おバカな超能力者だけれども…

久保 倫

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吉良弁護士事務所

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「痛い、痛いって黒江さん。」
「うるさいわね!おバカおバカおバカぁ~~~。」
 バッグで殴ってくる黒江に白野は防戦一方だった。
「あんたら痴話喧嘩はやめな。目立ってしょうがない。」
 蔵良の言葉に二人は周囲を見回した。確かに視線が集まっているような…。
「ほら行くよ、ついといで。」
 歩き始めた蔵良に、慌ててついて行く二人だった。

「ここだよ。」
 蔵良が止まったのは、古い雑居ビルだった。
 蔵良はエントランスに入り、エレベーターを無視して階段に向かう。
「超能力見せてあげるから階段の方においで。」
 エレベーターの前に立とうとした二人は、蔵良について階段に移動した。
「踊り場を見てな。」
 蔵良の指さした照明の切れた薄暗い踊り場に二人は視線を向けた。
「行くよ。」
 そう言うや否や、蔵良は踊り場に二人に背を向けて立っていた。
「どうだい、あたしの『テレポート』」。
 蔵良は振り返って言った。
「黒江さん、見えた?」
「はい、一瞬のうちに階段に青い光の線が走ったかと思うと蔵良さんが現れました。多分、蔵良さんが移動した跡に青い光が一瞬残るんじゃないかと思います。」
「あたしが移動した後に青い光が残るってのは、初めて聞いたよ。」
「黒江さんは、超能力を見ることができるようなんです。」
「そうかい、タクシーの中でお嬢ちゃんに発火能力も見せたけど、そん時は?」
「タバコの先に青い光が集まったと思うと火が付きました。」
「そんな感じなんだ。おもしろいね。」
「蔵良さんは、どうやって『テレポート』に目覚めたんですか?」
「その辺の話は、事務所でしよう。3階の『吉良弁護士事務所』。狭いビルだし看板があるからすぐわかるよ。」
 そう言うや蔵良は消えた。
「『テレポート』使ったのかな?」
「えぇ、青く光りましたから。」

 「吉良弁護士事務所」のプレートが張り付けられたドアの横のインターフォンを白野は押した。
「蔵良君が連れてきた子たちかな。入りなさい。」
「失礼します。」
 そう言って白野はドアを開けた。
 ドアを開けるとパーティーションに囲まれた応接セットがあり、蔵良と禿頭で白い口髭をたくわえた老人が並んで座っていた。
 禿頭の老人が立ち上がった。
「吉良岩男です。白野さんと黒江さんだね。蔵良君から名前は連絡されてます。おかけ下さい。」
 二人は、応接セットのソファに腰を下ろした。
「あの、先生も超能力者だと蔵良さんから伺いました。どんな…。」
「名刺もまだ、渡してないんだけどな。」
「すいません、学生でよくそういう儀礼がわからなくて。」
「いや、気にしないでいいよ。君たち名刺は持ってないだろうからいいけど、私の名刺は受け取って欲しい。」
 そう言って吉良は二人に名刺を渡した。
 名刺は、白地に「弁護士 吉良岩男」と印刷されており、名前の下に数字が印刷されていた。
「名前の下の数字は、弁護士としての登録番号だ。検索すると私が東京弁護士会所属の弁護士であることが分かってもらえると思う。」
「はい。」
「ひょっとしたら、本当に弁護士なのだろうかと疑われているんじゃないかと思ってね。」
「そんなことはありません。ただ、俺は、そちらの蔵良さんを使い何をされているのかを知りたいと思っています。」
「そうだろうね。うさん臭く思われても仕方ない。何しろ人を一人破滅させようとしているのだからね。」
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