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高校生編
娘と卒業と旅立ちと(2)
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「一年の時と言えば、七不思議ツアーなんてやったね」
「ああ、あれ……まさかあんな大事件になるとは」
「そうそう、歩美ちゃんのお布団から行方不明の子が出て来た!」
「あはは……」
地面に座って車座になり、夢の中で思い出を語る私達。私が正道をだっこ、勇花さんは柔をだっこ。千里ちゃんはカメラで記録した写真を順に見せてくれる。これ実際には私の記憶の断片なのかな。
夢だから周りの景色なんて曖昧。真っ暗になったり真っ白になったり、思い出話の中の風景が反映されたり。
不意に、正道がそんな過去の光景を指差す。
「わんわん!」
「あー、学校に犬が迷い込んで来たやつかー」
「しかもドーベルマンね」
「かっこいー」
「お、正道くんは平気なんだ?」
「こわい」
「柔ちゃんは苦手みたいだね」
自分にしがみついて来た柔の背をとんとん叩く勇花さん。そうだよ、双子だって性格は全然違うんだ。奥深いでしょ?
「──まったく、あの犬の時には肝を冷やしました」
「あれ? いつの間に」
ふと気が付くと舞さんも私と千里ちゃんの間に座っていた。まあ夢だからね。
「大塚は時々無茶するからな」
「美浜さんが言う?」
やっぱり突然現れる美浜さん。位置は私と勇花さんの間。若干勇花さん寄り。
「あの時は美浜さんだって大立ち回りしたじゃん」
「まったくです! わたくしがどれだけ心配したと思っているの!?」
「夢の中だと素直だね、舞ちゃん」
勇花さんと千里ちゃんの間に現れ笑う澤さん。たしかに普段の舞さんならこんな素直なこと言わないよ。流石は幼馴染、よく知ってる。
「絵里香、余計なことを言わない! ほら見なさい、八千代がまた余裕ぶった表情でわたくしを見ていますわ! その優しい眼差しはおやめなさい! わたくしの方が目上の立場なのでしてよ!」
あ、そうそう。美浜家と澤家は昔から高徳院家に仕えて来たらしい。
でも──
「ふん! とはいえ、そんな旧いしがらみ知ったことではありません! 貴女達は二人共わたくしにとって単なる友! それ以上にも以下にもなりませんのよ!」
そう、こっちが正しい高徳院さんだ。さっきのは出会ったばかりの頃のイメージが反映された発言。
高徳院さんが私に何かと絡んでくるようになったのは、あの七不思議ツアーの直後から。それまで鏡矢の血を引く人間がいるとは知らなかったらしいんだ。クラスも違ったし。
ただ、あの一件の後始末で何度か雫さんと時雨さんがうちの学校に来たんだよ。その時に私のことを知ったらしくて、それで会いに来てくれた。
なんで“来てくれた”なのかと言うと──
「柔ちゃん、あの人はね、柔ちゃんのお姉ちゃんが心配だったんだよ」
「見た目と違って優しい人だから安心してね」
「素直じゃないだけなの」
三人揃ってうちの妹に舞さんは無害だと吹き込む澤さん、勇花さん、美浜さん。舞さんの前から手を伸ばし、千里ちゃんも正道に写真を渡す。
「正道くんも見て見て、この写真。うちのクラスはコスプレ喫茶で舞ちゃんとこはお化け屋敷。びみょーにネタ被りしちゃったんだけどさ、そのことを文化祭当日になって抗議に来たかと思うと、君のお姉ちゃんと自分のコスがどっちもミイラだってわかった途端機嫌を直してニヨニヨ。お揃いで嬉しかったんだねー」
「ほんとだ、わらってる」
「あ、あなたたちね……」
舞さんの額に青筋が浮かぶ。このままだと癇癪を起こしちゃいそうなんで、私は素早くその手を掴んだ。
「あのさ」
「なっ、なんです!?」
私は彼女の目を見つめ、現実だとなかなか言えないことを口に出す。
「ありがとう」
「大塚さん……」
──舞さんは私を心配してくれたんだ。
この人がうちの学校に入学した理由は、お兄さんがいたから。どうしても前会長と一緒に高校生活を過ごしたくて親御さんに無理言って進路を変えさせてもらった。
でも、中学までは美浜さん澤さんと一緒に全寮制の女子校に通っていた。なので最初は一般的な学校に馴染めずにいたという。
そんな時に鏡矢家の血を引く子が通っていると知り、不安になった。上手くやれてるのだろうか? 自分と同じで浮いてしまっているのでは?
それで心配して見に来てくれたってのが私達の出会い。自分だって大変だったのに見ず知らずの他人にお節介を焼こうとしたんだよ。そういう人なの。
「私、大学でも何も心配してないよ。皆とは違う進路になっちゃったけど、それでもすぐ近くに舞さんがいてくれるから」
「……ふふ、これはあくまで夢。だから現実のわたくしも同じとは限りませんが、あえて言わせていただきます。同意見ですわ。わたくしも初めて八千代や絵里香と離れる。それでも家に帰れば大塚さんには会える。心強い限りです」
「うん。東京でもよろしく」
「こちらこそ」
微笑み合い、改めて握手を交わす私達。すると周りの皆が一斉に拍手してくれた。
ところが、繋いだ手にチョップが振り下ろされる。
「ていっ」
「あ」
「何しますの!?」
「おしまいおしまい、離れて離れて」
「むぎゅう」
割り込んで来るさおちゃん。舞さんを引き離し、私と肩を組んでべーっと舌を出す。
「ここはあたしの定位置。いくら高徳院さんでも譲れないね」
「じゃあ反対側は私がもらいまーっす!」
左手を掴み、腕を組む鼓拍ちゃん。
「オレ達は……」
「蚊帳の外」
しくしく泣く木村と音海君。少しは頑張れ彼氏だろ。
すると私の膝から下りた正道が駆け寄って行き、木村にせがむ。
「にーちゃん、かたぐるま」
「おっ? いいぞ、ほーら」
「たかい!」
大喜びの正道。こっちは嘆息しつつ、さおちゃん鼓拍ちゃんと共に立ち上がる。
ああ、楽しい思い出ばっかりだったな。名残惜しい。目を覚ましたくない。
でも、だとしても前へ進まなきゃ。
「ぐぬぬぬ……」
さおちゃんに押し退けられ、悔しそうな舞さんの方へ振り返る。
「そろそろ行こうか、卒業式」
「わかっています!」
彼女は勢い良く立ち上がった。
「出発だあ!」
千里ちゃんが先頭に立ち、遥か彼方を指差す。
「柔ちゃんも肩車してあげようね」
「たかい、こわい」
「ははは、前が見えないよ」
勇花さんに持ち上げられ、咄嗟に顔にしがみつく柔。
「大塚くん、ぼくを忘れてないかな? ぼくの思い出話は?」
にょきっと前会長が生えて来る。
「これからですよ慶さん。歩きながら話しましょう」
「お兄さま、もう大人なのですから少しは落ち着いてくださいまし」
「何を言う、舞! ぼくらの青春はここからが本番だぞ! ああっ、この湧き上がる衝動を歌にして君達に伝えたい!」
「僕もご一緒に、前会長!」
「始まった……!」
いつものように煌めきながら歌い出す前会長。柔を澤さんに預け、素早く隣に並ぶ勇花さん。興奮しながら旗を振る美浜さん。くっ、二人同時に視界に収めると目が痛い。私は歩調を早めて会長コンビより前に出る。
そんな私達の周囲を駆け抜けて行く、いくつもの記憶。
そうそう、家族揃ってカガミヤ本社へ遊びに行ったっけ。勇花さんと千里ちゃんが我が家へ来た日、父さんとママは嬉しそうだった。会長選挙、あの頃はまだ“高徳院さん”と呼んでいた舞さんとの熾烈な争い。勝ったのは結局勇花さん。私は副会長で舞さんは書記に選ばれた。
生徒会の活動なんてしたこと無かったから、前会長に教わりつつ四苦八苦。大変だったけど今になって思えばあれで良かったんだと思う。中学の時みたいに音楽室でさおちゃん鼓拍ちゃんと三人気ままに演奏してるだけじゃ得られない経験をたくさん積めた。
卒業後に私が暮らす場所を巡り、ママと時雨さんの間で意見が衝突したこともあったね。この時は、小梅ちゃんが意外なアイディアを出してくれたおかげで助かった。
小梅ちゃんと言えば通さんと付き合い始めた時は驚いたなあ。実は私、通さんと初めて会った頃はちょっと気になってたんだよね。小梅ちゃんが好きだって気が付いて遠慮したけど。二人とも幸せになって欲しい。
「ああ、あれ……まさかあんな大事件になるとは」
「そうそう、歩美ちゃんのお布団から行方不明の子が出て来た!」
「あはは……」
地面に座って車座になり、夢の中で思い出を語る私達。私が正道をだっこ、勇花さんは柔をだっこ。千里ちゃんはカメラで記録した写真を順に見せてくれる。これ実際には私の記憶の断片なのかな。
夢だから周りの景色なんて曖昧。真っ暗になったり真っ白になったり、思い出話の中の風景が反映されたり。
不意に、正道がそんな過去の光景を指差す。
「わんわん!」
「あー、学校に犬が迷い込んで来たやつかー」
「しかもドーベルマンね」
「かっこいー」
「お、正道くんは平気なんだ?」
「こわい」
「柔ちゃんは苦手みたいだね」
自分にしがみついて来た柔の背をとんとん叩く勇花さん。そうだよ、双子だって性格は全然違うんだ。奥深いでしょ?
「──まったく、あの犬の時には肝を冷やしました」
「あれ? いつの間に」
ふと気が付くと舞さんも私と千里ちゃんの間に座っていた。まあ夢だからね。
「大塚は時々無茶するからな」
「美浜さんが言う?」
やっぱり突然現れる美浜さん。位置は私と勇花さんの間。若干勇花さん寄り。
「あの時は美浜さんだって大立ち回りしたじゃん」
「まったくです! わたくしがどれだけ心配したと思っているの!?」
「夢の中だと素直だね、舞ちゃん」
勇花さんと千里ちゃんの間に現れ笑う澤さん。たしかに普段の舞さんならこんな素直なこと言わないよ。流石は幼馴染、よく知ってる。
「絵里香、余計なことを言わない! ほら見なさい、八千代がまた余裕ぶった表情でわたくしを見ていますわ! その優しい眼差しはおやめなさい! わたくしの方が目上の立場なのでしてよ!」
あ、そうそう。美浜家と澤家は昔から高徳院家に仕えて来たらしい。
でも──
「ふん! とはいえ、そんな旧いしがらみ知ったことではありません! 貴女達は二人共わたくしにとって単なる友! それ以上にも以下にもなりませんのよ!」
そう、こっちが正しい高徳院さんだ。さっきのは出会ったばかりの頃のイメージが反映された発言。
高徳院さんが私に何かと絡んでくるようになったのは、あの七不思議ツアーの直後から。それまで鏡矢の血を引く人間がいるとは知らなかったらしいんだ。クラスも違ったし。
ただ、あの一件の後始末で何度か雫さんと時雨さんがうちの学校に来たんだよ。その時に私のことを知ったらしくて、それで会いに来てくれた。
なんで“来てくれた”なのかと言うと──
「柔ちゃん、あの人はね、柔ちゃんのお姉ちゃんが心配だったんだよ」
「見た目と違って優しい人だから安心してね」
「素直じゃないだけなの」
三人揃ってうちの妹に舞さんは無害だと吹き込む澤さん、勇花さん、美浜さん。舞さんの前から手を伸ばし、千里ちゃんも正道に写真を渡す。
「正道くんも見て見て、この写真。うちのクラスはコスプレ喫茶で舞ちゃんとこはお化け屋敷。びみょーにネタ被りしちゃったんだけどさ、そのことを文化祭当日になって抗議に来たかと思うと、君のお姉ちゃんと自分のコスがどっちもミイラだってわかった途端機嫌を直してニヨニヨ。お揃いで嬉しかったんだねー」
「ほんとだ、わらってる」
「あ、あなたたちね……」
舞さんの額に青筋が浮かぶ。このままだと癇癪を起こしちゃいそうなんで、私は素早くその手を掴んだ。
「あのさ」
「なっ、なんです!?」
私は彼女の目を見つめ、現実だとなかなか言えないことを口に出す。
「ありがとう」
「大塚さん……」
──舞さんは私を心配してくれたんだ。
この人がうちの学校に入学した理由は、お兄さんがいたから。どうしても前会長と一緒に高校生活を過ごしたくて親御さんに無理言って進路を変えさせてもらった。
でも、中学までは美浜さん澤さんと一緒に全寮制の女子校に通っていた。なので最初は一般的な学校に馴染めずにいたという。
そんな時に鏡矢家の血を引く子が通っていると知り、不安になった。上手くやれてるのだろうか? 自分と同じで浮いてしまっているのでは?
それで心配して見に来てくれたってのが私達の出会い。自分だって大変だったのに見ず知らずの他人にお節介を焼こうとしたんだよ。そういう人なの。
「私、大学でも何も心配してないよ。皆とは違う進路になっちゃったけど、それでもすぐ近くに舞さんがいてくれるから」
「……ふふ、これはあくまで夢。だから現実のわたくしも同じとは限りませんが、あえて言わせていただきます。同意見ですわ。わたくしも初めて八千代や絵里香と離れる。それでも家に帰れば大塚さんには会える。心強い限りです」
「うん。東京でもよろしく」
「こちらこそ」
微笑み合い、改めて握手を交わす私達。すると周りの皆が一斉に拍手してくれた。
ところが、繋いだ手にチョップが振り下ろされる。
「ていっ」
「あ」
「何しますの!?」
「おしまいおしまい、離れて離れて」
「むぎゅう」
割り込んで来るさおちゃん。舞さんを引き離し、私と肩を組んでべーっと舌を出す。
「ここはあたしの定位置。いくら高徳院さんでも譲れないね」
「じゃあ反対側は私がもらいまーっす!」
左手を掴み、腕を組む鼓拍ちゃん。
「オレ達は……」
「蚊帳の外」
しくしく泣く木村と音海君。少しは頑張れ彼氏だろ。
すると私の膝から下りた正道が駆け寄って行き、木村にせがむ。
「にーちゃん、かたぐるま」
「おっ? いいぞ、ほーら」
「たかい!」
大喜びの正道。こっちは嘆息しつつ、さおちゃん鼓拍ちゃんと共に立ち上がる。
ああ、楽しい思い出ばっかりだったな。名残惜しい。目を覚ましたくない。
でも、だとしても前へ進まなきゃ。
「ぐぬぬぬ……」
さおちゃんに押し退けられ、悔しそうな舞さんの方へ振り返る。
「そろそろ行こうか、卒業式」
「わかっています!」
彼女は勢い良く立ち上がった。
「出発だあ!」
千里ちゃんが先頭に立ち、遥か彼方を指差す。
「柔ちゃんも肩車してあげようね」
「たかい、こわい」
「ははは、前が見えないよ」
勇花さんに持ち上げられ、咄嗟に顔にしがみつく柔。
「大塚くん、ぼくを忘れてないかな? ぼくの思い出話は?」
にょきっと前会長が生えて来る。
「これからですよ慶さん。歩きながら話しましょう」
「お兄さま、もう大人なのですから少しは落ち着いてくださいまし」
「何を言う、舞! ぼくらの青春はここからが本番だぞ! ああっ、この湧き上がる衝動を歌にして君達に伝えたい!」
「僕もご一緒に、前会長!」
「始まった……!」
いつものように煌めきながら歌い出す前会長。柔を澤さんに預け、素早く隣に並ぶ勇花さん。興奮しながら旗を振る美浜さん。くっ、二人同時に視界に収めると目が痛い。私は歩調を早めて会長コンビより前に出る。
そんな私達の周囲を駆け抜けて行く、いくつもの記憶。
そうそう、家族揃ってカガミヤ本社へ遊びに行ったっけ。勇花さんと千里ちゃんが我が家へ来た日、父さんとママは嬉しそうだった。会長選挙、あの頃はまだ“高徳院さん”と呼んでいた舞さんとの熾烈な争い。勝ったのは結局勇花さん。私は副会長で舞さんは書記に選ばれた。
生徒会の活動なんてしたこと無かったから、前会長に教わりつつ四苦八苦。大変だったけど今になって思えばあれで良かったんだと思う。中学の時みたいに音楽室でさおちゃん鼓拍ちゃんと三人気ままに演奏してるだけじゃ得られない経験をたくさん積めた。
卒業後に私が暮らす場所を巡り、ママと時雨さんの間で意見が衝突したこともあったね。この時は、小梅ちゃんが意外なアイディアを出してくれたおかげで助かった。
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