古からの侵略者

久保 倫

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電話

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「電話がかかってきました。」

 刑事達の雰囲気が変わる。

「番号は、090ー○○○○ー××××です。」

 永倉のスマホに登録されていない番号からの電話であることを告げてから、電話に出て、スピーカーに切り変える。

「はい、こちらは永倉の携帯ですが。」
「壬生さん!」
「永倉さん、ご無事ですか?ひどいことされてませんか?」
「うん、今は無事。あの後は無茶苦茶だったけど。」

 何をした?
 逃走のために永倉さんにも無茶をさせたのか?

「今どちらかわかりますか。」

 返事は無く物音がしただけだった。

「壬生か?」

 聞き忘れようの無い声。

「アキ厶か、永倉さんを返せ。」
「簡単に返すなら質になどせぬわ。」

 全くの正論だった。

「この娘が無事だけでも連絡させろとうるさいでな。」
「永倉さんに指一本触れるな。触れたらただではおかん。」
「もう無理な話だ。」
「これからの話だ、まぜっ返すな!」
「ふ、冷静になるのだな。」
「アキム!」
「また連絡する。しばし大人しくしておれ。」

 バキバキッという音がして電話は切れた。

「電話切られました、すいません。」
「いえ、大丈夫です。発信先は特定できましたから。」
「どこなんです?」
「大濠公園の辺りですね。今から警官を急行させます。」

 刑事は、裁判所などがある、かつての福岡城の跡地の公園の名をあげた。

「僕も行きます。」

 壬生は上着を手にした。

「朗ちゃん、。」
「永倉さんは無事です。声を確認しましたから。」
「危ないわよ。やめなさい。」

 妙子が止めにかかる。

「でも、あいつらに対抗しやすいのは僕です。」
「ちょっと、壬生さん、素人が手を出さないで下さい。邪魔になります。」
「ですが、東署のことがありますから。それに。」
「なんです?」

 声に険がある。東署のことを言われるのは不愉快なのだろう。

「あいつら、永倉さんの偽物を用意する可能性があります。僕なら見抜ける可能性があります。」

 東署エントランスで火球をものともせず、発生させた霧を打ち消した自分なら変身させる術も解くことができるだろう。

「そうかもしれませんが、ここにいて下さい。アキムもそう指示してきたではありませんか。」

 確かにアキムは、そう指示してきた。

「しかし言いなりでいいのでしょうか?」
「今は忍耐の時です。じっとしておくのも重要ですよ。」
「そうよ、朗ちゃん。人生我慢の時があるでしょう。」

 妙子も壬生を止めにかかる。

「あなたは、春吉さんや大久保議員を殴る機会を伺って3年近く待ったでしょう。今回はそこまで待たなくていいと思うし。」
「そう言われるとそうですね。」

 そんな二人の会話を聞いて、壬生を説得していた刑事の表情が変わる。

「君、会長まで殴ろうとしたのか?」
「とっくに殴ってる。留置場では蹴りもした。」
「そこまでやったのか……。」
「それだけやれれば、後は野となれ山となれ、のつもりだったから。」

 そう、そのはずだった。

 春吉と大久保に鉄拳を見舞って、後はこの福岡を去るだけ。
 士道会も大久保家もそれなりに影響力はあるが、基本福岡ローカルだ。福岡県を出てしまえば、どうにも逃げ切れる。
 
 だが、こう福岡を離れがたい状況になるとは思ってもみなかった。

「永倉さん……。」
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