おバカな超能力者だけれども…

久保 倫

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甲斐史郎(2)

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 鳶井は、目を閉じた。

 痛みも何も無い。
 そっと目を開けるとニヤニヤ笑う甲斐がいた。
「じゃぁ~ん。」
 甲斐は握っているS&Wモデル22Aのグリップを見せた。
 グリップの中身は空洞だった。
「あんたオレをからかったのか?」
「根性見せてもらっただけさ。おまえ大したもんだよ。他のやつは命乞いしたりするからな。」
 甲斐は懐からマガジンを取り出し、装填した。
 薬室に弾を送り込んでから安全装置をかけ、応接テーブルの上に銃口が誰にも向かないように置いた。
「喧嘩は根性。そいつは間違っていない。こいつを使う根性があれば必ず勝てる。」
「オレに使えと。」
「絶対に使えというわけじゃない。ただ、相手がひかりもん刃物出して来たらどうする?おめえもそれくらいは持ってんだろうが、数が力という事態になりかねん。そういう時に使え。」
「そうかもしれませんが。」
「使う根性は無いか。それなら引っ込めよう。」
「…いや、下さい。」
「根性あんのか。」
「あります。あるって言ってくれたじゃないですか。」
 鳶井のS&Wを引き寄せる腕に力がこもる。
 甲斐は、S&Wから手を離した。鳶が両手で抱え込む。
「一応、言っておく。さっきのやりとりは俺の勝ちだ。なぜ俺が勝ったかわかるか。」
 何を言い出すんだ?鳶井は甲斐を見つめた。
「お前は俺がそのS&Wをぶっ放すと信じた。俺にそういう根性があると思ったからさ。実際あるんだが。」

「状況に変化あった?」
「甲斐は引き金引いたけど、男は死んでない。」
「どういうこと?」
「甲斐、笑ってるよ。会話がわからないからよくわかんないけど。」
 白野の頭の中で、甲斐が拳銃にマガジンをセットし、机の上に置いた。
「あ、男が拳銃を手にした。甲斐が取り戻そうとしてるのかな。引っ張り合ってるけど。」
「争ってるの?」
「いや、拳銃を一度テーブルに置いているから。あ、男が拳銃を手にした。甲斐も拳銃を渡す気みたい。ソファに深く座りなおしたよ。」
「拳銃密売の瞬間!連絡するね。」

「何が言いたいんです?」
「その拳銃、抜くからには絶対使わなきゃ意味がないってことさ。火を噴かない銃なんてただの鉄くずだ。銃を鉄くずにしちまう奴もくずだって言いたい。」
 甲斐は新しいタバコを咥えた。
「銃ってのは絶対の暴力だ、俺はそう考えている。だからこそ負けられないヤクザは銃を使うんだと思ってる。脅すだけじゃ駄目だ。使え。使ってこそ相手はビビる。いいな。」
「さっきは、ナイフに対抗する時だけに使えって。」
「言ったさ。その時銃を突きつけるだけでビビってひいてくれりゃいいが、多分ひかねえ奴は出てくる。その時、間違いなく撃て。外してもいい。撃てば、それだけで大抵の奴は逃げる。」
「逃げない奴は?」
「当てろ。ただ、ひかりもんを落とすだけとか考えるな。当てることだけ考えて撃て、いいな。」
 鳶井が息をのむのがわかった。
「どうする、銃を置くならまだ間に合うぞ。」
「…いいえ、頂きます。」
 鳶井はポケットに銃をしまおうとした。
「ホルスターやるからそれに仕舞え。」
 甲斐は、ホルスターを外すと鳶に渡した。
「ホルスターは鞘みてぇなもんだ。普段はそこにしまっとけ。刃物が錆びるみてえに故障の原因になる。ま、万が一故障したら持ってこい。整備してやる。」
「ありがとうございます。」
「『スカル』に負けんなよ。そいつは、俺なりのエールだ。」
「そのために、出入りの前に直接言いに来いって言ったんですね。ありがとうございます。」
 鳶井は立ち上がって頭を下げ、出て行こうとした。
「待ちな、そいつには安全装置をかけてある。そのままでは撃てん。」
 鳶井は座り直した。
「本座、安全装置の解除のやり方を教えやれ。」
「了解しました。」
「俺は別の仕事があるから、後は任せる。」
 そう言って甲斐は立ち上がった。

「連絡したよ。拳銃密売の瞬間だね。」
「でもお金のやり取りが無かった。一応、それも言っておいて。」
「そうなの?わかった。」
 黒江はその旨をlineで送信した。
「甲斐が部屋を出て行った。」
「PC起動するかもね。メモ準備するよ。」

 甲斐の執務室は、組事務所の最上階にある。
 先日割られた窓ガラスはサッシ屋をせっついて新しいガラスをはめている。この機会に防弾ガラスを入れたかったが、急には間に合わず断念した。
 ノートパソコンw開き、10桁のPINコード「bu108noone」を入力する。

「ノートパソコン開いた!」
 白野の言葉に黒江は、スマホに集中する。
 白野も甲斐の指に集中する
「bu108noone」
 白野の叫ぶ10桁のPINコードを黒江は、メモアプリに入力した。
「メモばっちりだよ。」
「ありがとう、黒江さん。」
 まぶたは開けないが、白野は表情を緩めた。
 黒江は、lineでPINコード入手成功を知らせた。
「ついでに、組事務所内を見て回ろうと思う。しばらく時間かかると思うけどいいかな?」
「いいわよ、何かメモとか必要になったら言ってね。」
 そういった黒江のスマホがlineの着信を知らせた。見ると蔵良からだ。メッセージを確認する。
「ご苦労様。ところでさ、今ホテルにいるんでしょ。ゆっくりしておいでw延長しまくっても、なんなら宿泊しても経費で落としたげるよw」
 蔵良さん、なんで私達がホテルにいるって知ってるんだろう?

 周囲を見回すが、白野以外誰もいない。超能力の青い光も『Mark2eyeball』と白野をつなげるライン以外無い。
 
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