を許す事になるだろう。

(でも、たとえそうなったとしても・・・)

既に気持ちは、犯される事を前提に考え始めていた。
不安と同時に期待がむず痒く沸き上がっている事に、香奈子は気付いていない。

(一度きり・・今夜で本当に最後だから・・・)

半ば諦めの境地に立つ香奈子は、そう自分に言い聞かせている。

(あぁ・・・)

エレベーターが停止した瞬間、香奈子は思わず目を閉じた。
しかし、降り立った階はロビーのある1階であった。

「さっ・・いきましょうか・・・」
竹内は一言告げ、出口に向かって歩きだした。

建物を出ると、竹内は振り返りもせずに歩道を真っ直ぐに進んでいく。
男は約束通り香奈子に指一本触れる事なく歩いている。
てっきりホテルの部屋が予約されていると思っていたのだが、違うらしい。
香奈子はホッとしながらも複雑な気持ちで男を追った。

(一体、何処へ連れて行く気なのかしら?)

不安を抱きながらも、香奈子は胸が高鳴るのを感じていた。
同時に軽い失望を受けている事に気づいて、顔を赤らめた。

(わたし・・・何を考えているの?)

よこしまな欲望に、愕然としている。
死をも覚悟して着てきた喪服も役には立たなかった。
それどころか、帰りが遅くなる口実を心の片隅で考えていたのかもしれないと思うと、自分が情けなくなるのだった。
俯きながら後をついてくる香奈子の戸惑いを竹内は背中越しに感じていた。

「クククッ・・・」
その顔は不気味な影を作りながら邪悪な笑みを浮かべている。

(あと、少しだな・・・)
確かな手ごたえを感じていた。

逃げようと思えば出来る筈である。
拒否して帰ればいい。
それをしないということは、香奈子も心の底では望んでいるという事ではないか。

トドメに薬を入れたカクテルを飲ませようとして上手くいかなかったが、もうその必要もないらしい。
喪服に身を包んでやってきた威勢が良かった態度もメガネを外して睨んだだけで、射すくめられたウサギのように大人しくなってしまった。

やはり、昨日の激しいセックスは香奈子に強烈な余韻を残したのだろう。
一度味わった官能は消えるどころか、更に増幅して潜在意識に植え付けられたに違いない。

何人もの女をSM調教してきた竹内は、そんな気持ちの変化が手に取るように分かった。
今、気持ちは揺れ動きながらも心の片隅で再び犯される事を願っている筈である。

(そうだよな、忘れられる訳はねぇぜ・・・)

あの時の乱れようは経験豊富な竹内にしても予想を超えたものだった。
薬を飲まされていたとはいえ、上品な奥様である香奈子が狂ったように痴態を繰り広げていたのだ。

暗示にかかりやすい性格なのだろう。
面白いように淫乱な欲望を植えつけられていく香奈子は今まで調教したどの女よりも、満ち足りた興奮を与えてくれていた。

(さあて、今度はどうかな・・・?)
今夜の罠にどういう反応を見せるか、楽しみな竹内だった。

「さっ、着きましたよ・・・」

ホテルを出てから5分も歩かない所で男は立ち止まった。大通りから一本、細い道を入った場所にその店はあった。

看板も出ておらず、重そうなドアを開けた竹内に促されるままに中に入った。
狭い部屋にある受付のような小窓からギロリと目が睨んでいる。

「二人だ・・・」

竹内は内ポケットから出した何かを見せると、奥のドアが自動的に開いた。
同時に耳に飛び込んできた大音量に、戸惑いながら中に入った香奈子は驚きに立ちすくんだ。

「こ、ここは・・・?」

ディスコのような所なのだろうか、十数人が音楽に合わせ踊っていた。
薄暗い店内を眩しいライトやイルミネーショーンがキラキラと輝きながら、渦巻いている。

「言ったでしょう?
思い出をつくりに来たんですよ・・・」

「えっ・・・?」

予期せぬ答えに、香奈子は又はぐらかされた気がした。
このまま、踊るだけで帰すつもりなのだろうか。

(それとも・・・?)

戸惑いながら立ちすくんでいると、竹内の手が肩を抱いた。
反射的に身体を強張らせた香奈子に、男はクスッと笑った。

「大丈夫、何もしやしませんよ・・・」
そのまま奥の方に導いていく。

「楽しいショーをご覧にいれようと思いましてね」

人ごみを抜けると、明るく照らされたステージが見えた。ソファーらしき座席が放射状に配置され、その2m程後ろに手すりが立っている。

「さっ・・どうぞ・・・」
ステージ中央正面の最前席に香奈子は座らされた。

「ここは特等席でしてね・・・」
男は人懐こい笑顔を作りながら言った。

それは警戒心を解くには十分であったのか、香奈子も思わず唇を緩めてしまった。

(本当にショーを観るだけなのかも・・・)

約束を守ってくれた事に素直に感謝をした。

(良かった・・・)

ホッとして辺りを見まわすと数組のカップルが席についているのが分かった。
中には男性一人の客もいる。

徐々に席が埋まりだし、手すりの外側にも人影が集まってきていた。
踊っていたのは開演前の時間潰しらしく、後ろのフロアーの照明も落とされステージを除いた場内が暗い闇に包まれていった。
ブザーが鳴り響き、ステージの照明も消えて辺りが真っ暗になった。

(何が始まるのかしら・・・?)

香奈子は期待に満ちた表情で待っている。
素直な性格は意外なシチュエーショーンに、悩んでいた事も忘れる程、胸を躍らせていた。

真っ暗闇の時間が数秒程続いた後、スポットライトが光った。

大音量と共に男が一人、あらわれた。
シルクハットに反り返ったフランス髭の格好は、まるでサーカスの団長をイメージさせる。

「レディースアンド、ジェントルメン・・・」

ヘッドフォンタイプのマイクからビートの利いたロックのリズムに合わせ、小気味いい声が響いた。

「魅惑のセクシャルワールドへ、ようこそ・・・」

あらかじめ録音してあるのだろうか、拍手と歓声が同時に沸き起こった。

「今宵は皆様を未知の世界へお連れします・・・」
両目を大きく開いた顔がギャラリーを見廻していく。

(キャッ・・・)

目が合った香奈子は顔を俯かせた。
香奈子を見つけてニヤッと笑ったように見えたのは、気のせいだろうか。

「早速、ゲストを紹介しましょう」

(あぁっ・・・)
香奈子は息を呑んだ。

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