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高校生編
大塚家vs遊園地(3)
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お昼になり、私達は予定通りアイムくん像の前で合流した。ちなみにアイムくんはこの遊園地のマスコットキャラクターでデフォルメされた狼だよ。狼っていうか、造形的にはわんこだね。
それからレストランに移動したんだけど、流石はゴールデンウィーク。凄い混雑。結局出てきた頃には午後二時近くになっていて、みんな疲れちゃった。
「これから絶叫系は辛いわね」
「そもそも美樹ちゃんは、午前中だけでほとんど制覇したじゃないか」
「私達も興味があるのはだいたい回っちゃったね」
「お化け屋敷は友美ちゃんも友樹君も嫌だって言うしな」
「だって怖いもん」
「うん」
絶叫系は平気なのに……友美はホラーだと駄目なのか。
「お化け屋敷なら俺と正道は入ったぞ」
「どうだった?」
「かなりのものだった。苦手ならやめておいた方がいい」
「そっかあ」
父さんがそう言うなら、友美達を連れてくのはやめとこう。
「じゃあもう観覧車に乗る?」
観覧車は遊園地の締めって感じがする。だからまだ誰も乗ってない。でも、ママがあることに気が付いた。
「あら? ちょうど二時からヒーローショーがあるみたいよ」
「えっ」
「オニニンジャー!?」
反応したのは友樹と正道。でもママは首を左右に振る。
「ううん、アクマジョ戦隊だって」
「ええー」
「なんだあ」
「アクマジョ!?」
「見る!」
がっかりする男の子達とは逆に、今度は友美と柔が前のめりになる。アクマジョ戦隊は友美の大好きな悪の魔女シリーズの主人公達が一堂に集う魔法少女もののアニメ。なんとヒロイン一〇八人という恐るべき作品だ。
「流石に一〇八人全員はいないよね……?」
「そんなにいたらステージで身動き取れなくなるでしょ」
「そりゃそうだ」
美樹ねえの言葉に謎の安心感を覚える私。ともかく、友美と柔がすっかりその気だから次の目的地は決まった。
「じゃあ今度は、みんなでアクマジョを見に行こう!」
「おう!」
「あ、あれは……」
「どう見ても……」
「ふむ」
ショーが始まるなり、何故か渋面になった娘と木村君の様子に眉をひそめる俺。膝の上では柔がアクマジョ達に力強い声援を送っておる。
「がんばれー! スズラン! ヒナゲシ!」
普段大人しい柔からは想像できんほどの声量だ。お前、そんな声を出せたのだな。
それはともかく、俺は歩美に問いかけてみる。
「どうした?」
「いや、ほら、あそこの司会の人いるじゃん……」
「あのアクマジョにも負けん派手な娘か」
服装も華美だ。最初はアクマジョの一人かと思ったがマイクを持って喋り始めた時点でそうではないと気付いた。どうも遊園地のスタッフらしい。
「あれ、木村のいとこ……」
「なんと」
奇遇なこともあるものだ。この様子から察するに、木村君も知らんかったらしい。
「本業ってこれかよ……」
「びっくりだね……」
単に驚いたという表情ではないが、何故か深く問い質してはならん気がする。
件の少女はフリフリヒラヒラのドレスの裾を翻し、クルリとターンしながらウインクを決めてみせた。主役達より目立っておらんか?
「みんなー! アクマジョを応援してあげてね! キラッ☆」
──ショーが終わって午後三時。やっぱり最後には観覧車に乗って帰ろうということになり、皆で移動。
ここでまたグループ分けを変更。父さんはでかいのでママと時雨さんだけ同乗。代理として私と木村で双子を引き受ける。夏ノ日家は全員で同じゴンドラ。
「すいません、私までご一緒してしまって」
「遠慮なさるな、我等はすでに兄妹も同然」
「そうよ時雨さん」
「はい……」
まず、父さん達が出発。あの三人なら何の心配もいらないな。
「観覧車かあ、のんびりしててちょっと苦手かも」
「まあまあ、そう言わず」
「ママ、ここからうち見える?」
「友樹、地球は丸いし、大気が光を遮るから、ここからだとどうやってもうちは見えないんだよ」
友美は小難しい講釈を垂れながら友樹の手を引いて乗り込んで行った。年々美樹ねえに似て来る。
まあ、あの一家も心配無用。
問題は──
「だ、大丈夫なのか歩美?」
「ねーね、たかいのこわいの?」
「やめる?」
「だ、大丈夫。外さえ見なければ、平気、だから……」
楽しみにしている弟と妹の手前、今さらやめたなんて言えるはずがない。意を決して中に入った私はすぐに席に座った。隣には木村。
「ま、正道、柔、おとなしく──」
「わあああああああああああああっ! どんどんたかくなってく!」
「すごいすごい!」
ぎゃああああああああああああああああああっ!? 跳ねるな、揺らすな正道!
「安心しろ」
「あっ……」
木村が肩を抱いてくれた。
「オレがついてる」
「うん……」
高所恐怖症のドキドキが別のそれで上書きされてく。なるほど、恋愛物の漫画なんかでみんなが観覧車に乗るわけだね。一緒にいる相手次第で、怖いは簡単に好きに変換されるんだ。
「ねーちゃん、かおまっかー」
「きむりゃもまっかー」
「すっ、好きな人といる時は、そういうもんだ」
双子にからかわれても、木村は馬鹿正直な答えを返す。そうだね、嘘は良くない。
「そういうこと、お姉ちゃんもこの人が大好きなの」
「歩美……」
「正道と柔も、そのうちわかるよ」
「えー、わかんない」
「ねえちゃん、おれよりきむりゃがすきなの?」
「あはは、そんなことない。ほら、おいで」
私は正道と柔をだっこした。この子達に対するときめきも恐怖を和らげてくれる。でも同じじゃない。
恋人と 家族のそれは 別物です
(いつかは、木村も家族になるのかもしれないけどね)
「ねーね」
「ねーちゃん」
「ははっ、可愛いな」
「だろ?」
まあ、まだしばらくは別腹ってことで。私はゴンドラが一周するまでずっと木村の腕の中で弟と妹を抱いていた。
それからレストランに移動したんだけど、流石はゴールデンウィーク。凄い混雑。結局出てきた頃には午後二時近くになっていて、みんな疲れちゃった。
「これから絶叫系は辛いわね」
「そもそも美樹ちゃんは、午前中だけでほとんど制覇したじゃないか」
「私達も興味があるのはだいたい回っちゃったね」
「お化け屋敷は友美ちゃんも友樹君も嫌だって言うしな」
「だって怖いもん」
「うん」
絶叫系は平気なのに……友美はホラーだと駄目なのか。
「お化け屋敷なら俺と正道は入ったぞ」
「どうだった?」
「かなりのものだった。苦手ならやめておいた方がいい」
「そっかあ」
父さんがそう言うなら、友美達を連れてくのはやめとこう。
「じゃあもう観覧車に乗る?」
観覧車は遊園地の締めって感じがする。だからまだ誰も乗ってない。でも、ママがあることに気が付いた。
「あら? ちょうど二時からヒーローショーがあるみたいよ」
「えっ」
「オニニンジャー!?」
反応したのは友樹と正道。でもママは首を左右に振る。
「ううん、アクマジョ戦隊だって」
「ええー」
「なんだあ」
「アクマジョ!?」
「見る!」
がっかりする男の子達とは逆に、今度は友美と柔が前のめりになる。アクマジョ戦隊は友美の大好きな悪の魔女シリーズの主人公達が一堂に集う魔法少女もののアニメ。なんとヒロイン一〇八人という恐るべき作品だ。
「流石に一〇八人全員はいないよね……?」
「そんなにいたらステージで身動き取れなくなるでしょ」
「そりゃそうだ」
美樹ねえの言葉に謎の安心感を覚える私。ともかく、友美と柔がすっかりその気だから次の目的地は決まった。
「じゃあ今度は、みんなでアクマジョを見に行こう!」
「おう!」
「あ、あれは……」
「どう見ても……」
「ふむ」
ショーが始まるなり、何故か渋面になった娘と木村君の様子に眉をひそめる俺。膝の上では柔がアクマジョ達に力強い声援を送っておる。
「がんばれー! スズラン! ヒナゲシ!」
普段大人しい柔からは想像できんほどの声量だ。お前、そんな声を出せたのだな。
それはともかく、俺は歩美に問いかけてみる。
「どうした?」
「いや、ほら、あそこの司会の人いるじゃん……」
「あのアクマジョにも負けん派手な娘か」
服装も華美だ。最初はアクマジョの一人かと思ったがマイクを持って喋り始めた時点でそうではないと気付いた。どうも遊園地のスタッフらしい。
「あれ、木村のいとこ……」
「なんと」
奇遇なこともあるものだ。この様子から察するに、木村君も知らんかったらしい。
「本業ってこれかよ……」
「びっくりだね……」
単に驚いたという表情ではないが、何故か深く問い質してはならん気がする。
件の少女はフリフリヒラヒラのドレスの裾を翻し、クルリとターンしながらウインクを決めてみせた。主役達より目立っておらんか?
「みんなー! アクマジョを応援してあげてね! キラッ☆」
──ショーが終わって午後三時。やっぱり最後には観覧車に乗って帰ろうということになり、皆で移動。
ここでまたグループ分けを変更。父さんはでかいのでママと時雨さんだけ同乗。代理として私と木村で双子を引き受ける。夏ノ日家は全員で同じゴンドラ。
「すいません、私までご一緒してしまって」
「遠慮なさるな、我等はすでに兄妹も同然」
「そうよ時雨さん」
「はい……」
まず、父さん達が出発。あの三人なら何の心配もいらないな。
「観覧車かあ、のんびりしててちょっと苦手かも」
「まあまあ、そう言わず」
「ママ、ここからうち見える?」
「友樹、地球は丸いし、大気が光を遮るから、ここからだとどうやってもうちは見えないんだよ」
友美は小難しい講釈を垂れながら友樹の手を引いて乗り込んで行った。年々美樹ねえに似て来る。
まあ、あの一家も心配無用。
問題は──
「だ、大丈夫なのか歩美?」
「ねーね、たかいのこわいの?」
「やめる?」
「だ、大丈夫。外さえ見なければ、平気、だから……」
楽しみにしている弟と妹の手前、今さらやめたなんて言えるはずがない。意を決して中に入った私はすぐに席に座った。隣には木村。
「ま、正道、柔、おとなしく──」
「わあああああああああああああっ! どんどんたかくなってく!」
「すごいすごい!」
ぎゃああああああああああああああああああっ!? 跳ねるな、揺らすな正道!
「安心しろ」
「あっ……」
木村が肩を抱いてくれた。
「オレがついてる」
「うん……」
高所恐怖症のドキドキが別のそれで上書きされてく。なるほど、恋愛物の漫画なんかでみんなが観覧車に乗るわけだね。一緒にいる相手次第で、怖いは簡単に好きに変換されるんだ。
「ねーちゃん、かおまっかー」
「きむりゃもまっかー」
「すっ、好きな人といる時は、そういうもんだ」
双子にからかわれても、木村は馬鹿正直な答えを返す。そうだね、嘘は良くない。
「そういうこと、お姉ちゃんもこの人が大好きなの」
「歩美……」
「正道と柔も、そのうちわかるよ」
「えー、わかんない」
「ねえちゃん、おれよりきむりゃがすきなの?」
「あはは、そんなことない。ほら、おいで」
私は正道と柔をだっこした。この子達に対するときめきも恐怖を和らげてくれる。でも同じじゃない。
恋人と 家族のそれは 別物です
(いつかは、木村も家族になるのかもしれないけどね)
「ねーね」
「ねーちゃん」
「ははっ、可愛いな」
「だろ?」
まあ、まだしばらくは別腹ってことで。私はゴンドラが一周するまでずっと木村の腕の中で弟と妹を抱いていた。
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