9 / 119
第一部 「圭子16歳」
第五章 匂い
しおりを挟む
朝の通勤快速が途中駅に着くと、かなり多くの人が降りた。
一瞬空いた車内で圭子の身体は久しぶりに自由を取り戻した。
「ハァー・・・・」
大きく息を吐いた後、素早く反対側のドアに場所を確保するように身体を寄せた。
(良かった・・・これで少しは楽になれる。
さっきはひどかったもの・・・)
四方を囲まれた状態の中央のエリアでは身動きさえ自由にならなかったのである。
女性専用車が出来たせいで普通車両は逆に男ばかりになる事を圭子は知らなかった。
お抱えの運転手が操る父の車で何時も通学しているので、朝の通勤ラッシュには慣れていないのだ。
だから、途中駅での乗り換えで降りた人数以上に、各駅停車の電車から乗り換えてくる数の多い事を忘れていた。
「キャッ・・・」
悲鳴をあげる暇も無く、人の大きな波が襲うように寄せて少女の身体を押しつぶした。
「あぁっ・・・」
柔らかな頬がガラスに密着し、美しい顔が歪む。
「い、いた・・い・・・」
振り絞った力で細い腕をドアと身体の隙間にこじ入れた。
「キャー・・・」
それでも圧倒的な人数は容赦無く圧力をかけてくる。
「あぁ・・あ・・・・」
苦しい時間が続く。
ドアが閉まる寸前に無理にでも乗ろうとする何人かが強引に身体を入れてくる。
駅員も発車させるために力を込めて乗客の身体を押している。
「あぐぅ・・うぅ・・・」
(い、いや・・・く、苦しい・・・)
ほんの二、三分の事なのに圭子にはひどく長く感じた。
こんな体験は初めてだった。
身動きが取れない状態は恐怖に似た切迫感を与える。
ドクン。
その時、血が逆流するように脈打った。
苦しさがピークに達した瞬間、何かが身体の中で弾けたような気がしたのだ。
「あぁっ・・・」
苦痛に歪む少女の唇から切ない声が漏れる。
同時にジーンとした快感が身体を駆けぬけていった。
(な、何・・・この・・変な感じ・・・?)
圭子はその違和感に戸惑いながらも、ある事に気付き始めていた。
(あぁ・・・この・・匂い・・・)
首筋に生暖かい息がかかっている。
生臭いすえたような匂いだった。
そして何よりもタバコのヤニ臭さが強烈に混じっている。
「あぁっ・・・」
圭子は全身の力が抜ける程の衝撃を感じた。
(そ、そんな・・・?)
得体の知れない感覚がジワジワと沸き上がってくる。
それが懐かしく思える程、妖しく少女を誘うのだった。
(だ、だめぇ・・・)
圭子は再び現れようとするイメージを必死になって打ち消そうとしていた。
「うっ・・・くっ・・・」
唇が粘つき、何かを予感している。
(いやっ・・・い・・や・・・)
理性が拒否するのにも関わらす、その感触が鮮明になっていく。
『お前は俺の事が・・・』
声が聞こえ始める。
(ち、違うっ・・・)
首筋に当たる息がむず痒く刺激する。
「うっ・・・うぅっ・・・」
生臭い匂いに頭が痺れていく。
(お、降りなくちゃ・・・)
このままではどうにかなってしまう。
圭子は身をよじって動こうとしたが人並みの壁はビクともしなかった。
そうするうちにドアが閉まる音がした。
「キャッ・・・」
ガクンと大きく揺れて圭子はドアに強く押し付けられた。
身動きも出来ない状態で電車が発車した。
(ああっ・・そ、そんな・・・)
ゆっくりと流れ出すホームの風景を少女は切ない気持ちで見ている。
次の駅に停車するまで決して降りる事が出来ないのだ。
そして圭子は思い出した。
この列車は通勤快速で終点までノンストップである事を。
一瞬空いた車内で圭子の身体は久しぶりに自由を取り戻した。
「ハァー・・・・」
大きく息を吐いた後、素早く反対側のドアに場所を確保するように身体を寄せた。
(良かった・・・これで少しは楽になれる。
さっきはひどかったもの・・・)
四方を囲まれた状態の中央のエリアでは身動きさえ自由にならなかったのである。
女性専用車が出来たせいで普通車両は逆に男ばかりになる事を圭子は知らなかった。
お抱えの運転手が操る父の車で何時も通学しているので、朝の通勤ラッシュには慣れていないのだ。
だから、途中駅での乗り換えで降りた人数以上に、各駅停車の電車から乗り換えてくる数の多い事を忘れていた。
「キャッ・・・」
悲鳴をあげる暇も無く、人の大きな波が襲うように寄せて少女の身体を押しつぶした。
「あぁっ・・・」
柔らかな頬がガラスに密着し、美しい顔が歪む。
「い、いた・・い・・・」
振り絞った力で細い腕をドアと身体の隙間にこじ入れた。
「キャー・・・」
それでも圧倒的な人数は容赦無く圧力をかけてくる。
「あぁ・・あ・・・・」
苦しい時間が続く。
ドアが閉まる寸前に無理にでも乗ろうとする何人かが強引に身体を入れてくる。
駅員も発車させるために力を込めて乗客の身体を押している。
「あぐぅ・・うぅ・・・」
(い、いや・・・く、苦しい・・・)
ほんの二、三分の事なのに圭子にはひどく長く感じた。
こんな体験は初めてだった。
身動きが取れない状態は恐怖に似た切迫感を与える。
ドクン。
その時、血が逆流するように脈打った。
苦しさがピークに達した瞬間、何かが身体の中で弾けたような気がしたのだ。
「あぁっ・・・」
苦痛に歪む少女の唇から切ない声が漏れる。
同時にジーンとした快感が身体を駆けぬけていった。
(な、何・・・この・・変な感じ・・・?)
圭子はその違和感に戸惑いながらも、ある事に気付き始めていた。
(あぁ・・・この・・匂い・・・)
首筋に生暖かい息がかかっている。
生臭いすえたような匂いだった。
そして何よりもタバコのヤニ臭さが強烈に混じっている。
「あぁっ・・・」
圭子は全身の力が抜ける程の衝撃を感じた。
(そ、そんな・・・?)
得体の知れない感覚がジワジワと沸き上がってくる。
それが懐かしく思える程、妖しく少女を誘うのだった。
(だ、だめぇ・・・)
圭子は再び現れようとするイメージを必死になって打ち消そうとしていた。
「うっ・・・くっ・・・」
唇が粘つき、何かを予感している。
(いやっ・・・い・・や・・・)
理性が拒否するのにも関わらす、その感触が鮮明になっていく。
『お前は俺の事が・・・』
声が聞こえ始める。
(ち、違うっ・・・)
首筋に当たる息がむず痒く刺激する。
「うっ・・・うぅっ・・・」
生臭い匂いに頭が痺れていく。
(お、降りなくちゃ・・・)
このままではどうにかなってしまう。
圭子は身をよじって動こうとしたが人並みの壁はビクともしなかった。
そうするうちにドアが閉まる音がした。
「キャッ・・・」
ガクンと大きく揺れて圭子はドアに強く押し付けられた。
身動きも出来ない状態で電車が発車した。
(ああっ・・そ、そんな・・・)
ゆっくりと流れ出すホームの風景を少女は切ない気持ちで見ている。
次の駅に停車するまで決して降りる事が出来ないのだ。
そして圭子は思い出した。
この列車は通勤快速で終点までノンストップである事を。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる