当て馬系ヤンデレキャラから脱却を図ろうとしたら、スピンオフに突入していた件。

マツヲ。

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*48.弟がヤンデレキャラに変化した件。*

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 ようやくアレクとは和解が成立して、これで家に帰してもらえるとホッとしたのもつかの間、今度は気がつけば双子の弟の夏希なつきの手により、あらためて監禁されることになっただなんて、これを悪夢と呼ばずして、なんと呼べばいいというんだろうか?!
 思わずそう嘆きたくなるくらいには、あたまの痛い展開だった。

「アレクが目覚めたら、実際にはなにもなかったことを白幡しらはたに話すだろうし、すぐに誤解は解ける。そうしたらいつまでも、俺をこの部屋に閉じ込めておけるはずがないだろう?」
 できるだけ口調はやわらかくなるよう、ゆっくりと諭すように相手に言って聞かせる。

「大丈夫だよ、こちらから呼ばないかぎり、この部屋には勝手にだれかが来ることもないし、なにより邪魔者にはさっさとご退場願うから!さっき月兎つきとさんがアレクさんの秘書に連絡したら、すぐにむかえに来るって言ってたんだって」
「それは……」
 つまり、アレクがここにいたのは、仕事をサボって来ていたということになるのだろうか?
 それなら多忙な彼が即連れもどされるというのも、納得といえば納得だった。

「でも、ここに直接は来られないから、むかえに来られる近くのまで送ることになっててね」
「はっ?!ちょっと待て夏希!『港』って……」
「あぁ、さすがの兄さまも気づかなかったよね?ここの寝室は、窓を閉めてしまえば完ぺきな防音になるから」
 にっこりと笑いかけると夏希はおもむろに、分厚いカーテンの降りる縦に細長いかたちの大きな窓へと歩いていく。

「っ、まぶし……!」
 そしてカーテンの横のひもを引っぱれば、するすると開いていき、とたんに室内はより明るくなる。
 下からあらわれたうすいレースのカーテン越しには、一面の青が透けて見えた。

 それもまた横にある細いひもを引けば開いていき、今度こそ透明な窓ガラス越しに広がったのは、真っ青な空と海だけだった。
 そのまま窓を開ければ、ザザァーン、ザザー…とくりかえされる波の音とともに、磯の香りが室内に広がる。

「ウソ、だろう……?」
「うふふ、日ごろから多忙な兄さまには、ゆっくりとお休みを取ってもらいたいからね」
 目の前に現れた光景が信じられず、思わず必死に身を起こして窓の外の景色を凝視してしまう。
 けれど何度見たところで、窓の外には水平線が仕切る空と海とが見えるだけだった。

 あまりにも突拍子もない光景に思考を放棄しそうになるが───いやちょっと待て、この光景には微妙に見覚えがあるぞ……?
 どこで見た?
 それもつい最近、目にしたような気がする。

「───って、まさかここは『プライベート・オーシャン・ヴィラ』か!?」
 とっさに仕事上の書類で目にした、洋上高級リゾート施設の名を出す。
 その書類に載っていた、客室から見る景色の写真とやらが、こんな感じだった気がする。

 ハワード家が出資するリゾート会社が手掛けたという、都心近郊の海に人工的に作られた小島をまるごと貸し切りにできるというそれは、プライベートビーチやら豪華絢爛なヴィラでの王侯貴族のような優雅な滞在を売りにしているらしい。
 いわゆるセレブ向けのリゾート施設だったはず。

 たしか都心に近い海域だけに、臭気対策として周辺の水質をよくするための施設を無数に配置しているとか、途方もない費用をかけて開発されているようなことが書かれていた。
 それを見て、さすが石油王は規模がちがう、なんてなかばあきれたのは記憶に新しかった。
 
「そう、大正解!ここなら警備も万全だから、安心でしょう?だからオープンに先立ってアレクさんが『兄さまのために』って、施設のなかでもいちばんいいヴィラを用意してくれたんだよ♪それに、兄さまのためなら、ずっとここを借り上げてくれるんだって!」
 ───なるほど、そいつは盲点だった。

 都心からの移動時間が短いことや、プライベート空間が守られることを売りにしたオープン前の洋上施設なら、人目を気にする必要なんてないし、ましてその出資者たるハワード家の力をもってすれば、そこで働くものへの箝口令もふくめ、いかようにもできるということか……。
 思った以上に脱出困難な立地に、頭痛はひどくなるばかりだ。

「あとは、兄さまが逃げ出したりしないように、ちゃんと……ね?」
 まるでいいことでも思いついたみたいに手を打ち合わせて声を弾ませる夏希に、しかしこちらが感じるのは不安だけだった。
 なんだこれは、嫌な予感しかしないんだが?!

「おい、ちょっと待て夏希、お前、なにを考えているんだ?!」
 ドクドクと音を立て、心臓が激しく脈を打つ。
 絶対にロクでもない展開にしかならないと思うのに、止めようがないまま進行していく。

「大丈夫、美しい兄さまを傷つけたくはないから、痛いことなんてしないよ?でも、逃げ出そうなんて思わないように、ちゃんとしつけてあげるから」
 逆光になっているせいで顔はよく見えなかったけれど、それでも明るい声のトーンと、小首をかしげるかわいらしいしぐさからは、相手が無邪気そうな笑みを浮かべているであろうことだけは想像がついた───たとえ本人の内面が、それとは真逆の方向にゆがんでいたとしても。





 ヴィィィィ……
 小刻みなモーター音が、室内に低く響く。
 そしてそれとともに、クチクチという湿った音も。

「もうやめろ……夏希っ、こんなことする必要なんてないだろう?!」
 必死に身をよじり、相手を説得しようとしたところで、まるで効果なんてなくて。
 それどころか、言われた夏希はにっこりと笑みを浮かべる。

「そんなに暴れちゃダメですよ、兄さま。手首や肩を痛めちゃったらどうするんですか?」
 相手を押しかえそうとする手は、手首を戒める枷からのびる鎖が引きとめてしまうせいで、全然思ったようには動かせそうにない。
 そのせいでまともに抵抗することすらできず、相手のいいようにされていた。

 着ていた服はあらためて脱がされ、今やすっかり前がはだけ、シーツ同然にからだの下でしわくちゃとなったシャツを1枚羽織るだけになっている。
 それだけじゃない、さっきから響くモーター音は、胸もとにサージカルテープで止められたローターの立てる音だ。
 弱めに設定されたピンク色のそれは、くすぐったいくらいの振動で、ずっとこちらを苛んでくる。

 そして湿った音の正体は、先ほどからベッドの上で、俺の横に座り込んだ夏希の指により、たっぷりのローションをなじませ、後ろをほぐされているせいだった。
 ベッドの中央付近の絶妙な位置に座り込む夏希のせいで、よけて足を閉じようとすると、逆に腰をひねり、相手に向かって尻を突き出すようなかたちになってしまう。
 かといってそれ以外にとれる選択肢なんて、夏希をまたぐように足を開くくらいしかない。

「うぅっ……」
 こんなの屈辱だ、そう思う気持ちとは裏腹に、くちびるをかみしめていなければ、あえかな声がもれ出てしまいそうになる。
 そんな俺の姿に、さっきから夏希の機嫌は相当よさそうだった。

 結局、鼻歌まじりの夏希によって、いくら足を閉じても関係ないとばかりに、その狭い場所を責められつづけていた。
 山下の武骨な指とはちがい、まるでピアニストのように繊細な夏希のそれは、ローションのぬめりを借りて、複数本でも難なく奥へと挿し込まれ、そしてやさしく内壁をなぞってくる。
 その細さが若干心もとない感じがして、油断をすればつい締めつけてしまいそうだった。

「どう、兄さま苦しくないですか?慣れるまでは、ゆっくりほぐしてあげますからね?」
「ヒッ!だからっ、はぁっ……アッ、ん……やめろと言っている!」
 その指がクポッと音を立てて引き抜かれ、そしてまたローションを足して奥へとすべりこんでいく。
 粘度のある液体のせいで、よけいに水っぽい音になるのが卑猥に聞こえてきて、いたたまれない気持ちでいっぱいだった。

「あーもう、真っ赤になる兄さま、かわいい!でもダメですよ、そんなにあせっちゃ。兄さまにはおかしくなるくらい、いっぱいいーっぱい気持ちよくなってもらうんですから♪」
 そう言いながらも、夏希の細い指先は、器用に爪を立てずに内壁をカリカリと掻いてくる。

 こんなの、反応せずに耐えればいいだけだ。
 あたまではそう思っているはずなのに、なぜだかこのからだは、すっかり快楽に弱くなってしまっているらしい。
 おかげでちょっとしたことですら、そこに気持ちよさを見出そうとしてしまう。

「ンンッ!やぁっ……!」
 どうしてこんなことに?!
 なぜかと相手を問い詰めたい気持ちは、甘ったるい声となって口からもれ出ていく。

「な、つきぃっ……ひぁっ!」
 そしてその責め苦のなかばに、頼りないくらいの細い指がある一点をかすめた瞬間、脳天からつま先まで、耐えられないほどに甘い刺激が、まるで感電したかのように一直線に走り抜けた。
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