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白野がSDカードを回収した時、まだ日は変わっていなかった。
帰ろうと思えば新宿に寄って帰れるが、白野には他にやりたいことがあった。
ブースに戻る前に、実話系週刊誌のバックナンバーを年内分だけまとめて持っていく。幸い、欠番は無かった。
「やっぱりあの人か。」
事務所で出会った老人、どこかで見た顔だと思ったが、父親の実話系週刊誌で見た顔だった。
「新星会会長阿部真司氏急死。新星会に跡目争い?」
江戸川の写真の載った記事によると、新星会会長が急死し、跡目争いが勃発。若頭の久島と若頭補佐の甲斐の間での跡目争いによる分裂を回避すべく、引退していた江戸川が介入、半年後組員による選挙を行うと宣言。当面は阿部の妻が会長代行として新星会のトップを務める、となっていた。
続報とか無いのかと週刊誌を見て行くといくつか記事があった。
「新星会、跡目争いに関連し新井組組長と幹部意見対立」
「江戸川氏、若頭久島氏に肩入れか?甲斐氏と対立?」
「静江未亡人、江戸川氏の通い妻?」
新星会、江戸川、甲斐のキーワードで記事を読んで書かれていたのは、以下のことだった。
江戸川は、久島を推して甲斐と対立している。動機の詳細は不明。一応、甲斐の若さなどが理由らしいが、他にありそうだ、と記者の憶測が書かれていた。
新星会の上位団体護星会会長は、甲斐を推すが、新井組組長は江戸川との絡みで久島よりの中立。他の直参に新星会の跡目争いにかかわらぬよう指示している。新井組組長は、若い時分、江戸川に色々相談に乗ってもらうことがあり、その時の恩で動いている。恩義を感じていることは、新井組組長になる前のインタビューで語っているので間違いない、となっていた。
江戸川が久島を推すのは、未亡人静江にせがまれてのことで、静江未亡人が久島を推すのは、男女の関係があるからでは?邪推っぽいが、一応覚えておこう。
「俺達ひょっとしてヤクザの跡目争いに巻き込まれているだけ?」
そんな疑惑にとらわれる白野だった。
ドリンクバーのコーラのグラスを見つめるが、答えが出るはずもない。
「先生は利用されているだけ?」
いや違う。依頼されて動いていると考えるべきだろう。白野の脳内で、弁護士が「あなたに不利益になるようなことはいたしません。全て正直にお話し下さい。」と言うドラマのワンシーンが吉良と江戸川で再現された。おそらく、一連の甲斐を破滅させる動きは、江戸川の意向と見て間違いないだろう。
「辞めるかな。」
犯罪は、見逃せないが、ヤクザの跡目争いに関わる気など毛頭ない。
ただし、黒江にも話せねばならない。どう話すか。
「俺達は犯罪に立ち向かうんじゃない。ただのヤクザの跡目争いに巻き込まれただけなんだ。」
そんなこと言ってショック受けないか?
仮にやめたとしても超能力者仲間欲しさに残ることを選択されたら。白野は一人、吉良は二人。この差は大きいかもしれない。
そして、時間停止の能力は、うまく使えば相当なことができるだろう。吉良たちは、白野を捨てても黒江をとる可能性は高い。そうなると、黒江との接点は大学だけとなる。溝ができるのは避けられないだろう。
白野の脳内で、黒江と縁が切れることと、利用されることへの嫌悪感が天秤にかけられた。
「甲斐から始めよってか。」
高校時代漢文で習った故事に引っ掛けた言葉が出た。
甲斐が拳銃を半グレに渡しているのは間違いないのだ。放置しておけば、他の半グレにも拳銃が渡り犯罪に使われる可能性は十分にある。
今は、甲斐に集中しよう。吉良や江戸川のことはその後だ。
「飯くお。」
飯食って、その後のことは、また考えよう。
ブースのPCのアイコンをクリックしてフードメニューを出す。
「うそ、サラダねーじゃん。」
帰ろうと思えば新宿に寄って帰れるが、白野には他にやりたいことがあった。
ブースに戻る前に、実話系週刊誌のバックナンバーを年内分だけまとめて持っていく。幸い、欠番は無かった。
「やっぱりあの人か。」
事務所で出会った老人、どこかで見た顔だと思ったが、父親の実話系週刊誌で見た顔だった。
「新星会会長阿部真司氏急死。新星会に跡目争い?」
江戸川の写真の載った記事によると、新星会会長が急死し、跡目争いが勃発。若頭の久島と若頭補佐の甲斐の間での跡目争いによる分裂を回避すべく、引退していた江戸川が介入、半年後組員による選挙を行うと宣言。当面は阿部の妻が会長代行として新星会のトップを務める、となっていた。
続報とか無いのかと週刊誌を見て行くといくつか記事があった。
「新星会、跡目争いに関連し新井組組長と幹部意見対立」
「江戸川氏、若頭久島氏に肩入れか?甲斐氏と対立?」
「静江未亡人、江戸川氏の通い妻?」
新星会、江戸川、甲斐のキーワードで記事を読んで書かれていたのは、以下のことだった。
江戸川は、久島を推して甲斐と対立している。動機の詳細は不明。一応、甲斐の若さなどが理由らしいが、他にありそうだ、と記者の憶測が書かれていた。
新星会の上位団体護星会会長は、甲斐を推すが、新井組組長は江戸川との絡みで久島よりの中立。他の直参に新星会の跡目争いにかかわらぬよう指示している。新井組組長は、若い時分、江戸川に色々相談に乗ってもらうことがあり、その時の恩で動いている。恩義を感じていることは、新井組組長になる前のインタビューで語っているので間違いない、となっていた。
江戸川が久島を推すのは、未亡人静江にせがまれてのことで、静江未亡人が久島を推すのは、男女の関係があるからでは?邪推っぽいが、一応覚えておこう。
「俺達ひょっとしてヤクザの跡目争いに巻き込まれているだけ?」
そんな疑惑にとらわれる白野だった。
ドリンクバーのコーラのグラスを見つめるが、答えが出るはずもない。
「先生は利用されているだけ?」
いや違う。依頼されて動いていると考えるべきだろう。白野の脳内で、弁護士が「あなたに不利益になるようなことはいたしません。全て正直にお話し下さい。」と言うドラマのワンシーンが吉良と江戸川で再現された。おそらく、一連の甲斐を破滅させる動きは、江戸川の意向と見て間違いないだろう。
「辞めるかな。」
犯罪は、見逃せないが、ヤクザの跡目争いに関わる気など毛頭ない。
ただし、黒江にも話せねばならない。どう話すか。
「俺達は犯罪に立ち向かうんじゃない。ただのヤクザの跡目争いに巻き込まれただけなんだ。」
そんなこと言ってショック受けないか?
仮にやめたとしても超能力者仲間欲しさに残ることを選択されたら。白野は一人、吉良は二人。この差は大きいかもしれない。
そして、時間停止の能力は、うまく使えば相当なことができるだろう。吉良たちは、白野を捨てても黒江をとる可能性は高い。そうなると、黒江との接点は大学だけとなる。溝ができるのは避けられないだろう。
白野の脳内で、黒江と縁が切れることと、利用されることへの嫌悪感が天秤にかけられた。
「甲斐から始めよってか。」
高校時代漢文で習った故事に引っ掛けた言葉が出た。
甲斐が拳銃を半グレに渡しているのは間違いないのだ。放置しておけば、他の半グレにも拳銃が渡り犯罪に使われる可能性は十分にある。
今は、甲斐に集中しよう。吉良や江戸川のことはその後だ。
「飯くお。」
飯食って、その後のことは、また考えよう。
ブースのPCのアイコンをクリックしてフードメニューを出す。
「うそ、サラダねーじゃん。」
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