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15.最強すぎるお姉さま
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「───それ、黙っとかないといけないヤツなんじゃねぇの?」
思わずたまりかねて苦言を呈せば、姉貴はぱちぱちと目をしばたかせる。
「あらっ?あんたも見ちゃったんじゃないの?王様の寝室コレクションの蔵書たちを」
そう言って首をかしげる姉貴の顔には、悪意だとか故意だとかは見当たらない。
なのにこれでわざとボケてるんだから、たまったもんじゃないよな。
「いや、そうじゃなくて……オレの場合はシエル本人から聞いたっつーか……」
そう言いつつも、なんなら突然の国王の性癖暴露なんていうめちゃくちゃいらない情報に、小市民のオレは、いっそ具合が悪くなりそうだった。
「やーだ!そしたら今のは聞かなかったことにしてちょうだい、アルト!」
「わかった……っていうか、そんなんむしろ知りたくなかったよ、オレはっ!」
おなじ男として、王様だってこんな軽い感じに秘密の暴露をされたくなかっただろうな、なんて思う。
「───と、まぁ冗談はさておき。『大いなる愛』、もちろん知ってるわ。言うなればそれは『魔王の執着』の対象の証だもの、こちらからすれば厄介としか言いようがないわよね。そんなものをつけられた相手、下手に手出しができないっていうか……」
急に真剣な顔にもどる姉貴に、オレはようやく安心して肩の力を抜く。
「……ちなみにそれって、外見からわかるもんなのか?」
でもそれとは別に、オレにとっては未知の魔法であることに変わりはないわけで、ふと一抹の不安に駆られ、思わずたずねた。
「そうねぇ……そもそも魔王が手もとから離さない時点で、だいたい対象がわかるもんだけどね。でもそれ以外だとしたら……身も心も魔王に捧げたときには、それとわかる所有印がからだに浮かび上がるらしいから、それが目印になるのかしらねー?」
「身も心も、か……」
なら、まだどっちも捧げてないオレはセーフになるのか……?
たしかにそう考えると、さっきのシエルの行動とも合致する。
精神支配系の魔法まで使ってオレの心をあやつろうとした時点で、『このままの状態のオレには効かない魔法だから、やむなくそうせざるを得なかった』という推測は成り立つけれど。
「───って、やけにあんたも興味あるみたいだけど……まさかっ!?」
「…………………………」
こういうとき、やっぱり姉貴の勘はするどい。
ふい、と目線を逸らしたところで、もう遅かった。
でもだからって、すなおに告白する気にもなれなくて、視線をさまよわせたまま、押し黙ってしまった。
その沈黙こそが、なによりのこたえになるっていうのに……。
「はあぁ?!そういう大事なことは最初に言いなさいよ!!ほら、所有印はどこ!?」
そう叫ぶなり、いきなり服を剥かれた。
シャツのボタンをいまだに留めていなかったせいで、一気に肩から落とされる。
「ない!ない、ない、ないっ!ならまさか下半身に!?」
「ちょ……っ!待てってば!」
シエルですら脱がそうとしていなかったパンツのほうにまで手をのばし、ベルトをはずしにかかる姉貴にあわてる。
「だから、未遂なんだってば!オレはヤられてねぇし!第一、あいつに心なんて捧げたつもりもないんだからな?!」
「うるさい!ほら、アタシに逆らわない!」
その言葉が聞こえた瞬間、不自然なまでにオレのからだは固まった。
クソ、やっぱり『絶対服従の呪い』は有効なんじゃねぇか!
カチャカチャと音を立ててベルトがはずされようとしているのに、ろくに抵抗もできない。
と、そのとき。
「すみません、筆頭宮廷魔導師のシェイラ・リリウム様!折り入ってお話が!」
「恐れ入ります、お時間をちょうだいできますでしょうか?」
部屋の外から、そんな声が聞こえてきた。
ちょっと待て、この声は───まさかガウディオとナタリアか?!
声の主に気づいたとたん、オレの顔からはサァッと音を立てて血の気が引いていった。
思わずたまりかねて苦言を呈せば、姉貴はぱちぱちと目をしばたかせる。
「あらっ?あんたも見ちゃったんじゃないの?王様の寝室コレクションの蔵書たちを」
そう言って首をかしげる姉貴の顔には、悪意だとか故意だとかは見当たらない。
なのにこれでわざとボケてるんだから、たまったもんじゃないよな。
「いや、そうじゃなくて……オレの場合はシエル本人から聞いたっつーか……」
そう言いつつも、なんなら突然の国王の性癖暴露なんていうめちゃくちゃいらない情報に、小市民のオレは、いっそ具合が悪くなりそうだった。
「やーだ!そしたら今のは聞かなかったことにしてちょうだい、アルト!」
「わかった……っていうか、そんなんむしろ知りたくなかったよ、オレはっ!」
おなじ男として、王様だってこんな軽い感じに秘密の暴露をされたくなかっただろうな、なんて思う。
「───と、まぁ冗談はさておき。『大いなる愛』、もちろん知ってるわ。言うなればそれは『魔王の執着』の対象の証だもの、こちらからすれば厄介としか言いようがないわよね。そんなものをつけられた相手、下手に手出しができないっていうか……」
急に真剣な顔にもどる姉貴に、オレはようやく安心して肩の力を抜く。
「……ちなみにそれって、外見からわかるもんなのか?」
でもそれとは別に、オレにとっては未知の魔法であることに変わりはないわけで、ふと一抹の不安に駆られ、思わずたずねた。
「そうねぇ……そもそも魔王が手もとから離さない時点で、だいたい対象がわかるもんだけどね。でもそれ以外だとしたら……身も心も魔王に捧げたときには、それとわかる所有印がからだに浮かび上がるらしいから、それが目印になるのかしらねー?」
「身も心も、か……」
なら、まだどっちも捧げてないオレはセーフになるのか……?
たしかにそう考えると、さっきのシエルの行動とも合致する。
精神支配系の魔法まで使ってオレの心をあやつろうとした時点で、『このままの状態のオレには効かない魔法だから、やむなくそうせざるを得なかった』という推測は成り立つけれど。
「───って、やけにあんたも興味あるみたいだけど……まさかっ!?」
「…………………………」
こういうとき、やっぱり姉貴の勘はするどい。
ふい、と目線を逸らしたところで、もう遅かった。
でもだからって、すなおに告白する気にもなれなくて、視線をさまよわせたまま、押し黙ってしまった。
その沈黙こそが、なによりのこたえになるっていうのに……。
「はあぁ?!そういう大事なことは最初に言いなさいよ!!ほら、所有印はどこ!?」
そう叫ぶなり、いきなり服を剥かれた。
シャツのボタンをいまだに留めていなかったせいで、一気に肩から落とされる。
「ない!ない、ない、ないっ!ならまさか下半身に!?」
「ちょ……っ!待てってば!」
シエルですら脱がそうとしていなかったパンツのほうにまで手をのばし、ベルトをはずしにかかる姉貴にあわてる。
「だから、未遂なんだってば!オレはヤられてねぇし!第一、あいつに心なんて捧げたつもりもないんだからな?!」
「うるさい!ほら、アタシに逆らわない!」
その言葉が聞こえた瞬間、不自然なまでにオレのからだは固まった。
クソ、やっぱり『絶対服従の呪い』は有効なんじゃねぇか!
カチャカチャと音を立ててベルトがはずされようとしているのに、ろくに抵抗もできない。
と、そのとき。
「すみません、筆頭宮廷魔導師のシェイラ・リリウム様!折り入ってお話が!」
「恐れ入ります、お時間をちょうだいできますでしょうか?」
部屋の外から、そんな声が聞こえてきた。
ちょっと待て、この声は───まさかガウディオとナタリアか?!
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