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第三部 守(まもる)と正(ただし)
第五章 沈黙
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【ただし16歳】
【2016年 9月10日】
その日の夜。
高杉家のリビングで。
※※※※※※※※※※※※※※※
「へぇー、そうなの・・・?」
守について楽しそうに話す息子に笑みをこぼした。
どちらかというと口数が少なく、いつもは秋穂の方が多く話すのだが今日は饒舌になっている。
彼とはよほど馬が合うのだろうか、それとも何か良いことがあったのか表情も明るくなったような気がする。
「ふふふ・・・」
嬉しそうに白い歯をこぼす母を見て胸が熱くなる。
守の母についてバストが大きいことを山田のエピソードを交えて話したのだが、ツボに入ったのかいつになく笑い声を上げている。
彼女の美しさにも触れたいが、母さんの方が勝っていると言ってしまいそうで抑え目に話した。
「小宮君のお母様にも会ってみたいわね?」
素直な気持ちで言った。
この土地に引っ越してきて、秋穂も友人を作ろうと思ってはいたが中学校のPTAで知り合った人達も転校したこともあり、ママ友のように仲良くなれるほどではなかった。
パートタイムの仕事先も人の入れ替わりが激しく、事務的な付き合い以外は無い。
守の美少年ぶりから美人だと想像できる。
手前味噌かもしれないが息子の正さんもクールなイケメンだから、きっと話が合うに違いないと思うのだ。
正さんの話によると自分と同様に母一人子一人の母子家庭で、しかも美少年の息子と二人きりの生活について話せたら今の悩みも少しは和らぐ気がするのだけど。
話が一段落すると不意に沈黙が続いた。
食後のコーヒーも飲み終わり、秋穂は後片付けを口実にキッチンに向かった。
胸がドキドキしている。
息子が向ける視線が強く感じたから。
いつになく自信に満ちた表情が、二人の時間を別のものに変えそうで怖くなったのだ。
(母さん・・・)
キッチンカウンター越しに見える母をジッと見つめる。
テーブルで向かい合いながら久しぶりに多く話した。
夜のイタズラの背徳感から最近は会話も途切れ勝ちだったから正は軽い高揚感を得ていたのだ。
だが一瞬、続いた沈黙に思わず母の顔をジッと見つめてしまった。
守も自分と同様に母親に恋しているという事実を知り、後ろめたさが和らいだ気がした正は、いつもと違い視線を外すことなく見つめ続けてしまった。
だからだろうか、母の方が先に目を逸らし逃げるように席を立った。
正はフッと口元を綻ばせた。
何を焦っているのだろうか。
今日は悩みを守と共有できたではないか。
別に母が遠くに逃げて行った訳ではない。
ずっと同じ屋根の下にいるのだ。
そう。
母と自分はずっと一緒に暮らしていく。
大好きな母といつまでも。
「じゃあ、部屋に行ってるね・・・」
ワザと明るい声をかけた。
「おやすみなさい・・・」
秋穂は少しホッとした表情で声を返した。
このまま息子に見つめられていると、どうにかなってしまいそうで怖かったから。
リビングを出ていく後姿を追いながら小さく囁いた。
「あとで・・ね・・・」
やがて訪れる息子との背徳な時間を思い浮かべ、期待と不安が入り混じった笑みをこぼすのだった。
【2016年 9月10日】
その日の夜。
高杉家のリビングで。
※※※※※※※※※※※※※※※
「へぇー、そうなの・・・?」
守について楽しそうに話す息子に笑みをこぼした。
どちらかというと口数が少なく、いつもは秋穂の方が多く話すのだが今日は饒舌になっている。
彼とはよほど馬が合うのだろうか、それとも何か良いことがあったのか表情も明るくなったような気がする。
「ふふふ・・・」
嬉しそうに白い歯をこぼす母を見て胸が熱くなる。
守の母についてバストが大きいことを山田のエピソードを交えて話したのだが、ツボに入ったのかいつになく笑い声を上げている。
彼女の美しさにも触れたいが、母さんの方が勝っていると言ってしまいそうで抑え目に話した。
「小宮君のお母様にも会ってみたいわね?」
素直な気持ちで言った。
この土地に引っ越してきて、秋穂も友人を作ろうと思ってはいたが中学校のPTAで知り合った人達も転校したこともあり、ママ友のように仲良くなれるほどではなかった。
パートタイムの仕事先も人の入れ替わりが激しく、事務的な付き合い以外は無い。
守の美少年ぶりから美人だと想像できる。
手前味噌かもしれないが息子の正さんもクールなイケメンだから、きっと話が合うに違いないと思うのだ。
正さんの話によると自分と同様に母一人子一人の母子家庭で、しかも美少年の息子と二人きりの生活について話せたら今の悩みも少しは和らぐ気がするのだけど。
話が一段落すると不意に沈黙が続いた。
食後のコーヒーも飲み終わり、秋穂は後片付けを口実にキッチンに向かった。
胸がドキドキしている。
息子が向ける視線が強く感じたから。
いつになく自信に満ちた表情が、二人の時間を別のものに変えそうで怖くなったのだ。
(母さん・・・)
キッチンカウンター越しに見える母をジッと見つめる。
テーブルで向かい合いながら久しぶりに多く話した。
夜のイタズラの背徳感から最近は会話も途切れ勝ちだったから正は軽い高揚感を得ていたのだ。
だが一瞬、続いた沈黙に思わず母の顔をジッと見つめてしまった。
守も自分と同様に母親に恋しているという事実を知り、後ろめたさが和らいだ気がした正は、いつもと違い視線を外すことなく見つめ続けてしまった。
だからだろうか、母の方が先に目を逸らし逃げるように席を立った。
正はフッと口元を綻ばせた。
何を焦っているのだろうか。
今日は悩みを守と共有できたではないか。
別に母が遠くに逃げて行った訳ではない。
ずっと同じ屋根の下にいるのだ。
そう。
母と自分はずっと一緒に暮らしていく。
大好きな母といつまでも。
「じゃあ、部屋に行ってるね・・・」
ワザと明るい声をかけた。
「おやすみなさい・・・」
秋穂は少しホッとした表情で声を返した。
このまま息子に見つめられていると、どうにかなってしまいそうで怖かったから。
リビングを出ていく後姿を追いながら小さく囁いた。
「あとで・・ね・・・」
やがて訪れる息子との背徳な時間を思い浮かべ、期待と不安が入り混じった笑みをこぼすのだった。
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