勇者学校のぼっちセンセ。 ~なぜか魔王に執着されてます~

マツヲ。

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14.歩く最終兵器の姉上様

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 気持ちが少し落ちついてきたところで、あらためて周囲を見まわして、ここが勇者学校の校舎の一室であることに気づいた。
 そういえばさっき、姉貴が呼び出されて話を聞いたとかなんとか言ってたっけか。

 ある意味で臨時講師をしているオレにとっても今のホームのひとつであるわけで、そういう点からすれば、ここをとっさの転移先に選んだことはまちがいではなかったのかもしれない。
 そうだ、別にこんな姉貴のところに逃げたいなんて、みじんも思ってないんだからな!?

「とりあえずあんたが無事にもどって来たなら、ここと王様のところにも、一報入れとかなきゃいけないわね」
「悪い、頼んだ……」
 正直、自分から無事でしたとは言いがたい気持ちになっていたから、代わりに報告してくれるのならば助かる。

 しばし各方面に連絡してくれている姉貴の姿をぼんやりと見ていれば、ふいに先ほどシエルからあたえられた魔力のことが気になってきた。
 なんだっけ、あの魔王独自の魔法……?
 ───あぁ、そうだ!

「……なぁ、姉貴、宮廷魔導師としての見識の広さを見込んでの質問なんだけど、『大いなる愛グランデアモーレ』って魔法、聞いたことあるか?」
 ふと気になって、そんなことをたずねてみる。

 オレからすれば、これまで聞いたこともない名前の魔法だった。
 シエルいわく、魔王だけが使える魅了の魔法らしいけど、これまでの経緯をかんがみたら、おそらく人には知られていないものなんだろう。

 ───そう思っていたのに。

「もちろん知ってるわよ!魔王専用のでしょ?対象者の強制発情と、所有権主張のための犯罪的なヤンデレ系魔法よね?」
「えっ……知ってんのかよ?!」
 あっさりとかえされて、思わず身を乗り出す。

「そりゃあね、なんたってアタシはなんでも知ってるハイスペックお姉さまですもの!あんたもひょっとして、知っちゃったのかしら……」
 とたんに声をひそめ、身を乗り出してきた姉貴に、オレはこっくりとうなずく。

「まぁな……」
 知ってしまったというか、実際にはその魔王シエル本人から聞かされたんだけども。
 なんなら魔法の効果まで、身をもって体験済みだよコノヤロー!!

「いやぁ、おどろきよね、魔族の頂点に立つ魔王ともあろうものが、あんな変態チックなエロ魔法を使うっていうこともさることながら、その内容が書かれた『魔王に関する歴史書』と呼ばれる国有蔵書が、実は古代語で書かれたただのマニアックなエロ本で、しかもそれがうちの王様の大好物のとか……!ついでに言えば、そんなもののために寝る間を惜しんで、若かりしころに古代語を勉強してたとか、もうウケる以外のなにものでもないわ!!」

「えっ……?!」
 いや、ちょっと待て、なんの話だそれ。
突然大量にぶち込まれた暴露話に、思わず絶句する。
 なんならうちの国王様の名誉のためにも、国家機密レベルにしとくべきことなんじゃないか、それ!!?

 たぶんあれだ、我が姉ながら宮廷魔導師なんていうご立派な職業についているけれど、本当は『歩く最終兵器』って呼び名のほうがふさわしいんじゃないかなんて思う。
 キリキリと痛くなる胃をそっと押さえ、情報通なんてモンじゃ済まされないレベルの姉を盗み見て、オレは気づかれないようにそっと息をついた。
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