おバカな超能力者だけれども…

久保 倫

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蔵良の過去

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「元旦那って、蔵良さんバツ1なんですか?」
「なんで別れたんですか?超能力が原因とか?」
「そんなに一度に言われても答えらんないよ。」
「お待たせいたしました。」
 女将が料理を持って来た。鶏のから揚げ、揚げ出し豆腐、里芋の網焼き、豚の角煮、煮物などが卓に並べられる。
「そうだね、お嬢ちゃんあたしや先生の超能力のこととか知りたいだろうし、まとめて話そうか。」
蔵良はグラスに口をつけた。
「あたしは、昔キャバ嬢でね。元旦那は客だったんだ。」
「なんでキャバ嬢になったのですか?」
「なんでって地方から身一つで上京した資格の無い小娘にできる仕事なんて限られてるからねぇ。」
 蔵良はタバコをくわえると火を発火能力でつけた。
「元旦那とつき合うようになって同棲から籍入れるまでは、まぁ普通だった。籍入れてから変わってね。仕事辞めて呑む打つ買うの3拍子。」
「3拍子って何のことですか?」
「呑むは大量のお酒を呑む,打つは博打まぁパチンコとかだね。買うはプロの女性とベッドの上で遊ぶことだよ。」
 蔵良に代わり吉良が説明した。
「ちょっと待って下さい、最後は浮気じゃないですか!それにプロの女性と遊ぶって、え~、そういうことでしょう。」
 黒江は、真っ赤になった顔を両手で覆った。
「そうなんだけどさ、あの頃は自分がダメだから浮気されるんだとか本気で思っててね。」
 ホントあの頃の自分に会えたらブン殴ってやりたい。
「自分が頑張らなきゃと思ってキャバ頑張って稼いでも、元旦那が取り上げて使っちゃう。」
「取り上げられないようにできなかったんですか?」
「無理だったね。出さなきゃ殴る蹴るだもの。男の力には勝てないよ。」
「DVまで、ひどい。」
「細やかな貯金も無くなり、光熱費や家賃を滞納し始めて身も心もボロボロになった頃に先生に会ったのさ。」
「私は、蔵良君のお店に客として行ったんだ。検事を退官して弁護士になって1年過ぎたくらいか。借金の取り立てがうまくいったことを喜んだ顧客が連れられてな。」
「先生についてしゃべっているうちに、現状を話ちゃってさ。話してるうちに自分がバカな男に食い物にされてるって気付いてね。」
「私は、その時の蔵良君の現状を普通に指摘しただけだよ。その男は釣った魚に餌をやらん奴だと。」
「釣った魚を食ってるんだ。」
「あんたうまいことを言う。食われて骨をしゃぶられてる身ながら逃げようと思った。」
「幸い蔵良君には子供がいなかったから簡単だったよ。」
「お店の寮に入れてくれるよう店長に相談したり、すぐに始めたよ。」
「お店とかに待ち伏せされるんじゃ?」
「系列の別の店に移ることにしたのさ。寮と店の間は送迎もあるしね。」
「接近禁止命令の手続きも準備していた。問題はなかったよ。」
「で、翌日元旦那が酔いつぶれて寝ている間に当座の荷物をまとめて、タクシーを呼んだのさ。そんなことしてたからかな。元旦那、あたしが逃げるようだと気が付いたみたいでね。」
 あの日のことは、今でも克明に思い出せる。
「逃げる気か、と追いかけてくる元旦那から逃げるべくスーツケース持って必死に逃げたよ。でも酔っているとはいえ身軽な男と荷物持ちの女じゃね。マンションの1階まで来て追いつかれそうになった。」
 階段を降り、エントランスの方を見れば外にタクシーがドアを開けて待っていた。着いたらすぐにドアを開けて待っていてくれという頼みを運転手は守ってくれた。
 後一息。だがその時背後に階段を飛び降りた元旦那の気配を感じた。
 逃げるんだ!あのタクシーに!強く思った時、蔵良はタクシーの座席にいた。
「お客さん、出しますよ。」
 一瞬状況がわからず混乱した。
「元旦那の罵声が無ければ我に帰れなかったかも。慌てて運転手に車出すよう言って逃げた。それがあたしが『テレポート』を初めて使った時だった。」
 蔵良は、吸い終わったタバコを灰皿でつぶした。
「凄絶な瞬間だったんだ。」
 誕生日会の最中に目覚めた自分と反対だなと白野は思った。
「自分が超能力を使ったんだって自覚した時、どう思いました?」
「どう思ったって、しばらくは生活に追われたし、元旦那がらみの片づけも色々あったしで、覚えてないね。少し余裕ができてから、あの時のことを思い出して色々試してみて、あぁ自分は超能力が使えるんだって自覚して、おかげで助かったって思ったくらいかな。」
「悩みとかはなかったんですね。」
「悩むヒマとかないもの。まぁ、ありがたいと思うだけだね。おかげでこうして生きてられるし。」
 自分と違い過ぎるなと黒江は思った。
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