勇者学校のぼっちセンセ。 ~なぜか魔王に執着されてます~

マツヲ。

文字の大きさ
15 / 22

15.最強すぎるお姉さま

しおりを挟む
「───それ、黙っとかないといけないヤツなんじゃねぇの?」
 思わずたまりかねて苦言を呈せば、姉貴はぱちぱちと目をしばたかせる。

「あらっ?あんたも見ちゃったんじゃないの?王様の寝室コレクションの蔵書たちを」
 そう言って首をかしげる姉貴の顔には、悪意だとか故意だとかは見当たらない。
 なのにこれでわざとボケてるんだから、たまったもんじゃないよな。

「いや、そうじゃなくて……オレの場合はシエル本人から聞いたっつーか……」
 そう言いつつも、なんなら突然の国王の性癖暴露なんていうめちゃくちゃいらない情報に、小市民のオレは、いっそ具合が悪くなりそうだった。

「やーだ!そしたら今のは聞かなかったことにしてちょうだい、アルト!」
「わかった……っていうか、そんなんむしろ知りたくなかったよ、オレはっ!」
 おなじ男として、王様だってこんな軽い感じに秘密の暴露をされたくなかっただろうな、なんて思う。

「───と、まぁ冗談はさておき。『大いなる愛グランデアモーレ』、もちろん知ってるわ。言うなればそれは『魔王の執着』の対象の証だもの、こちらからすれば厄介としか言いようがないわよね。そんなものをつけられた相手、下手に手出しができないっていうか……」 
 急に真剣な顔にもどる姉貴に、オレはようやく安心して肩の力を抜く。

「……ちなみにそれって、外見からわかるもんなのか?」
 でもそれとは別に、オレにとっては未知の魔法であることに変わりはないわけで、ふと一抹の不安に駆られ、思わずたずねた。

「そうねぇ……そもそも魔王が手もとから離さない時点で、だいたい対象がわかるもんだけどね。でもそれ以外だとしたら……身も心も魔王に捧げたときには、それとわかる所有印がからだに浮かび上がるらしいから、それが目印になるのかしらねー?」
「身も心も、か……」
 なら、まだどっちも捧げてないオレはセーフになるのか……?

 たしかにそう考えると、さっきのシエルの行動とも合致する。
 精神支配系の魔法まで使ってオレの心をあやつろうとした時点で、『このままの状態のオレには効かない魔法だから、やむなくそうせざるを得なかった』という推測は成り立つけれど。

「───って、やけにあんたも興味あるみたいだけど……まさかっ!?」
「…………………………」
 こういうとき、やっぱり姉貴の勘はするどい。
 ふい、と目線を逸らしたところで、もう遅かった。

 でもだからって、すなおに告白する気にもなれなくて、視線をさまよわせたまま、押し黙ってしまった。
 その沈黙こそが、なによりのこたえになるっていうのに……。

「はあぁ?!そういう大事なことは最初に言いなさいよ!!ほら、所有印はどこ!?」
 そう叫ぶなり、いきなり服を剥かれた。
 シャツのボタンをいまだに留めていなかったせいで、一気に肩から落とされる。

「ない!ない、ない、ないっ!ならまさか下半身に!?」
「ちょ……っ!待てってば!」
 シエルですら脱がそうとしていなかったパンツのほうにまで手をのばし、ベルトをはずしにかかる姉貴にあわてる。

「だから、未遂なんだってば!オレはヤられてねぇし!第一、あいつに心なんて捧げたつもりもないんだからな?!」
「うるさい!ほら、アタシに逆らわない!」
 その言葉が聞こえた瞬間、不自然なまでにオレのからだは固まった。

 クソ、やっぱり『絶対服従の呪い』は有効なんじゃねぇか!
 カチャカチャと音を立ててベルトがはずされようとしているのに、ろくに抵抗もできない。

 と、そのとき。
「すみません、筆頭宮廷魔導師のシェイラ・リリウム様!折り入ってお話が!」
「恐れ入ります、お時間をちょうだいできますでしょうか?」
 部屋の外から、そんな声が聞こえてきた。

 ちょっと待て、この声は───まさかガウディオとナタリアか?!
 声の主に気づいたとたん、オレの顔からはサァッと音を立てて血の気が引いていった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

Sランク冒険者クロードは吸血鬼に愛される

あさざきゆずき
BL
ダンジョンで僕は死にかけていた。傷口から大量に出血していて、もう助かりそうにない。そんなとき、人間とは思えないほど美しくて強い男性が現れた。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました

芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」 魔王討伐の祝宴の夜。 英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。 酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。 その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。 一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。 これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい

発光食品
BL
『リュミエール王国と光の騎士〜愛と魔法で世界を救え〜』 そんないかにもなタイトルで始まる冒険RPG通称リュミ騎士。結構自由度の高いゲームで種族から、地位、自分の持つ魔法、職業なんかを決め、好きにプレーできるということで人気を誇っていた。そんな中主人公のみに共通して持っている力は光属性。前提として主人公は光属性の力を使い、世界を救わなければいけない。そのエンドコンテンツとして、世界中を旅するも良し、結婚して子供を作ることができる。これまた凄い機能なのだが、この世界は女同士でも男同士でも結婚することが出来る。子供も光属性の加護?とやらで作れるというめちゃくちゃ設定だ。 そんな世界に転生してしまった隼人。もちろん主人公に転生したものと思っていたが、属性は闇。 あれ?おかしいぞ?そう思った隼人だったが、すぐそばにいたこの世界の兄を見て現実を知ってしまう。 「あ、こいつが主人公だ」 超絶美形完璧光属性兄攻め×そんな兄から逃げたい闇属性受けの繰り広げるファンタジーラブストーリー

処理中です...