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残った二人
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個室に残った二人に焼酎のキープとミネラルウォーターのセットが運ばれてきた。
蔵良が、2人分の水割りを作る。
「寮の用事か。」
「嘘なんですか?」
「あぁ、赤く光っていた。」
吉良には二人に言わなかった超能力がある。人が嘘をついていれば赤く見える。知っているのは蔵良だけだ。
そういう超能力があるがために事故の際、自分が超能力を使った可能性に気づけたのだ。そうでなければ火事場の馬鹿力なり、適当な言葉で処理しただろう。
そのことを蔵良には口止めしていた。
「どうして?」
「さぁ、そこまではわからんよ。」
嘘をついているのはわかるが、真実がわかるわけではない。また、事実と違っていても発言する当人が事実と思い込んでいれば赤く見えない。嘘をつく意思に反応する超能力だと吉良は思っている。
物心ついたころからのこの超能力は使えていた。いや、使うまいと思っても嘘をつく人は赤く見える。
白野同様、おかしな子扱いを経て、黙ることを選択し、この能力が役立ちそうな職業を選択した。
「白野君か、まぁいいやつだな。黒江ちゃんの言うおバカなところはあるようだが。」
「私に言わせれば、お嬢ちゃんの方がバカですよ。」
「そうだな。白野君との出会いなど、危なっかしくてしょうがない。」
白野が基本的に善良な人間だから大丈夫だったが、もし超能力を使っての確信犯的な覗き魔ならばどうなったか。対象がわざわざ入ってきてくれたのだ。毒牙にかけようと思ってもおかしくない。時間を止める能力を使って逃げられると思うのかもしれないが、その前に殴られて意識を失ったら。
「あたしも元旦那にこめかみ殴られて意識が飛んだことがありますから。」
「そうでなくとも恐怖で思考能力を失うというな。」
「あたしも初めてJRで痴漢にあった時は、びっくりして声も出せませんでした。なんか、さわるのを当然みたいに触ってくるんですもの。びっくりしますよ。」
吉良がグラスを空にした。素早く蔵良が新しい水割りを作る。
「それにしても先生があの坊やをバイトに雇うと言い出したのには驚きました。」
「あの能力は今回の件役立ちそうだからな。」
「それでも、ですよ。先生、手元に置いておきたいって感じでした。超能力だけなら、使いたい時だけ、という手もあるでしょう。」
「気に入っただけだ。基本善良でまっすぐだからね。昔の自分を見ているようだ。」
「先生もあぁだった、と。今の先生からは想像できません。」
「歳を取れば人間変わると言うことだ。」
吉良は、香の物に箸を伸ばした。
「話は変わりますが、依頼人はあたしの失敗に関してなんと言ってました?」
「失敗はやむを得ないが、早くに対処してくれ、だ。まだ白野君達のことは言ってない。」
「新星会や甲斐組は、あたしのこと探しているのでしょう。どの程度調べが進んでいるのでしょうか?」
「あの人にだって限界はある。防犯カメラの映像と出くわした組員の証言から20代後半の女。後、逃走中に落としたサングラスを調べているくらいしかわからない。」
「警察じゃないですし、まだあたしのところには来てないですね。」
「ただ、近づく必要がある時は気を付けてくれ。白野君の能力に期待したいが。」
「あたしは先生に従うだけです。」
「すまないな、危険なことをさせて。君も来月で30だ。そろそろ次の人生を考えさせねばならないのだが。」
「あたしの人生は先生と一緒です。」
「君のような若い人は、古希を過ぎた年寄りと人生を共にするものではないよ。」
「あら、依頼人は80過ぎですけど、後代の奥さんと籍を入れる腹積もりですよ。」
「私とあの人を一緒にしないでくれ。それに奥さんも56歳だ。身寄りもなく、頼れるのはあの人だけという事情もある。」
「あたしも先生しか頼れません。高卒のキャバ嬢から弁護士事務所の職員に転職できたのは先生のおかげです。」
「十分実務経験は積んだ。大丈夫だよ。」
「事務所をたたむおつもりですか?」
「すぐではないよ。白野君のこともあるしな。後5年は頑張らないと。」
「35歳は若いと言ってもらえない歳なんですよ。」
蔵良はグラスを空け、素早く水割りを作った。
「それにしても、あの坊やのために頑張ると言いつつ、ダマしているのはどうかと思いますが。」
「正義感が動機なのも確かさ。あの人が言う通りだとしてね。」
「嘘は無いのでしょう?」
「あの人にも限界はあるさ。誤解は誰でもする。私が誤解を前提に行動している可能性は否定できない。」
蔵良が、2人分の水割りを作る。
「寮の用事か。」
「嘘なんですか?」
「あぁ、赤く光っていた。」
吉良には二人に言わなかった超能力がある。人が嘘をついていれば赤く見える。知っているのは蔵良だけだ。
そういう超能力があるがために事故の際、自分が超能力を使った可能性に気づけたのだ。そうでなければ火事場の馬鹿力なり、適当な言葉で処理しただろう。
そのことを蔵良には口止めしていた。
「どうして?」
「さぁ、そこまではわからんよ。」
嘘をついているのはわかるが、真実がわかるわけではない。また、事実と違っていても発言する当人が事実と思い込んでいれば赤く見えない。嘘をつく意思に反応する超能力だと吉良は思っている。
物心ついたころからのこの超能力は使えていた。いや、使うまいと思っても嘘をつく人は赤く見える。
白野同様、おかしな子扱いを経て、黙ることを選択し、この能力が役立ちそうな職業を選択した。
「白野君か、まぁいいやつだな。黒江ちゃんの言うおバカなところはあるようだが。」
「私に言わせれば、お嬢ちゃんの方がバカですよ。」
「そうだな。白野君との出会いなど、危なっかしくてしょうがない。」
白野が基本的に善良な人間だから大丈夫だったが、もし超能力を使っての確信犯的な覗き魔ならばどうなったか。対象がわざわざ入ってきてくれたのだ。毒牙にかけようと思ってもおかしくない。時間を止める能力を使って逃げられると思うのかもしれないが、その前に殴られて意識を失ったら。
「あたしも元旦那にこめかみ殴られて意識が飛んだことがありますから。」
「そうでなくとも恐怖で思考能力を失うというな。」
「あたしも初めてJRで痴漢にあった時は、びっくりして声も出せませんでした。なんか、さわるのを当然みたいに触ってくるんですもの。びっくりしますよ。」
吉良がグラスを空にした。素早く蔵良が新しい水割りを作る。
「それにしても先生があの坊やをバイトに雇うと言い出したのには驚きました。」
「あの能力は今回の件役立ちそうだからな。」
「それでも、ですよ。先生、手元に置いておきたいって感じでした。超能力だけなら、使いたい時だけ、という手もあるでしょう。」
「気に入っただけだ。基本善良でまっすぐだからね。昔の自分を見ているようだ。」
「先生もあぁだった、と。今の先生からは想像できません。」
「歳を取れば人間変わると言うことだ。」
吉良は、香の物に箸を伸ばした。
「話は変わりますが、依頼人はあたしの失敗に関してなんと言ってました?」
「失敗はやむを得ないが、早くに対処してくれ、だ。まだ白野君達のことは言ってない。」
「新星会や甲斐組は、あたしのこと探しているのでしょう。どの程度調べが進んでいるのでしょうか?」
「あの人にだって限界はある。防犯カメラの映像と出くわした組員の証言から20代後半の女。後、逃走中に落としたサングラスを調べているくらいしかわからない。」
「警察じゃないですし、まだあたしのところには来てないですね。」
「ただ、近づく必要がある時は気を付けてくれ。白野君の能力に期待したいが。」
「あたしは先生に従うだけです。」
「すまないな、危険なことをさせて。君も来月で30だ。そろそろ次の人生を考えさせねばならないのだが。」
「あたしの人生は先生と一緒です。」
「君のような若い人は、古希を過ぎた年寄りと人生を共にするものではないよ。」
「あら、依頼人は80過ぎですけど、後代の奥さんと籍を入れる腹積もりですよ。」
「私とあの人を一緒にしないでくれ。それに奥さんも56歳だ。身寄りもなく、頼れるのはあの人だけという事情もある。」
「あたしも先生しか頼れません。高卒のキャバ嬢から弁護士事務所の職員に転職できたのは先生のおかげです。」
「十分実務経験は積んだ。大丈夫だよ。」
「事務所をたたむおつもりですか?」
「すぐではないよ。白野君のこともあるしな。後5年は頑張らないと。」
「35歳は若いと言ってもらえない歳なんですよ。」
蔵良はグラスを空け、素早く水割りを作った。
「それにしても、あの坊やのために頑張ると言いつつ、ダマしているのはどうかと思いますが。」
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