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運動場②
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「東署署長の山田です。いやぁ、壬生さん、なんで取り調べの時、衆議院議員で国家公安委員長である大久保先生のことをおっしゃらなかったので?」
「聞かれませんでしたので。」
「そうは言っても。言って下されば。」
「調べればわかったと思いますよ。」
「……そうですがね。まぁ、とりあえずですな、こんなところで立ち話もなんですから。」
そう言って壬生の手を取り引っ張ろうとする。
「応接室でお茶でも。お茶菓子にリクエストでもありますか?」
「むっちゃん万十の黒あんだ。」
「むっちゃんの……。」
署長も、さすがに声の違いに気が付いたようで、壬生の背後の春吉に目をやる。
「なんでい、俺も朗の祖父だ。ってこたあ、あいつの姻族だぞ。丁重に扱ったらどうだ。」
署長は、壬生と春吉に交互に目を向ける。
改めて、壬生の家系の複雑さに思い至ったようである。
父方は国会議員を輩出し続ける福岡の名家、母方は指定暴力団のトップ。
両極端な血が一つになったのが壬生である。
さすがに署長も対応に迷いが生じた。
「まぁ、お茶菓子はともかく、僕はどうなるんでしょうか?」
署長をフォローするわけではないが話題を変えた。
「しばらく、ここでお待ち下さい。大久保先生が身元引受人となっての保釈となります。大久保先生からその旨の連絡を受けています。」
思わず壬生は、振り返って春吉の顔を見る。
その表情は、「言った通りだろう」と語っていた。
「じゃあ、僕は出てもいいんですね。」
「そうですが、これは大久保先生が身元引受人となるからこそ。そうでなくては、こうも早く保釈は決まりません。ですので、大久保先生が来られるまでここでお待ち下さい。大久保先生からも、ここで待たせるようにと指示されております。」
「来るんですね。」
「はい、福岡空港から車で、吉塚の県警本部に寄ってからこちらに来るそうです。」
「うちの近くに寄ってから来るか。署長、俺の子分どもにお出迎えさせようか。」
署長の顔が苦虫をかみつぶしたものになる。
士道会の事務所は、九大病院近くだが、福岡県警本部もまた、九大病院の近くである。
道路を2本挟むが、地下鉄の駅で接続していると言ってもいい。
「春吉会長、私は壬生 朗さんと話をしている。話に割り込むな。」
「そいつは失礼した。」
全く反省の色を見せずに春吉は返答した。
そんな春吉に内心苦虫を噛み潰しつつ、署長は壬生に向き合った。
「さぁ、壬生さん、こんなところではなんですから応接室の方にでも、どうぞ。」
「わかりました。ただ、一つお願いがあるのですが。」
「なんでしょう?」
「大久保先生が来たらエントランスまで出迎えたいのです。」
「あぁ、それくらい、お安い御用です。到着次第、お知らせします。一緒に出迎えましょう。」
「ありがとうございます。」
にこやかに壬生と向き合う署長は、春吉がニヤリと笑ったことに気が付かなかった。
壬生は気が付いたが、いちいちあれこれ言うつもりはない。
ただ、運動場を囲む塀の上に目を向けた。
「どうしました?」
「いえ、何か視線を感じまして。」
「気のせいでしょう。鳥も止まっていませんよ。」
署長も塀の上に視線を向ける。一羽の鳥もいない塀の上に。
壬生も署長の言う通りだと思い、運動場の入り口の方に足を向ける。
署長たちも壬生に従い、運動場の外に向かう。
運動場には看守と拘置されている者だけが残った。
「看守さんよ、すまねえが早急に弁護士先生に連絡を取りたい。俺の保釈とかに関してな。」
あの嬢ちゃんにも急いで来てもらわねえと。
春吉にも焦りが生じていた。
このままじゃ、朗の奴、どっかにか行っちまいかねん。
そして塀の上でも。
法術でその身を隠す二人が立って話をしている。
「へぇ、壬生 朗とか言ったか。秋夢様が言うようにただ者じゃないみたいだね。僕達に気が付いた。」
「鷺慈御、そろそろ戻ろう。壬生の居場所もつきとめたのだ。」
「伊西、先に戻ってくれ。僕は監視を続ける。大丈夫さ、壬生もしばらくはここにいるのだから。」
「わかった。何かあれば急ぎ連絡をくれ。すまほ、とやら使えるな。」
「大丈夫だ。」
鷺慈御は、上着の懐からスマホを取り出した。
「使い方は厳奈寺に聞いている。ばってりぃとやらもすぐに尽きることは無いはず。」
「じゃ、先に戻るぜ。」
そう言って伊西は、塀の上から飛び降りた。
「聞かれませんでしたので。」
「そうは言っても。言って下されば。」
「調べればわかったと思いますよ。」
「……そうですがね。まぁ、とりあえずですな、こんなところで立ち話もなんですから。」
そう言って壬生の手を取り引っ張ろうとする。
「応接室でお茶でも。お茶菓子にリクエストでもありますか?」
「むっちゃん万十の黒あんだ。」
「むっちゃんの……。」
署長も、さすがに声の違いに気が付いたようで、壬生の背後の春吉に目をやる。
「なんでい、俺も朗の祖父だ。ってこたあ、あいつの姻族だぞ。丁重に扱ったらどうだ。」
署長は、壬生と春吉に交互に目を向ける。
改めて、壬生の家系の複雑さに思い至ったようである。
父方は国会議員を輩出し続ける福岡の名家、母方は指定暴力団のトップ。
両極端な血が一つになったのが壬生である。
さすがに署長も対応に迷いが生じた。
「まぁ、お茶菓子はともかく、僕はどうなるんでしょうか?」
署長をフォローするわけではないが話題を変えた。
「しばらく、ここでお待ち下さい。大久保先生が身元引受人となっての保釈となります。大久保先生からその旨の連絡を受けています。」
思わず壬生は、振り返って春吉の顔を見る。
その表情は、「言った通りだろう」と語っていた。
「じゃあ、僕は出てもいいんですね。」
「そうですが、これは大久保先生が身元引受人となるからこそ。そうでなくては、こうも早く保釈は決まりません。ですので、大久保先生が来られるまでここでお待ち下さい。大久保先生からも、ここで待たせるようにと指示されております。」
「来るんですね。」
「はい、福岡空港から車で、吉塚の県警本部に寄ってからこちらに来るそうです。」
「うちの近くに寄ってから来るか。署長、俺の子分どもにお出迎えさせようか。」
署長の顔が苦虫をかみつぶしたものになる。
士道会の事務所は、九大病院近くだが、福岡県警本部もまた、九大病院の近くである。
道路を2本挟むが、地下鉄の駅で接続していると言ってもいい。
「春吉会長、私は壬生 朗さんと話をしている。話に割り込むな。」
「そいつは失礼した。」
全く反省の色を見せずに春吉は返答した。
そんな春吉に内心苦虫を噛み潰しつつ、署長は壬生に向き合った。
「さぁ、壬生さん、こんなところではなんですから応接室の方にでも、どうぞ。」
「わかりました。ただ、一つお願いがあるのですが。」
「なんでしょう?」
「大久保先生が来たらエントランスまで出迎えたいのです。」
「あぁ、それくらい、お安い御用です。到着次第、お知らせします。一緒に出迎えましょう。」
「ありがとうございます。」
にこやかに壬生と向き合う署長は、春吉がニヤリと笑ったことに気が付かなかった。
壬生は気が付いたが、いちいちあれこれ言うつもりはない。
ただ、運動場を囲む塀の上に目を向けた。
「どうしました?」
「いえ、何か視線を感じまして。」
「気のせいでしょう。鳥も止まっていませんよ。」
署長も塀の上に視線を向ける。一羽の鳥もいない塀の上に。
壬生も署長の言う通りだと思い、運動場の入り口の方に足を向ける。
署長たちも壬生に従い、運動場の外に向かう。
運動場には看守と拘置されている者だけが残った。
「看守さんよ、すまねえが早急に弁護士先生に連絡を取りたい。俺の保釈とかに関してな。」
あの嬢ちゃんにも急いで来てもらわねえと。
春吉にも焦りが生じていた。
このままじゃ、朗の奴、どっかにか行っちまいかねん。
そして塀の上でも。
法術でその身を隠す二人が立って話をしている。
「へぇ、壬生 朗とか言ったか。秋夢様が言うようにただ者じゃないみたいだね。僕達に気が付いた。」
「鷺慈御、そろそろ戻ろう。壬生の居場所もつきとめたのだ。」
「伊西、先に戻ってくれ。僕は監視を続ける。大丈夫さ、壬生もしばらくはここにいるのだから。」
「わかった。何かあれば急ぎ連絡をくれ。すまほ、とやら使えるな。」
「大丈夫だ。」
鷺慈御は、上着の懐からスマホを取り出した。
「使い方は厳奈寺に聞いている。ばってりぃとやらもすぐに尽きることは無いはず。」
「じゃ、先に戻るぜ。」
そう言って伊西は、塀の上から飛び降りた。
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