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高校生編
少年vs彼女の友達
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白百合市の駅前にあるオシャレな喫茶店。オレみたいな体育会系男子にはおよそ縁遠いこの場所で、オレこと木村 無限は窮地に追い込まれていた。
「ねえねえねえ、それでさ、歩美ちゃんとはどんなデートしてんの?」
「君、ちゃんと大塚君の好みを把握してるのかい? 僕が知ってる限りのことをメモしておいたから参考にするといい。礼には及ばない。彼女の幸せは僕の幸せなのさ」
「この方が大塚さんの……? こう言ってはなんですが、意外ですこと。いえ、もちろん好みは人それぞれですけれど」
「うらやましいうらやましいうらやましいうらやましい……」
「最悪のタイミングで来たわね、あんた」
同じテーブルに六人。オレ以外全員女子。正面に三人。左右もがっちり固められていて逃げ場は無い。救援を呼ぶためのスマホも素早く取り上げられてしまった。
だらだらだら。汗が流れ落ちる。落ち着け、落ち着けオレ。こういう状況には慣れてるはずだ。まずは落ち着け。
そうだ、何人かは初対面──というわけでもないが、ほとんど話したこともない相手だ。挨拶はコミュニケーションの基本。まずは自己紹介から始めよう。
「あ、あの、木村 無限です。歩美の彼氏の」
オレがそう名乗ると、背の低い小学生みたいな子がヒューッと口笛を吹く。
「いいねえ、堂々とそう名乗れるなんて男らしいよ」
「ええ、一ポイント差し上げます」
「ど、どうも……」
なんのポイントだよ? 眉をひそめたオレに対し、まず左右にいる二人──小柄な子と、逆に長身のイケメン女子が名乗り返す。
「彼方 千里です、よろしくねっ」
「僕は御剣 勇花。よろしく」
あ、二人とも知ってるぞ。
「たしか新聞部と生徒会長……だっけ?」
「そうそう。わたし、今は新聞部部長」
「大塚君から聞いてたのかな?」
「うん」
どっちも高校に入ってからよく聞くようになった名前だ。歩美とはずいぶん仲良くしてくれているらしい。
オレは改めて頭を下げた。
「いつも歩美がお世話になっています」
「いやー、どちらかというとわたし達がお世話されてる側かなー。特に勇花ちゃんは」
「そうですね、歴代で最も頼りない会長と呼ばれていますものね」
と、話に割り込んで来たのは対面の席右側に座った縦ロールのお嬢様。この人も誰だかわかりやすい。
「あの、高徳院さん……ですか?」
「ええ、その通り。高徳院 舞と申します」
「やっぱり」
確認が取れたところで立ち上がるオレ。この人には特に失礼の無いようにしねえと。
「歩美のこと、よろしくお願いします!」
深々と頭を下げる。突然のオレの行動に驚き、振り返る店内の人々。しかし流石は本物の令嬢。高徳院さんは全く動じず鷹揚に頷き返す。
「ええ、お任せください。彼女はしっかりしているように見えて、どこか抜けてもいますからね。あなたの代わりに近くで見守ります。もちろん、お互い志望校に合格できたらの話ですが」
「あ、そうですね……まだ気が早いか、はは」
歩美のやつ、合格できたらこの人とシェアハウスして暮らすらしい。そのうちオレにも紹介するって言ってたけど一足先に顔合わせしちまったな。
「まあ心配なのは、どちらかというと高徳院さんだけどね」
「こないだの模試の判定、Cだっけ?」
「五分五分じゃん」
「うっ……」
意外にも成績の良い方じゃないらしい。それとも志望校がそれだけ難関なのか? 他の面々に指摘されてたじろぐ彼女。
すると、その隣、つまりオレの真正面に座っている天敵がようやく口を開く。
「で? アンタなんであんなところにいたのよ?」
榛 沙織。小学校入学前からの腐れ縁。
「いや、今日は高校も道場も練習が無くて暇だったから、せっかくだし歩美の顔を見ようかなと……サプライズを兼ねて」
それで、まだ歩美の学校も見たこと無いなと思ったもんだから電車で一時間かけて来て、校門前で待っていたら、歩美より先に沙織達に見つかってここまで強引に連れて来られたというわけである。
オレの説明に沙織は長いため息をつく。
「あのねえ、あゆゆは忙しいの。会いに来るなとは言わないけど、事前の連絡はちゃんと入れときなさい。あのままじゃあんたあの場所でずっと待ってる羽目になったわよ。その厳つい外見じゃ通報されかねないわ」
「あっ、なるほど」
言われてみるとたしかにそうだ。歩美に会うことばかり考えてて、そこまでは気が回らなかった。
「すまん、助かった」
「あの子、生徒会の仕事で他のメンバーと学校に残ってるから出て来る時に連絡してって一緒にいる二人に頼んどいた。とりあえずここで時間潰すわよ」
「ああ、ありがとう」
感謝しつつ、しかし内心で首を傾げるオレ。どうも最近の沙織は話してると調子が狂う。前はあんなにオレと歩美の交際に反対してたのに。
同じことを、その沙織の左に座っているやつも思ったらしい。恨みがましい目を向ける。
「おかしいですよバミさん……どうして、なんでそんなに冷静でいられるんですか。私達の大塚先輩が、よりにもよって木村先輩にとられたのに!」
よりにもよってって……。
日ノ打 鼓拍。こいつは相変わらずオレへの当たりが強い。
「バミさんだって昔はあんなに反対してたのに!」
「まあ落ち着け」
「もがっ」
沙織は自分で注文したパンケーキを鼓拍の口に突っ込んだ。さっきから一向に手を付けないと思ったらこのためだったのか。
「たしかにあたしも『よりにもよって木村か!』とは思ったわ」
思ったのかよ。いやまあ、お前の場合そっちの方が妙に安心するけど。
「でも、結局あゆゆ次第なのよ。あの子が自分で選んだ相手にあたしらが文句を言っても、誰も得しない。あゆゆとこいつの関係も、あの子とあたし達の関係もこじれるだけ。この馬鹿が馬脚を現わさない限りはね」
むっ、流石にカチンときた。
「オレは何も隠し事なんかしてねえよ」
「別に隠し事とは言ってない。あゆゆがあんたの欠点に気付けていないだけ。今日だってあたしらがフォローしてやんなきゃ恥かかせてたところじゃない」
「そ、それは……」
「だからさコハ、もう少し長い目で見守ってやんなさい。あゆゆがこいつに愛想を尽かす可能性もあるんだし」
「むう~」
もぐもぐとパンケーキを咀嚼しながら唸る鼓拍。
つうかお前ら二人とも彼氏いるじゃねえか。オレがとやかく言われる筋合いなんか無いと思うんだが?
とはいえ、この状況で下手に反抗するのも怖い。オレは喉元まで出かかったその言葉を飲み込んだ。
すると──
「はい、というわけで自己紹介は終わり! じゃあ改めて訊くね、歩美ちゃんと木村君のなれそめから最近のデートの内容まで、くわしくおせーて! あっだいじょうぶ、個人的に興味があるだけ! 記事になんかしないよっ!」
「僕は友達を紹介して欲しいかなあ。体育会系の男子もいいよね」
「木村さん、ご両親はどのようなお仕事を? いえ、それよりあなた自身はどのような道へ進むおつもりで? 大塚さんが鏡矢の血に連なることはご存知ですか?」
再び始まる質問責め。沙織と鼓拍は我関せずとばかりに二人だけで話し合ってる。今度は助けてくれるつもりは無いようだ。
「背え高いよねー! 身長どのくらい? 柔道で全国二位になったんでしょ!? すっごいよねー!!」
「し、身長は一八七で、あの、ちょっ……」
あ、歩美! 早く来てくれー!
やれやれ、目前に迫った体育祭に関する打ち合わせですっかり遅くなっちゃった。もう外が暗いよ。
「ごめんね美浜さん、澤さん、こんな時間まで付き合ってもらって」
「私達も生徒会の一員だ、気にするな」
「そうですよ、もっと頼ってください副会長」
「うん、ありがとう」
そうだね、どうも私は自分でできることなら全部自分でやっちゃおうって傾向があるし、改めないといけないな。前にも同じことを反省したのに進歩が無い。
「それじゃあ、私達はここで」
「また明日」
「うん、また明日!」
校門の前で別れる私達。すると、そのタイミングで予想外の姿が現れた。
「よ、よう」
「えっ? 木村?」
なんでここに!? いや、それより──
「なんか……妙に疲れてない?」
「はは、まあ、色々あって……」
かしましく 根掘り葉掘りを 訊ねられ
「お前って人気あるよな……」
「はあ?」
「とりあえず帰ろうぜ。家まで送るよ」
「あ、ありがと」
なんだかよくわからないけど初めての彼氏との下校だ。一生無いかもって思ってたから、嬉しいな。
「ねえねえねえ、それでさ、歩美ちゃんとはどんなデートしてんの?」
「君、ちゃんと大塚君の好みを把握してるのかい? 僕が知ってる限りのことをメモしておいたから参考にするといい。礼には及ばない。彼女の幸せは僕の幸せなのさ」
「この方が大塚さんの……? こう言ってはなんですが、意外ですこと。いえ、もちろん好みは人それぞれですけれど」
「うらやましいうらやましいうらやましいうらやましい……」
「最悪のタイミングで来たわね、あんた」
同じテーブルに六人。オレ以外全員女子。正面に三人。左右もがっちり固められていて逃げ場は無い。救援を呼ぶためのスマホも素早く取り上げられてしまった。
だらだらだら。汗が流れ落ちる。落ち着け、落ち着けオレ。こういう状況には慣れてるはずだ。まずは落ち着け。
そうだ、何人かは初対面──というわけでもないが、ほとんど話したこともない相手だ。挨拶はコミュニケーションの基本。まずは自己紹介から始めよう。
「あ、あの、木村 無限です。歩美の彼氏の」
オレがそう名乗ると、背の低い小学生みたいな子がヒューッと口笛を吹く。
「いいねえ、堂々とそう名乗れるなんて男らしいよ」
「ええ、一ポイント差し上げます」
「ど、どうも……」
なんのポイントだよ? 眉をひそめたオレに対し、まず左右にいる二人──小柄な子と、逆に長身のイケメン女子が名乗り返す。
「彼方 千里です、よろしくねっ」
「僕は御剣 勇花。よろしく」
あ、二人とも知ってるぞ。
「たしか新聞部と生徒会長……だっけ?」
「そうそう。わたし、今は新聞部部長」
「大塚君から聞いてたのかな?」
「うん」
どっちも高校に入ってからよく聞くようになった名前だ。歩美とはずいぶん仲良くしてくれているらしい。
オレは改めて頭を下げた。
「いつも歩美がお世話になっています」
「いやー、どちらかというとわたし達がお世話されてる側かなー。特に勇花ちゃんは」
「そうですね、歴代で最も頼りない会長と呼ばれていますものね」
と、話に割り込んで来たのは対面の席右側に座った縦ロールのお嬢様。この人も誰だかわかりやすい。
「あの、高徳院さん……ですか?」
「ええ、その通り。高徳院 舞と申します」
「やっぱり」
確認が取れたところで立ち上がるオレ。この人には特に失礼の無いようにしねえと。
「歩美のこと、よろしくお願いします!」
深々と頭を下げる。突然のオレの行動に驚き、振り返る店内の人々。しかし流石は本物の令嬢。高徳院さんは全く動じず鷹揚に頷き返す。
「ええ、お任せください。彼女はしっかりしているように見えて、どこか抜けてもいますからね。あなたの代わりに近くで見守ります。もちろん、お互い志望校に合格できたらの話ですが」
「あ、そうですね……まだ気が早いか、はは」
歩美のやつ、合格できたらこの人とシェアハウスして暮らすらしい。そのうちオレにも紹介するって言ってたけど一足先に顔合わせしちまったな。
「まあ心配なのは、どちらかというと高徳院さんだけどね」
「こないだの模試の判定、Cだっけ?」
「五分五分じゃん」
「うっ……」
意外にも成績の良い方じゃないらしい。それとも志望校がそれだけ難関なのか? 他の面々に指摘されてたじろぐ彼女。
すると、その隣、つまりオレの真正面に座っている天敵がようやく口を開く。
「で? アンタなんであんなところにいたのよ?」
榛 沙織。小学校入学前からの腐れ縁。
「いや、今日は高校も道場も練習が無くて暇だったから、せっかくだし歩美の顔を見ようかなと……サプライズを兼ねて」
それで、まだ歩美の学校も見たこと無いなと思ったもんだから電車で一時間かけて来て、校門前で待っていたら、歩美より先に沙織達に見つかってここまで強引に連れて来られたというわけである。
オレの説明に沙織は長いため息をつく。
「あのねえ、あゆゆは忙しいの。会いに来るなとは言わないけど、事前の連絡はちゃんと入れときなさい。あのままじゃあんたあの場所でずっと待ってる羽目になったわよ。その厳つい外見じゃ通報されかねないわ」
「あっ、なるほど」
言われてみるとたしかにそうだ。歩美に会うことばかり考えてて、そこまでは気が回らなかった。
「すまん、助かった」
「あの子、生徒会の仕事で他のメンバーと学校に残ってるから出て来る時に連絡してって一緒にいる二人に頼んどいた。とりあえずここで時間潰すわよ」
「ああ、ありがとう」
感謝しつつ、しかし内心で首を傾げるオレ。どうも最近の沙織は話してると調子が狂う。前はあんなにオレと歩美の交際に反対してたのに。
同じことを、その沙織の左に座っているやつも思ったらしい。恨みがましい目を向ける。
「おかしいですよバミさん……どうして、なんでそんなに冷静でいられるんですか。私達の大塚先輩が、よりにもよって木村先輩にとられたのに!」
よりにもよってって……。
日ノ打 鼓拍。こいつは相変わらずオレへの当たりが強い。
「バミさんだって昔はあんなに反対してたのに!」
「まあ落ち着け」
「もがっ」
沙織は自分で注文したパンケーキを鼓拍の口に突っ込んだ。さっきから一向に手を付けないと思ったらこのためだったのか。
「たしかにあたしも『よりにもよって木村か!』とは思ったわ」
思ったのかよ。いやまあ、お前の場合そっちの方が妙に安心するけど。
「でも、結局あゆゆ次第なのよ。あの子が自分で選んだ相手にあたしらが文句を言っても、誰も得しない。あゆゆとこいつの関係も、あの子とあたし達の関係もこじれるだけ。この馬鹿が馬脚を現わさない限りはね」
むっ、流石にカチンときた。
「オレは何も隠し事なんかしてねえよ」
「別に隠し事とは言ってない。あゆゆがあんたの欠点に気付けていないだけ。今日だってあたしらがフォローしてやんなきゃ恥かかせてたところじゃない」
「そ、それは……」
「だからさコハ、もう少し長い目で見守ってやんなさい。あゆゆがこいつに愛想を尽かす可能性もあるんだし」
「むう~」
もぐもぐとパンケーキを咀嚼しながら唸る鼓拍。
つうかお前ら二人とも彼氏いるじゃねえか。オレがとやかく言われる筋合いなんか無いと思うんだが?
とはいえ、この状況で下手に反抗するのも怖い。オレは喉元まで出かかったその言葉を飲み込んだ。
すると──
「はい、というわけで自己紹介は終わり! じゃあ改めて訊くね、歩美ちゃんと木村君のなれそめから最近のデートの内容まで、くわしくおせーて! あっだいじょうぶ、個人的に興味があるだけ! 記事になんかしないよっ!」
「僕は友達を紹介して欲しいかなあ。体育会系の男子もいいよね」
「木村さん、ご両親はどのようなお仕事を? いえ、それよりあなた自身はどのような道へ進むおつもりで? 大塚さんが鏡矢の血に連なることはご存知ですか?」
再び始まる質問責め。沙織と鼓拍は我関せずとばかりに二人だけで話し合ってる。今度は助けてくれるつもりは無いようだ。
「背え高いよねー! 身長どのくらい? 柔道で全国二位になったんでしょ!? すっごいよねー!!」
「し、身長は一八七で、あの、ちょっ……」
あ、歩美! 早く来てくれー!
やれやれ、目前に迫った体育祭に関する打ち合わせですっかり遅くなっちゃった。もう外が暗いよ。
「ごめんね美浜さん、澤さん、こんな時間まで付き合ってもらって」
「私達も生徒会の一員だ、気にするな」
「そうですよ、もっと頼ってください副会長」
「うん、ありがとう」
そうだね、どうも私は自分でできることなら全部自分でやっちゃおうって傾向があるし、改めないといけないな。前にも同じことを反省したのに進歩が無い。
「それじゃあ、私達はここで」
「また明日」
「うん、また明日!」
校門の前で別れる私達。すると、そのタイミングで予想外の姿が現れた。
「よ、よう」
「えっ? 木村?」
なんでここに!? いや、それより──
「なんか……妙に疲れてない?」
「はは、まあ、色々あって……」
かしましく 根掘り葉掘りを 訊ねられ
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