恐竜使いの恋愛事情

アイム

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こんな感じで異世界へ。テンプレ・・・・・・かな?

一度目の死は割りと満足に。ー前編ー

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 思い起こせば苦節16年。割と平穏に何事もなく生きて来た。

 苦節じゃない? そうだよ! それが悪いってんだ! 俺は波乱万丈、モテモテ主人公ライフが良かったんだ! 誰も平穏無事だなんて望んでない。ある日邪眼が目覚めた時の心構えも、闇の力を発揮した時の言い訳もしっかり考えていた。だと言うのに・・・・・・。

「ん~、志渡の今の成績なら、この大学くらいは大丈夫だろ。だけど、もう少し頑張ればもうちょい上を狙えるぞ? 塾には行ってないのか?」

「え? あ、まぁ、取り敢えず復習をしっかりすれば、学校の成績はそこそこ取れてるので・・・・・・」

 どのテストも平均点+10点。これが俺の成績だ。まぁ、悪くはないし、特別自慢できるほど良くもない。手先が器用なので技術・家庭科の成績はすごぶる良いものの、同時にそれ以上に目立つことはない。と言うか、男が裁縫が上手くてもこっぱずかしい限りだ。いや、別に悪くないんだが、俺的には、ね。

「先生な、志渡なら出来ると思うんだ!」

 突然、タゴちゃん(担任教師)が身を乗り出し熱を入れてくる。

 ・・・・・・最近、うちのクラスの成績が悪く、こっぴどく教頭に怒られたそうだ。今回の二者面談もそれが原因で、一人ひとりが呼び出されて似たようなことを言われている。キラーワードは『お前なら出来る』『お前は他とは違う』『そろそろ本気を見せてくれ』だ。その三つのうちのどれかで、俺は一つ目。今まで行われた8人中3人に言われたセリフで、俺で4人目で一番確率が高い。

 是非、俺はこう言いたい。

「先生、あなたの本気を見せてくれ、他とは違う出来る教師ってところをね」

 とは言え、今の教師と言う奴はとかく可哀想な運命にある。授業は塾が先行し、テストは過去問から予想され、何か言おうものならあっという間にクラスの裏サイトに書かれ、情報共有される。かく言う俺もこれが終われば早速書き込むだろう。
 はたして、タゴちゃんのキラーワードに四つ目は在るのか? そして、それは誰に出るのか? と言うお題で賭けが始まっている。もっとも、賭けに勝っても掃除当番が変わってもらえるという程度のものだが。

「ありがとうございました~」

 長く意味のないお説教を聞き、挨拶をして面談室を後にする。教室に戻れば志原美奈が、次の面談の相手が待機していた。

「志渡君はどれだった?」

「ん? 一番だった」

「え~、じゃぁ、9人中4人かぁ。私にも『出来る』かなぁ?」

 思わずプッと吹き出してしまう。

 うちのクラスの裏サイトは名前出しを義務付けているので、イジメや何かの温床などにはならない。男女を問わず、割と誰もが気軽に見れるものになっている。因みに志原美奈はクラスでも一際可愛らしい少女で、成績も良いため、4つ目のキラーワードが出るのでは? とオッズが一番高い生徒でもある。

「いやいや、志原なら『付き合ってくれ』かもよ?」

「それは普通にひくよ~」

 苦々しい顔で笑って見せる志原。

 まぁ、もちろんただの冗談だ。ただ、言っておいてなんだが、女の子に『付き合ってくれ』なんて言ってしまったので、頬が赤くなってしまったのを感じる。

「フフッ、なぁに? もしかしてその言葉は志渡君の言葉だったの?」

「なっ!? 違っ!」

 焦って否定すると、よりそのように聞こえてしまう。

「ね、少し不安だからさ。ちょっと残っててくれない?」

「・・・・・・いや、流石にタゴちゃんでも、学校で生徒を襲うことはないだろ?」

「ねぇ、そんな心配してないよ? 普通に! 逆に心配になるからやめてよね」

 シラッとした目で睨まれてしまう。

「じゃぁ、何で?」

「何でって、ほら、最近不審者が出るって言うじゃない。駅まで送ってよ。もう!」

 ベッと舌を出し、志原が待機室となっていた教室を出ていく。あのような可愛い姿を見せられて、「さぁ、帰ろう」などと誰がなるだろう。

 ・・・・・・いや、俺はあくまで裏サイトに書き込みをするために残っているだけ、それだけなんだから!

 などと無意味な小ネタを頭の中で繰り広げ、スマホを取り出す。

 少し、鼓動が激しいからだろう。スマホを持つ手が微かに震え、タッチ操作が上手くいかない。

 まったく、早く帰りたいのに帰れないじゃないか!

 と、また自分に言い訳をしながら、『俺はタゴちゃんにとって全くもって特別な存在ではなかった』と裏サイトに報告する。返ってくる返事は――

『そらそうだ』『お前なんかどうでも良い。志原の結果はまだか!?』

 ――と、言うもの。

 因みに後者は俺の大親友・小鹿からのものだ。読み仮名はおがだが、その読みの通り、ガタイが良くて少し強面のこともあり、あだ名はオーガと呼ばれている。気は良い奴なので、皆も揶揄い半分にフレンドリーにそう呼ぶが、実は本人は少し嫌がっている。

 さらに因みに彼は志原のことが昔から大好きで、中々告白できないでいる軟弱ぶりを揶揄して一部ではバンビとも呼ばれている。もう少し後で俺が志原と一緒に帰ることを書き込めば、明日金属バットを持って登校するだろう。てか、クラス全員が見ているのだから、そんな事を書いてはリンチに遭いかねない。

 カキコ、カキコ

『今、向かったから待ってろ。この薄情者!』

 取り敢えずそれだけ書いてやる。後は、笑顔の顔文字が皆から書き込まれ、しばらくすればその熱も収まる。

 ・・・・・・やることは無くなったが、もう少しだけいることにしよう。

 窓の外を見れば夕焼けが燃えるように赤く、確かに志原が戻ってくる頃には大分暗くなっているだろう。
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