ここは弊社のゲームです~ただしBLゲーではないはずなのに!~

マツヲ。

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89:至るところに打たれる布石

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「おう、テイラーぼっちゃん!見てくれよこの部屋、最高の出来になったハズだぜ!」
 部屋の片隅では、改装を無事に終えた職人さんたちがそろって道具の片付けに入っているところだった。
 そんななか、顔を出した俺に気づいた大工のカシラが、めちゃくちゃいい笑顔でこちらに寄ってくる。

「夜どおしの作業お疲れさまです。いいお部屋になりましたね、清潔感があって、落ちついた感じがとてもいいと思います」
「おぉ、うめぇモンたくさん差し入れてくれたテイラーぼっちゃんのためにと、皆で気合いを入れてやったからな!!」
 と、そこで横に立つブレイン殿下に気づいたんだろう、カシラは首をかしげた。

「あぁ、ブレイン殿下、こちら部屋の改装を今回引き受けてくれた大工さんたちの取りまとめをしているカシラの方でして……」
 まずは先に目上の相手に紹介をしてからと思って口をひらいた俺に、しかしカシラはビタンと派手な音を立てて床に倒れ伏した。

「ひえぇ、とんでもねぇ高貴なお方の前に、オレっちのようなモンが出ちゃあいけねぇよ!!」
 おそれ多いとばかりにふるえあがるカシラを見て、ハッとした。

 そうだ、すっかりブレイン殿下のそばにいるのに慣れてしまっていたけれど、この人もまた、とんでもなく貴い存在のひとりだった。
 あれ、でもなんか忘れているような……。

「朝食はおいしく食べられたかい?」
「へ、へいっ!!昨夜からの夕食にはじまり、夜食に朝食と、テイラーぼっちゃんにはたいそうお気づかいいただき……っ!」
 ブレイン殿下からの問いかけに、カシラはふるえる声でこたえている。
 あ、それで思い出した!

「えぇとね、今朝のはブレイン殿下からの差し入れなんだ。俺が手配するどころじゃなくてね……」
「ひえぇぇぇ、そんなおそれ多い!!うっかりうますぎて、あっという間に食っちまいましたよ!!」
 苦笑を浮かべながら告げれば、伏したままのカシラは器用にふるえあがった。

「口にあったなら、なによりだよ。なにしろキミたちは、私の大事なこの子のために夜どおし働いてくれたんだろう?ならば私からも、きちんとねぎらってあげたいからね」
 よそ行きの顔をしたまま、ブレイン殿下が追撃をかける。

「そんな、めっそうもないです!!」
 顔もあげられないままにふるえるカシラは、伏しているのに、今にも倒れそうな声だった。

 なんだか、かえってかわいそうなことをしてしまったかな……。
 せっかく無事に仕事がおわって、帰れると思って浮かれていただろうに。
 その気持ちに水を差してしまったみたいで、微妙に罪悪感がわいた。

 でも、改装を注文したのは俺だし、ちゃんとその仕上がりを早めに確認するのが、職人さんへの礼儀だと思っただけなのに。
 そんなことを反省していたら、笑顔のブレイン殿下は伏したままのカシラに、なにか耳打ちをしていた。

 そして、あわてて出てきた俺の付き人にも、なにかお願いごとをしているように見えた。
 いったい、なんなんだろうか?
 なんかもう、どうせロクでもないことのような気がする。

 俺が疑念に駆られた目で見ていれば、ハッと気づいたうちの付き人は、あわててあたまを下げてきたけど……そのときの満面の笑みは、いったいなんだったんだろうか?
 わからないだけに怖い、よな……。

「さて、行こうかハニー?」
「ちょっ!?」
 チュ、と音を立てて、こめかみにキスされた。
 俺のところの付き人たちの、突き刺さるような視線を感じる。

 うぅっ、めちゃくちゃはずかしい!
 ていうか、ブレイン殿下のところの付き人は見て見ぬふりしてくれたのに……こういうときに、ふだんの教育のちがいが出るんだな……。
 でもまぁ、まだこめかみだからセーフだろ。

 そうして自分の改装の済んだ部屋を出て、教室へと向かう。





「じゃあ、今日も気をつけて」
「えぇ、ブレイン殿下も」
 わかりやすく教室前でのハグとキスを経て、あいさつをしてわかれる。
 めっちゃ周囲からの注目を浴びている気がするけれど、たぶんそういうものなんだろう。

 もうあきらめた、と言うしかないと思う。
 これに慣れられなかったら、たぶんこれから先もキツいだろうし。
 一応俺の立ち位置は、ブレイン殿下の恋人というところで、校内に知られた気はするから。

 でもそれは、針のむしろと同義なような気もするけど。
 わかってはいたけれど、ブレイン殿下の恋人という立ち位置は、ものすごい嫉妬を浴びる存在でもあって、こうしていても敵意のこもった視線が突き刺さってくる。

 そりゃそうか、今朝は着ている制服の色からして悪目立ちするヤツだもんな?
 こんな薄紫のカーディガンとか、ピアスにしても、ツッコミ待ちをしてるみたいなもんだろ。
 なんて思っていたら。

「おっはよぉ~!なー、テイラー!またお持ち帰りされたのかよ~?」
 ドンという衝撃とともに真横から抱きついてきたのは、例によってパレルモ様の取りまき仲間のジミーだった。
 派手な緑色の髪に茶色の瞳、そして顔のそばかすが特徴の、小柄な少年だ。

「あぁ、おはようジミー。ちょっと部屋の改装が終わらなくてね……」
「あっ……」
 とたんに昨日の部屋の交代劇を思い出したんだろう、顔をくもらせるジミーに、ほんの少しだけ心が軽くなる。

 あぁ、あれを理不尽だと感じた人は、俺やセブン以外にもいたのかもしれないって、そう思ったらなんだかホッとした。
 というか、むしろジミーにそれだけの分別があったことが、逆におどろきだったけど。

「おかげさまで、今朝にはほとんど終わったから、今日からは自分の部屋で眠れると思うけどね」
 若干苦笑に近くなってしまったけれど、それでもなんとか笑うことができた。

「一応心配してくれたんだろ?ありがとな」
 そう言って、その派手な緑髪にいろどられたあたまを、ワシャワシャとなでる。
 よしよし、ジミーも少しは成長してるな。

「…………テイラーも、笑うことあるんだな……」
「なんだよ、俺だって笑うことくらいあるぞ?」
 ビックリした様子を隠そうともせずに言うジミーに、デコピンをお見舞いする。

「痛ってぇ!」
「ったく、俺のことなんだと思ってたんだよ!」
 大げさに痛がるジミーがおかしくて、今度こそ声をあげて笑った。

「……ダグラス、からだのほうは平気か?」
 と、そこへ遠慮がちな声がかけられる。
「リオン殿下!?」
 ふりむいた先にいたのは、まさかのリオン殿下だった。
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