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高校生編
高校生vs大人(1)
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クリスマス、私達大塚家はZINEで美樹ねえ達と通話していた。
『メリークリスマス! みんな元気?』
「元気だよ~。友美も毎年元気だね」
「良いことだ」
「友樹くん、こんばんは」
『こんばんは』
『何を照れてんの。もっと声出しなさい、ほら』
『にゃあ~ん』
『あはは、こしあんがこうだって言ってるよ』
『友美ちゃん、わたし達もやろっ』
『うん』
『にゃあ~ん』
『にゃあ~ん』
『あはは、何してんの二人とも』
ふふ、向こうはこっちより一足早く盛り上がってるな。今年は友美が自宅に友達を招待したんだそうで、その子達とも少しお話しできた。良い友達がたくさんいるみたいで安心したよ。
それにしても友美と友樹、大きくなったなあ。友美はもう小五だしね。去年あたりからグンと背が伸びて今じゃ私の胸くらいまであるかも。
友樹はまだまだちっちゃいけど、それでもやっぱり七歳。来年には初めて友美や父さんに会った頃の私と同い年だよ。ほんと子供の成長って早い。
もちろん私も例外じゃない。
『歩美ちゃん、来年はいよいよ高三だね。受験頑張って』
「ありがとう友にい」
そう、あと半年で十八歳になるのだ。
翌日のお昼前、木村が我が家にやって来た。ママが笑顔で出迎える。
「こんちは、これ、うちのお袋が持ってけって……」
「電話で聞いてるわ、ありがとう木村君」
差し出された紙袋を受け取るママ。何か貰ったらしい。木村とはしばらく顔を合わせてなかったし、お互い忙しくてZINEでのやりとりも減った。私も挨拶くらいしとこうと玄関へ向かうと、ママが木村に手招きしている。
「木村君、お昼まだ? うちは今から食べるとこなの、よかったら一緒にどうぞ」
「え? でも、そんないきなりで用意してもらうのも悪いですし」
「大丈夫。ついうっかり作り過ぎちゃったから、食べてもらえた方が助かるわ」
「はあ……」
そういうことならと上がって来る木村。そこでようやく私の姿に気付く。
「よ、よう、久しぶり」
「おっす」
片手を上げて挨拶されたので、こっちも同じポーズで返す。でもって、ちょっと驚いた。
(こいつ、こんなに背が高かったっけ?)
中学を卒業した頃は私とそんなに変わらなかったはずなのに、いつの間にやらずいぶん見上げないとならなくなっていた。
「おお、木村君か。久しいな」
「押忍、お久しぶりです。お邪魔します」
「うむ、ゆっくりしていってくれ」
頷きつつお皿をちゃぶ台に並べていく父さん。今日のお昼はミートソースのスパゲティ。トマトの香りが食欲を刺激して今にもお腹が鳴りそう。
我慢我慢。
「ねーたん、だれ?」
「どこのひと?」
双子に問われ、私は「お姉ちゃんの友達」と答える。何度か会ってるはずだけど、まあ赤ちゃんだったし覚えてないよね。今もまだ四歳だから次に会ったら忘れてそう。
「おいおい、覚えてくれよ。俺は木村 無限。無限にーちゃんだ。言ってみ?」
「むえんにーちゃ」
「きむら」
「正道は惜しいな。柔はなんでそうなるんだ……」
「きむら」
「はいはい、木村ですよ。もう木村でいいですよ」
諦めて嘆息する木村。あらあらと笑ったママが座布団を敷いて促す。
「どうぞ、ここに座って」
「あ、はい」
恐縮しつつ正座。ママは一旦台所まで戻り、すぐに大皿を運んで戻って来た。
「本当にうっかり分量を間違えちゃって。パスタってどのくらい茹でればいいのかわかりにくいわよね?」
笑顔でドンと木村の前にそれを置くママ。明らかに他の皿より大盛り。私とママの倍の量の父さんと比べても、さらに倍以上盛り付けられている。
体育会系で食が太い木村も、これには流石に怯んだ。
「こ、これは……」
「茹で過ぎたの」
「こんなに、ですか……?」
「もっとあるわよ、足りなかったら言ってね」
「もっと!?」
待ってママ、本当にどんだけ茹でたの? ていうか普段そんなミスしないよね? あとうちで買うパスタって一人前ずつ束ねられてるやつじゃん。
その時、私ははたと気付く。
お昼時を目前にやって来た木村。
そのタイミングで珍しく発生したうっかり。
大量のパスタ。
ママと木村のお母さんは友達。
なんか、悪だくみの気配を感じる……。
「ママ?」
「いただきましょう」
ママは私のジト目を華麗にスルーすると、両手をぱんと合わせた。
「なんかごめんね」
「い、いいって、ことよ……歩いたら、けっこう消化できたし……」
流石はアスリート。私だったらあれだけ食べた後には、そもそも歩くことさえできないだろうな。
私と木村、そして柔と正道は近所の公園まで遊びに来た。子供の頃の私達もよく遊んでいた場所だ。食後一時間も経たないうちに双子が公園で遊びたいと言い出したので二人で付き合うことにした。
「にーちゃん! すべりだい! すべりだいしよ!」
到着するなり木村のズボンをつまんで引っ張る正道。木村は驚く。
「うおっ、力強っ。四歳児ってこんなにパワフルだっけ?」
正道が特殊なだけ。
「こら、兄ちゃんは今おなかいっぱいだから少し休ませてあげなさい。お姉ちゃんが一緒に遊んだげる」
「やだ、にーちゃんがいい!」
「えっ……」
一瞬、言葉を失う私。木村が苦笑しつつ割り込む。
「大丈夫だって、ちょっと動くくらい。ほら行こう正道。歩美は柔ちゃん見ててやれよ」
「あ、うん……じゃあ、任せた」
「すべりだい! にーちゃん、たったまますべれる?」
「おっ、いいねえ。じゃあ、どっちの方がかっこよく滑れるか勝負しようぜ」
「危ないことはさせないでよ!?」
「お、おう!」
あいつ、そのへん信用ならない。子供の頃は危険な遊びばっかしてたもんな。しっかり目を光らせておかなきゃ。
でも──
「きゃはは! きゃはははは!」
「おー、やるじゃん正道! 流石は歩美の弟だ!」
──やっぱり、男同士の方が楽しいのかな。正道、すごい楽しそう。
「ねーね、ぶらんこ」
「あっ」
妹に足を叩かれ我に返る。いけない、しっかりしないと。
「柔はブランコがいいの?」
「うん」
「そっか、じゃあお姉ちゃんが押してあげるね」
「ありがとー」
「ふふ」
可愛いなあ。よーし、こっちは女の子同士で遊ぼうね。
『メリークリスマス! みんな元気?』
「元気だよ~。友美も毎年元気だね」
「良いことだ」
「友樹くん、こんばんは」
『こんばんは』
『何を照れてんの。もっと声出しなさい、ほら』
『にゃあ~ん』
『あはは、こしあんがこうだって言ってるよ』
『友美ちゃん、わたし達もやろっ』
『うん』
『にゃあ~ん』
『にゃあ~ん』
『あはは、何してんの二人とも』
ふふ、向こうはこっちより一足早く盛り上がってるな。今年は友美が自宅に友達を招待したんだそうで、その子達とも少しお話しできた。良い友達がたくさんいるみたいで安心したよ。
それにしても友美と友樹、大きくなったなあ。友美はもう小五だしね。去年あたりからグンと背が伸びて今じゃ私の胸くらいまであるかも。
友樹はまだまだちっちゃいけど、それでもやっぱり七歳。来年には初めて友美や父さんに会った頃の私と同い年だよ。ほんと子供の成長って早い。
もちろん私も例外じゃない。
『歩美ちゃん、来年はいよいよ高三だね。受験頑張って』
「ありがとう友にい」
そう、あと半年で十八歳になるのだ。
翌日のお昼前、木村が我が家にやって来た。ママが笑顔で出迎える。
「こんちは、これ、うちのお袋が持ってけって……」
「電話で聞いてるわ、ありがとう木村君」
差し出された紙袋を受け取るママ。何か貰ったらしい。木村とはしばらく顔を合わせてなかったし、お互い忙しくてZINEでのやりとりも減った。私も挨拶くらいしとこうと玄関へ向かうと、ママが木村に手招きしている。
「木村君、お昼まだ? うちは今から食べるとこなの、よかったら一緒にどうぞ」
「え? でも、そんないきなりで用意してもらうのも悪いですし」
「大丈夫。ついうっかり作り過ぎちゃったから、食べてもらえた方が助かるわ」
「はあ……」
そういうことならと上がって来る木村。そこでようやく私の姿に気付く。
「よ、よう、久しぶり」
「おっす」
片手を上げて挨拶されたので、こっちも同じポーズで返す。でもって、ちょっと驚いた。
(こいつ、こんなに背が高かったっけ?)
中学を卒業した頃は私とそんなに変わらなかったはずなのに、いつの間にやらずいぶん見上げないとならなくなっていた。
「おお、木村君か。久しいな」
「押忍、お久しぶりです。お邪魔します」
「うむ、ゆっくりしていってくれ」
頷きつつお皿をちゃぶ台に並べていく父さん。今日のお昼はミートソースのスパゲティ。トマトの香りが食欲を刺激して今にもお腹が鳴りそう。
我慢我慢。
「ねーたん、だれ?」
「どこのひと?」
双子に問われ、私は「お姉ちゃんの友達」と答える。何度か会ってるはずだけど、まあ赤ちゃんだったし覚えてないよね。今もまだ四歳だから次に会ったら忘れてそう。
「おいおい、覚えてくれよ。俺は木村 無限。無限にーちゃんだ。言ってみ?」
「むえんにーちゃ」
「きむら」
「正道は惜しいな。柔はなんでそうなるんだ……」
「きむら」
「はいはい、木村ですよ。もう木村でいいですよ」
諦めて嘆息する木村。あらあらと笑ったママが座布団を敷いて促す。
「どうぞ、ここに座って」
「あ、はい」
恐縮しつつ正座。ママは一旦台所まで戻り、すぐに大皿を運んで戻って来た。
「本当にうっかり分量を間違えちゃって。パスタってどのくらい茹でればいいのかわかりにくいわよね?」
笑顔でドンと木村の前にそれを置くママ。明らかに他の皿より大盛り。私とママの倍の量の父さんと比べても、さらに倍以上盛り付けられている。
体育会系で食が太い木村も、これには流石に怯んだ。
「こ、これは……」
「茹で過ぎたの」
「こんなに、ですか……?」
「もっとあるわよ、足りなかったら言ってね」
「もっと!?」
待ってママ、本当にどんだけ茹でたの? ていうか普段そんなミスしないよね? あとうちで買うパスタって一人前ずつ束ねられてるやつじゃん。
その時、私ははたと気付く。
お昼時を目前にやって来た木村。
そのタイミングで珍しく発生したうっかり。
大量のパスタ。
ママと木村のお母さんは友達。
なんか、悪だくみの気配を感じる……。
「ママ?」
「いただきましょう」
ママは私のジト目を華麗にスルーすると、両手をぱんと合わせた。
「なんかごめんね」
「い、いいって、ことよ……歩いたら、けっこう消化できたし……」
流石はアスリート。私だったらあれだけ食べた後には、そもそも歩くことさえできないだろうな。
私と木村、そして柔と正道は近所の公園まで遊びに来た。子供の頃の私達もよく遊んでいた場所だ。食後一時間も経たないうちに双子が公園で遊びたいと言い出したので二人で付き合うことにした。
「にーちゃん! すべりだい! すべりだいしよ!」
到着するなり木村のズボンをつまんで引っ張る正道。木村は驚く。
「うおっ、力強っ。四歳児ってこんなにパワフルだっけ?」
正道が特殊なだけ。
「こら、兄ちゃんは今おなかいっぱいだから少し休ませてあげなさい。お姉ちゃんが一緒に遊んだげる」
「やだ、にーちゃんがいい!」
「えっ……」
一瞬、言葉を失う私。木村が苦笑しつつ割り込む。
「大丈夫だって、ちょっと動くくらい。ほら行こう正道。歩美は柔ちゃん見ててやれよ」
「あ、うん……じゃあ、任せた」
「すべりだい! にーちゃん、たったまますべれる?」
「おっ、いいねえ。じゃあ、どっちの方がかっこよく滑れるか勝負しようぜ」
「危ないことはさせないでよ!?」
「お、おう!」
あいつ、そのへん信用ならない。子供の頃は危険な遊びばっかしてたもんな。しっかり目を光らせておかなきゃ。
でも──
「きゃはは! きゃはははは!」
「おー、やるじゃん正道! 流石は歩美の弟だ!」
──やっぱり、男同士の方が楽しいのかな。正道、すごい楽しそう。
「ねーね、ぶらんこ」
「あっ」
妹に足を叩かれ我に返る。いけない、しっかりしないと。
「柔はブランコがいいの?」
「うん」
「そっか、じゃあお姉ちゃんが押してあげるね」
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